28.はぐれないように
さやかちゃんと来たお祭りにて迷子の私。光先輩と出会い、さやかちゃんの待つ迷子センターまで一緒に行ってくれるという。
先輩、昨日見かけた時も女の人と来てたけど今日とは違う人だなぁ。
「さぁ、猫ちゃん。お友達を迎えに行こうか」
先輩にそう言われ、並んで行列の中に入っていく。あまりの人の多さに先輩ともはぐれそうだ。
「これじゃあ、はぐれちゃうかもしれないなぁ。ほら、猫ちゃん。手を出して?」
なぜかと疑問に思いつつ左手を出す。
「これで大丈夫だね」
先輩は私の手を握ったのだ。
「先輩、これは、ちょっと」
「嫌かな?」
「嫌とも違うんですけど、でもそういうのではないというか」
「嫌じゃないなら、このままでいてね。俺に守らせて」
ただの迷子で大事じゃないのに、そう言われるとなんだか何も言えなくなった。
「はい」
迷子センターまでの間、私達は一言も話さなかった。いつもはおしゃべりな先輩が何も言わないなんて。
時間にしてどれ程だったか。さやかちゃんが見えた瞬間、先輩は手を放して「行っておいで」と優しく言った。
さやかちゃんと言葉を交わし振り返ると、もう先輩はいなかった。本当にただ送ってくれただけだった。さっきの女の人と合流するのかなと思ったら、ちょっともやもやした。
この後、また迷子になることなく無事にお祭りを楽しめた。
次、光先輩に会ったらお礼言わないとなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます