31.委員の仕事って
「すみません、遅くなりました」
放課後の図書室、今日は当番の日。
「大丈夫だよ。今日はそこまでやること多くないしね。あれ、いつもかな?」
カウンターで出迎えてくれた春野先輩。
「まだとんでもなく忙しいとかは聞いたことないですね」
「僕もまだないかもしれない」
二人で平和でいいねと笑い合う。
「あ、でも来月には夏休み前の長期貸し出しがあるよ。それがピークかも」
「やっぱり借りる人多いんでしょうか」
「あんまりいない」
その返答に、私は吹き出してしまった。
「ハハハっ、いつもよりはいるけどね。目が回るほど忙しいことはないよ」
「そうなんですか、もったいないですね。こんなにたくさん本あるのに。みんないっぱい読めば新しい本も増えるのに!」
そう言った私に先輩は目を輝かせてこう言った。
「そうなんだよ。だから今年はもっと読んでもらおうと色々計画してるんだ。猫宮さんも楽しみにしててね」
「はい、待ち遠しいです」
その後は、たまに来る本を貸す受付をしたり、返された本を本棚に戻したりとのんびり過ごしていた。
「猫宮さん、ちょっといいかな」
戻し作業が終わった段階で春野先輩に呼ばれた。
「さっき色々計画してるって言ったけど、それとは別に頼みたいことがあるんだ。猫宮さんのおすすめの本のポップを作ってみてほしいんだ。見た人が借りて読みたくなるような、って言ったら、緊張しちゃうかもしれないけど。友達に勧めるくらいの感覚で」
初めての私個人のお仕事。断るわけがない。
「もちろん、やらせてください! いつまでにですか、本のジャンルは何がいいですか、一つでいいですか」
先輩は私のやる気に一瞬驚いたようだが、すぐに笑って「嬉しいな」と呟いた。
「長期貸出期間が始まるまでに、ジャンルは自由、何枚でもいいよ。でも無理はしないでね。やってくれるっていうだけで嬉しいから」
「任せてください」
「やる気満々だね」
柔らかに笑う先輩の顔を見るのは落ち着く。先輩の頼みなら受けたくなっちゃうなぁ。
「よし、今は休憩しよう。お煎餅があるんだ。一緒に食べよう」
「いいんですか、図書室は飲食厳禁じゃ」
「ここは委員の奥の休憩室だからね。誰も来ない内に食べちゃおう」
先輩と食べるお煎餅の味を覚えた私だった。
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