【三月二十三日】

 ここに取り出したるは、便箋に封筒そして古くなった六枚の写真。とりあえず写真を封筒に収め、そして何を書くか考えた。考えれば考えるほど、どつぼに嵌まり何も書けなくなり、気がつけば時がない……というのが今の現状だ。

「あー……なんもないなー」

 家哉兄さんは俺に『弟になってもいい』と書き残した。では、俺は久哉に何を書いてやればいいのだ。久哉に言いたいことはたくさんあるのだ。部屋を片付けろ、寝相をなんとかしろ、寝言がうるさい、弓哉にちゃんと指導しろ……毎日言っても足りないくらいだ。それでも、いざペンを握り紙を前にするとピタリと手が止まってしまう。

「なあ、俺は何を遺せばいい?」

 そして、俺は今日もまた白い手紙を抽斗ひきだしにしまい鍵をかけた。

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