やっと結ばれた想い
「あ、えっと……その……ごめんね」
口づけをかわした後、私は急に恥ずかしくなり、目を背けてそう呟く。
すると、あーちゃんは鳩鉄砲を食らったように目を丸くして、その後にっこりと笑った。
「はーちゃん。」
「……ん?」
俯いていた顔を、あーちゃんを伺うように上げると、その頬をガシッと掴まれた。
「……笑ってよ」
「ぅえ?」
「……昔みたいに……あーちゃんは、わたしの、およめさんだよって……言ってよ……」
彼女は、ほろほろと涙を溢しながら私の頬をずっと両手で撫で続ける。その姿にも、私はもういとおしさしか感じなくて。
あぁ、いつから好きだったんだろう。
ダメだと分かっていたのに。
止まらない恋心。
「ふ……あーちゃんは、わたしの……およめさん、だから…………もう、離さないからぁ……」
私もあーちゃんの頬を撫で返す。もう、2人でどろどろになりたかった。駄目な恋を、2人で押し付けあって。10年も前の約束を、今、果たした。
「……ありがとう、私を好きになってくれて……」
「あれ?そういえば拓真、いつの間にか居なくなってる。」
思う存分泣いて、好きと言い合った私たちだけど、いついなくなったのか、拓真が見当たらない。まぁ、もうアイツのことなんか、どーっでもいいけどっ!けっ!
私はまだ、彩花に聞きたいことがある。たくさん。たくさん。幼稚園児のとき、別れてからのいろんなこと。
まだ、私たちには時間がある。じっくりゆっくり聞かせてよ。晴れて恋人同士になったんだし?
手を繋ぐ放課後。汗ばむ首筋。前髪が風でふわふわ揺れて。君との再会を果たす。
ありきたりの言葉しか見つからない。
好きだよ
それさえ伝えれば、今はいいだろうか。
目があって、くすっと笑う。繋ぐ手を見てドキドキする。私たちは、1つの赤い糸で、結ばれてるから。
もう、別れることなんて、ないよね。
「あれ?」
「どうしたの、晴海?」
「あれって………」
日曜日の街。彩花と歩いていると、異様な光景が目に写った。右手でそれを指さすと、彩花は「ええぇえぇ!!」と驚いて左手で口を押さえていた。
「……うん、見なかったことにしよ」
「……そだね」
同時に後ろを向き、それに背を向けた。
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