48.人見知りからの一歩


 夏休みも明け、生徒達は各々遊びに行ったりと仲良くなってるらしい。私もさやかちゃんや南ちゃん、なつかちゃんと会うことが出来た。部活とか習い事が忙しいみたいで、たくさんとはいかなかったが。仲良くなれた、はず!


 朝、学校に着き玄関で冬城君に会った。


「冬城君、おはよう」


 靴を履き替えながら、私の後から来た冬城君に声をかけた。


「はい、おはようございます」


 なんだか表情が硬いような。

 上履きに履き替えるまで待って、一緒に教室に行こうとした。それを見て一言。


「何かご用ですか?」

「一緒に教室まで行こうと思ってね」


 目を丸くした。声には出てなかったが「なんで?」と言ったような気がした。


「そう、そうですか」


 そう言って歩いていくのを追う。


「冬城君は夏休み何処かに行ったりした?」

「いえ、特には」


 どうやらこの様子だと、私への好感度? というか慣れ具合は、ゼロになってしまっているらしい。案内したりと一緒にいたのに、ちょっと悲しい。


 その悲しみがどうやら顔に出ていたようで、冬城君は急に立ち止まり「違うんです」と言った。


「嫌いとか、そういうのでこんな態度なのではなく、猫宮さんだけではなく、ただ少し緊張していて」


 人見知りが発動していた。


 そっかぁ、夏休みあってまたみんなと距離あるように思えてしまったか。


「人見知りってなかなか無くならないもんね」

「すみません」

「大丈夫だよ! これからゆっくり仲良くなっていこう」


 それを聞いた冬城君の顔は驚いていた。この短時間で二度も驚かせてしまった。


「よし、じゃあ教室行こう」


 そう言って、思わず私は冬城君の袖を引っ張ってしまった。離すに離せず、そのまま教室へと向かった。


「さやかちゃん、おはよう!」


 教室に入ってさやかちゃんに挨拶をし、すぐに摘まんでいた袖を離した。何も言わずに私達は自分の席へと向かったのである。




 二人で教室に入って来たのを見たさやかちゃんから後に聞いた話。

「冬城君、ちょっと戸惑ってたけどなんか嬉しそうに見えたよ」




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