40.違和感の行方


「くぅちゃん行くよー」


 教室の移動を余儀なくされる。目的地は家庭科室だ。教室での座学の後、授業時間内の移動を言い渡された。


 それなら初めから家庭科室でよかったのではないか? と疑問に思うも、飲み込む。


「移動ってちょっと面倒だけど、特別感はあるよね」

「さやかちゃんはポジティブだねぇ。私はそうは思えなかったよ」

「少しでも楽しい方が人生得だよ」

「確かに」


 階段を降り、一階へ。家庭科室の横には体育館へ繋がる通路がある。


「あ」

「どうしたの?」


 そこには光先輩がいた。ジャージ姿だ。


 違和感を覚えたが、すぐに気が付く。今は授業中でここにいるはずがない。それなのに先輩はいた。サボっているのかとも一瞬思ったけれど、そんな風には見えなかった。


 少し寂しそうに、時間を持て余しているかのように見えた。特別体調が悪いというような様子ではなく、見学にしても通路にいて見学をしていない。何かは分からず、でも何か事情はあるんだろうなと考えながら、声はかけなかった。


「ううん、何でもないよ」



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