30.気になるのは
テストも終わり、落ち着いた生活がまた始まった。休止中だった部活動も再開し、放課後の学校は賑わいを取り戻した。
そんな賑わいを遠くに聞きながら図書室にいた私。陸上部のさやかちゃんと南ちゃんをちょっと覗いてから帰ろうかな。
校舎を出て、体育館横から回って見に行こう。体育館の横には水道があって、そこに外の部活動生が休憩をしに来る。彼もその一人だっただろう。ちょうど私がそこを通り過ぎる時に先輩は来た。
「暑い……」
その声の主を見ると、タオルを首にかけた一条先輩。
「こんにちは」
私に気付いた先輩は「おぉ」と言って水道に向かった。
「え、猫宮? なんでここに? 一瞬分からなかった」
知らない人に挨拶されたと思ったようだ。
「帰る前にちょっと覗いてみようかと思いまして」
「そうかそうか」
うんうんと頷きながら、水を出し顔を洗う。
「今度ちゃんと見学していくか? と言っても、前に少し見てくれてたか」
「見たいです。普段の練習とか気になりますし、さやかちゃんがしっかりマネージャーやってるのかも気になります」
「友達だと気になるよな。じゃあ、来月あたりどう? さやかに伝えておくから調整してくれ」
「はい、ありがとうございます」
話は終わったと先輩は戻ろうとしたが、何かを思い出したのか私の方を向いた。
「あのさ、あぁ、お祭り本当に男と行ったの?」
一条先輩気になっていた?
「それは、そうですね」
「そうか、光がなんかこの前にやにやしながら、本当だと思う? 気になる? 教えてあげようか? と言ってきたから、なんか気になってしまって」
「光先輩、余計な事を」
「悪い奴ではないが、俺の心を乱すようなことをしてくる」
「大変ですね」
「それじゃあ、戻るわ。また」
こう言って先輩は戻っていった。部活の見学を怪しい人のようにではなく、正式に
出来そうで楽しみだ。
それにしても。いくら光先輩が言っていたからとしても、私が男の人と出かけるのが気になるものなのかな。部活の後輩の友達だから? 話す程度には関係性があるから? うーん、分からないけど、まっいっか。
今日は真っすぐ帰ろうっと。
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