29.救世主?


 テスト前にお祭りなんて駄目な行いだったのかもしれない。帰ってきてからもちょっとはした。そう、ちょっとは。


 学校に着くとみんなそれぞれ席に着き、数十分後に始まるテストに向け勉強を始めた。いつもはぎりぎりに来る人も今日は早くに来ている。


「さやかちゃーん、どう?」


 やってられるかと、私は離脱。


「ぼちぼちかなぁ」


 こういう時のぼちぼちは出来るやつだ。半泣きで席に戻った。


 そして私の午前中の戦いが始まった。


 静かな時間、文字を書く音だけが響く。時々、何を書いてるか分からない音も響く。


「はい、終わり―」


 やっとお昼。テスト期間のためもう下校していいのだが、勉強して帰ろうということになった。


 ただお腹が空いたので、購買で何か買ってからにしようとなった。


「うちは今どうしても焼きそばパンが食べたい」


 そう言うのは南ちゃん。


「私は鮭おにぎりがいいなぁ」


 これはなつかちゃん。


「絶対にあんぱん、糖分を欲してる」


 こっちはさやかちゃん。


「何でもいいから食べたい」


 私。


 購買に着いた私達は各々欲しい物を買い、教室に戻った。


「国語ってどう勉強するんだ?」


 南ちゃんはポニーテールを揺らす。


 みんなからちゃんとした答えの出ないまま、とりあえず食べ始める。


「みなさん、勉強しているのか食べているのかよく分かりませんね」


 そこに泉先生がやってきた。


「先生ちょうどよかった。国語の勉強法教えてください」

「文章読めば出来ますよ」


 一名を除き絶句。


「一人だけ納得しているようですね。でもそれくらいに考えておいた方が楽じゃないですかね。確かに覚えておかなければならないこともありますが」


 なつかちゃんは笑みを浮かべている。余裕そうだ。


「ほ、本当に? うちは現代文本当に苦手なんですけど……」

「日本語で聞かれて日本語で答えるのだからいけますよ」

「うわあああああああ。駄目だ、出来る人には全然通じない!」


 発狂する南ちゃん。


「まぁ、半分は冗談ですがもう半分は本当ですよ。答えは本文中に書いてあるのです」


 こう答えながらも先生は頭を抱える私達に教えてくれた。


「テストを作ってないから出来るんですからね」


 そして他の教科も教えてくれるのだった。


 一時間も指導を受けた後、泉先生は「用事あったんだった」と違うクラスに向かった。


「色々教えてもらっちゃった。助かった」

「うちも国語の点数救われそうで安心」

「私も明日からのはなんとかなるような気がしてきたよ」

「明日も明後日もテスト頑張ろうね」


 やっぱり一人だけ余裕そうだ。



 この後のテスト、私はそこそこの成績を残すことが出来た。本当に良かった。なつかちゃんは涼しい顔をしていて、さやかちゃんも「まずまず」と言いながら好成績だったらしい。南ちゃんはというと、悩んでいた国語は思ったより良くて喜んでいたが、数学で頭を抱えていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る