第38話「特別講師」

第38話


「おはようアーサー、エミリア。」


「「おはよう。」」


登校初日からちょうど20日ほど経った朝、俺はいつもの通り、王城へと立ち寄ってアーサーとエミリアと登校していた。


「ソラ、そういえばだけどもう僕達といくのが完全に通学路になってるね。」


「うーん、そうだね。というかアーサー話は変わるけど、新年度早々今日は校長の友達と、その友達のエルフの方たちが来てくれるって本当?」


昨日も俺たちはいつもの通りに通学をしていたのだが、ランド先生が終礼の時にそんなことを言っていたのだ。流石は国内一の魔法学校の校長だな、人脈もかなり広いんだろう。

というか俺は真面目な質問をしているんだが、なんでアーサーはそんなにニヤニヤしているんだよ。


「ふーん、ソラはエルフみたいな人たちがタイプなんだぁ。まぁ皆んな細いし美しいもんねぇ。」


「そ、そうなのか!ソラ!」


「はっ、アーサーお前何変なこと言ってんだよ!前にも言っただろ、今ミナト エイシ対策で行き詰まってるって。」


「「あーそういうことね。(……よかった。)」」


「はぁ、取り敢えず分かってくれてよかったよ。……でもアーサー、後でちょっと来い。」


俺はそう言ってアーサーを威圧する。


「ち、ちょっとソラ冗談じゃないか……。」


「でもアーサー最近俺をイジりすぎじゃないか?」


俺はそう言ってさらに威圧をかける。だがアーサーがすぐに「すまない、これから自重するからさ。」と謝ってきたし、エミリアもいたので俺は威圧を解いてそのまま学校へと向かった。


***


「よーし、今日も皆んな揃ってるなぁ。」


俺たちが学校に着いて早々、ランド先生が俺たちを点呼したのちそう言った。


「それじゃあ早速今日の連絡だが、まずは一番の今日のイベントからだな。昨日も言った通り、今日の四限の魔法科基礎の授業で特別講師として、ラビリンス校長の御友人でありエルフのリーフさんがいらっしゃる。ここら辺に数日間はとどまるらしいけど、俺たちの教室には今日しか来てくれないから気になることは全部聞いておくんだぞ。」


よし、やっぱり来てくれるのか。それにあれだな、Sクラスだから一番の人が来てくれるらしいし。良かったよ入試で頑張って。


「……あぁそれとあれだ、今日からちょうど10日後に新入生対抗戦と十傑選定戦があるから皆んなベストを尽くせるように各自頑張ってくれ。その実戦についても、せっかくレオナルド七将とソラ七将がいるんだ、そっちの方も気になるならちゃんと聞いて鍛錬しておくんだぞ。」


そのランド先生が言って朝礼は終わった。


***


「よし、じゃあこれから実一限の技の授業を始める。」


「「「「よろしくお願いします!!」」」」


朝礼が終わってから、一限のレオナルド七将による実技の授業が始まった。


ちなみに我らがSクラスの授業時定は一限の実技に始まり、二限にこの世界の地理や歴史について学び、そして三限・四限に魔法や魔力などについて学ぶというふうになっている。


「さて、今日ランドからも話があっただろうが、今日でちょうど新入生大会まで10日だ。よって今日からより実戦的な訓練を取り入れていくから、しっかりついてくるように。」


「「「「「はい!!」」」」」


皆んなが返事をして、早速各自分かれての実戦訓練が始まった。


「よし、まずはレオン!ライナー!二人で俺にかかってこい。勿論どんな手を使ってもいい、俺に傷をつけてみろ!」


まずはレオナルド七将対ライナー、レオンの実戦訓練が始まった。レオナルド七将は言わずもがな、ライナーは風魔法と炎魔法を得意とした積極的な戦闘スタイルで、レオンは質の高い身体強化と炎魔法を使う、どちらもどちらかというと肉弾戦を好む生徒である。


「「いくぞ!!」」


"ダン!!……ヒューー!!"


まずはレオンが構えを取るとともに身体強化を自身に掛け、ライナーは自分の体に風を纏わせる。

そして、その後は二人とも間髪を入れずにひたすらレオナルド七将に攻撃を与えるべく肉弾戦を仕掛けた。


「そんなものか二人とも!!この20日間の鍛錬の成果はこの程度か!!」


だが相手はこの国最強の七将の一人だ。そんな生徒程度の攻撃などそよ風のようなものだろう。


「「まだまだ!!……」」


"キュイィーーーーーン!!……ボウッ!!"


