ありがとう、大嫌いだった元好きな人

 私は、拓真に感謝したい。彩花と私を繋げてくれた大事な人だと思う。私がこの想いに気づくこともできた。


 それに、大嫌いだったあの彼女自慢さえ、私が彩花を気にするステップ1だった。全部拓真に乗せられていた、と思ったらなんか嫌だけど、やっぱり自慢は演技でやってくれていて、彩花が私を好きだと知っていたのに、自分の好きを抑えて付き合っていたのは、凄いと思う。その事に関しては、後日ちゃんと彩花と謝りに行った。その時、拓真は何て言ったと思う?


「そっか、2人ともおめでと」


あのさ、優しすぎん?こういうところにまたキュンとなるところだったけど、今は彩花を想う気持ちの方が大きい。


 でも、ほんとに、拓真には感謝したい。


 拓真は何でもなかったかのように私たちのお礼を受けてるけど、私の感謝は伝わっているだろうか。


 たぶん勘の良い拓真だったら、私が拓真のこと、好きだったのも分かっていたんじゃないだろうか。最近そう思って、恥ずかしくて、寝れてない。だって、そんなの、恥ずかしすぎる……。




 あと、この前の受験で、鈴木くんは志望していた県外の高校に受かったらしい。というか、受験することさえ知らなかった。だから、拓真と鈴木くんは離ればなれになるらしい。あんなに仲の良い2人だから、別れても連絡を取り合うのだろうけど、他人事だけど何故か、大丈夫かな?と思ってしまう。


「おい、光星ぃ~(*´▽`*)」


 あれ、何か今日は拓真、機嫌が良い。光星と呼び捨てで呼ばれる鈴木くんは、満更でもないようすで照れている。拓真も鈴木くんに抱きついちゃって。なによ、恋人なの?!


 そんなところも気になるけど、あと2週間で卒業。私も地元の高校に無事に受かって、彩花と一緒に進学できる。彩花と流行りのリュックをおそろにしたり、雑誌を見て美容をならって自分磨きをしたりと……。入学準備を2人でしている。


 私はとても浮き足だっている。こんなに入学が楽しみなのって、初めてかも。今まで、小学生のときも、中学生のときも、入学式は笑ってなかった。


 今年は、笑えると良いな。


 あ、話逸れたけど。


 拓真、ほんとにありがとう。だって君がいなかったら、私……彩花と会えなかった。彩花を、嫌いな存在として認識したままだった。


 そして、拓真、


 もう、“元”好きな人だけど。








 「卒業生、起立」




 何も知らなかった2年間と、何もかも変わったこの1年は、ここで幕を閉じる。

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