27.迷子の子猫ちゃん


 次の日になって、今日もお祭りに行く。さやかちゃんとの約束だ。


 地元の駅で待ち合わせをし、会場の最寄りまで電車で行く。途中乗り換えがあるが急に混んできて、私達は押し潰されそうになりながらも無事到着。


「今日も人いっぱいいるなぁ。迷子になりそうだね」

「やっぱり昨日も混んでたんだ。迷子になったらくぅちゃんが迷子センターで待ってるんだろうなぁ」

「私がそっちなの!」


 こんな会話が冗談にならなさそうなくらい人でごった返している。


 早々に一番手前にあるわたあめの屋台でパッケージの絵を吟味し購入。食べながら歩くなんて出来ずに、少し進んだ道を逸れたところで食べ始める。口の中で溶けていくわたあめに寂しさを覚えながら、もう次の屋台を探す。半分は残しておいて、絶対食べなければと思うチョコバナナに狙いを定めた。


 この暑さでチョコバナナのチョコは少しぺたぺたとしている。これもまた人混みの中食べられるものではない。脇道で食べようと袋に入れてもらい、向かおうとするがなかなか進まない。


「押されてわたあめがぺったんこになりそうだね」

「うちのはもうなってるかも」


 そう言いながら少しずつ進んでいたが、突然さやかちゃんが列の流れに乗ってすっ

と進み見えなくなってしまった。


 早速迷子だ。


 電話するにもとにかく脇道だ。あそこに行こうと目指すも上手く着かず、通り過ぎてしまう。それを何度か繰り返し、ようやく脇道に行けたと思ったら人とぶつかってしまった。


「す、すみま……」

「猫ちゃん捕まえた」


 驚いて顔を上げると、光先輩が目の前にいた。ぶつかった相手は先輩だったようだ。なんという出会いの確率。


「すみません、ぶつかってしまって」


 捕まえた、というのはスルーした。


「こんなところで会うなんて運命だね。もしかして迷子かい?」

「そうなんです。さやかちゃんといたんですけど」


 運命はスルーした。


 そうかそうかと頷いて、先輩は近くにいた女性達に「先に行ってて」と言った。女性と言っても多分高校生なんだろうけど、随分大人っぽく見える人達だった。


「それじゃあ、お友達と合流できるまで俺が一緒にいるよ」

「い、いえ。先輩も女性と来ているようですし、お気になさらず……」

「大丈夫だよ。見たでしょ? 先に行っててって言ったのを」


 そうなんですけどと、もごもごする私に「早く連絡しないと」と言った。


 確かに連絡しないことには会えない。頷くとすぐにさやかちゃんに連絡した。


「あっ、さやかちゃん今どこ⁉」

「今ね、めちゃくちゃ分かりやすいところにいるよ。さぁどこでしょうか」

「そんなこと言ってないでー」

「正解は、迷子センターでした」

「ごめん、めちゃくちゃ分かりやすかった」

「なので、、くぅちゃんがこっちまで来てくれると助かる」

「分かった、そこで待ってて」

「りょうかーい」


 電話を切ると、先輩が「見つかった?」と聞いてくれた。


「はい、どうやら迷子センターにいるらしいです」


 先輩は笑ってこう言う。


「迷子センターにいそうなのは猫ちゃんなのにね」

「どういう意味ですか!」


 どうにも光先輩といるとこうなる。



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