そんな二人を鼓舞すべくレオナルド七将が声をかけると、ライナーは拳に纏った風をさらに高速で回転させるとともに炎を纏わせ、レオンは身体強化をさらに重ねがけして、ライナーと同じく炎を拳に纏わせた。……本当にレオンは拳闘士みたいだな。

しかし相手のレオナルド七将は焔の七大将軍だ。


「いい火力だ……だがまだまだだな。そんなものではソラになど一生追いつけぬぞ!!」


「「うらぁっ!!」」


そんなレオナルド七将の挑発に乗った訳ではないだろうが、二人の織りなす技の威力がさらに上がった。


火炎竜巻フレイム・トルネード!!」

火炎拳フレイムフィスト!!」


そして二人が必殺技かと思われるほどの威力をもつ技を放った。


「いい技だ……だが、もっと成長しなければな!!紅炎の拳プロミネンス・バーン!!」


ライナーとレオンの放った炎の魔法は混ざり合い、凄まじい威力を持ちながらレオナルド七将へと迫っていった。

だが、レオナルド七将はさらに光り輝く紅炎で二人の技を飲み込みながら二人にまで迫った。


「……ふぅ、二人はここまでだ、よくやった。肉弾戦においては特に成長しただろう。だがまだ魔法を使った一つ後の行動が遅い。ちゃんと敵を実感して戦うことを想定しろ、実戦では一瞬の集中の途切れさえ命取りとなるからな。」


「「はい!!」」


こうしてひとまず、今日のレオナルド七将によるレオンとライナーの指導は終わった。



「次、アーサー、エミリア来い!」


おぉ、今度はレオナルド七将対アーサー、エミリアらしい。この二人はさっきの二人と比べてもさらに強いが………まぁレオナルド七将なら心配ないか。


「「はい!!」」


氷山の侵攻アイスベルク!!」


ザクザクザクザク!!!


始まってすぐにエミリアが地面に氷を纏った剣を突き刺し、地面から突き出る氷山によって先制攻撃を仕掛けた。


「……面白い。」


ダン!!


レオナルド七将はエミリアの放った迫り来る氷山を、自身で生み出した熱によって融解させた。


プシューーー…………


エミリアの氷を、レオナルド七将が融解させたことで発生した水蒸気によってあたりに靄が立ち込めた。


「アーサー!!」


するとそんな時にエミリアが声を掛けた。


「はぁ!!!」


するとレオナルド七将の背後から、光り輝く聖剣を振りかぶったアーサーがレオナルド七将に斬りかかった。


「面白い!!」


だがレオナルド七将は紅炎を纏った腕でアーサーの攻撃を受け止め、弾き返した。


「姉さん!!」

「あぁ!!」


だが今度はアーサーがレオナルド七将に肉弾戦を仕掛け、エミリアは剣を刺したまま目を閉じた。


キンッ!!キンッ!!ダガーーーーン!!!


「ぐはっ!!まだまだ!!」


残りつつある煙の中で光り輝く聖剣と、光り輝く紅炎を纏ったレオナルド七将の拳とがぶつかり合い、激しい衝撃音が鳴り響いている。だがやはりアーサーの分が悪い。だんだん押されつつある。


「アーサー!!行くぞ!!」

「分かった!!」


しかしそんな時エミリアがアーサーに声を掛け、アーサーが一度最前線を退いた。……一体何のつもりだろうか。


「……なんだ。」


「私の20日の間の集大成だ。……氷結宮殿フリージング・パレス!!」


ビキビキビキ!!ザクザクザクザク!!


エミリアがそう唱えると、戦闘場をエミリアを中心として、氷の宮殿が築かれた。……何て魔力量だ。


氷の槍アイスランス!!」


そしてエミリアが剣を握りながら続けて唱えた。


「な、なんだと。」


すると宮殿の至る所から氷の槍アイスランスが出てきた。……これはまるでマナゾーンのようなものではないか。氷という物質で相手を閉じ込めることで、氷を媒体として魔法を放つのか。そうか、エミリアはあの氷に刺さっている剣で氷を操っているのか。


ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!


そして、エミリアの氷の槍アイスランスはマシンガンのようにしてレオナルド七将に降り注いだ。


「……これはすごいな。だが…煉獄ヘルフレア!!」


レオナルド七将も自分を中心として凄まじい熱量を孕んだフィールドを展開した。


「もう、ケリをつけさせてもらうぞ!!」


そして、そのあとレオナルド七将はすぐにエミリアへと迫った。さっきレオナルド七将の展開したフィールドのせいでもうエミリアの氷結宮殿は意味を成さない。さて、どうする。


「そうはさせない………聖剣の舞!!」


エミリアに迫り来るレオナルド七将をアーサーが相手とった。そんなアーサーのもつ聖剣は先ほどよりも密度も輝きも何もかも増していた。

そして、そんなアーサーは舞うようにしてレオナルド七将の攻撃を受け流すとともに反撃も試みた。


………だが、


「二人とも強くなったな。だが……ハッ!!!」


アーサーが聖剣を振り、エミリアが反対から氷を帯びた剣を振ろうとした時、レオナルド七将が二人に向けて熱の衝撃波を放った。それは入試の時に俺に放ったものと同じようなものだろう。


「「がはっ………!!」」


至近距離でそれを受けた二人はかなりの距離を吹き飛ばされた。


「…………ふぅ、これでひとまずアーサーとエミリアは終了だ、お疲れ様だ。」


レオナルド七将はそう言って二人の元に歩み寄っていく。


「二人ともよくこの短期間でここまで強くなったものだ。」


「「……はい。」」


やはり二人ともかなり疲弊しているようだ。


「二人とも技の精度も質も威力も高く、動き自体もなんなら連携も申し分ない。今度の試合は一人での試合だが、二人はどんな相手であっても善戦もしくは圧勝できるだろう。」


「「ありがとうございます。」」










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