第37話「新たな秘策」

第37話


「すみません、戻りました。」


俺はミナト エイシに立ち向かうための魔法をなんとか作成することができて、保健室から我らが教室へと戻っていた。


「おーソラ、十傑にこっ酷くやられたようだが、大丈夫か?」


教室に戻った俺をランド先生の言葉と、クラスメイトたちの視線が出迎えた。


「は、はぁまぁ何とか………。」


「ならいい、ちょうどこれから魔法基礎についての授業を始めるところだ。早く席につけ。」


俺はランド先生にそう促されて、アーサーの隣の自席に着いた。

そうしてアーサーとエミリア、そしてメリッサさんから、もう大丈夫なの?と声を掛けられたが、俺はゆっくり休めたから大丈夫だよ。と返した。


……さて、十傑選定戦までちょうど一ヶ月後か。


***


「ただいま戻りました。」


俺はあの後、魔法科授業を2〜4限まで受けてから再びミナト エイシ対策をするために少し早足で家へと帰っていた。


「「おかえりなさいませ。」」


そんな俺を執事のアルフレッドさんと、ピンク髪のヴィルマさんが出迎えてくれた。

その後俺は使用人の人たちに挨拶をしつつ、自室へと帰る。



「さて、まずはやっぱり魔力で空間を支配する。マナゾーンを形成することだな。」


マナゾーンを形成する。それはただある一定の領域に自身の魔力を放つだけではない。


「自分の魔力がただ存在しているのと、支配しているのではまるで意味が違う。」


ただ自身の魔力が漂っていてもほとんど何も意味をなしはしない。しかし、自身の魔力の放っているある一定の領域・空間を完全に支配していると、その空間内のどんな場所からでも、どんな魔法であっても放つことができるのだ。


「その原理としては、魔法を放つマテリアルは魔素、マナであるから、それを完全に掌握している自身のマナゾーン内では、マナゾーン自体が自身の体、つまりは魔法を放つ媒体となる。なのでそのマナゾーン内ではマナと、そのマナゾーンが存続し続ける限りどこからでも如何なる魔法でも放つことができるってことだ。」


それにもし時間を止める性能で大きくミナト エイシに遅れをとっていると仮定をしたときに、ミナト エイシに時間を止められた後、近距離攻撃をされそうになったときの対策としてマナゾーンは不可欠なのだ。


「それこそ、俺のマナゾーン内で魔法が暴発したり、上手くいって俺のマナゾーンが完璧に形成できて完全にミナト エイシのマナを完全にシャットアウトすることができたとすれば………その時ミナト エイシの時間魔法の影響を受けなくなるかもしれない。」


………そうだ、そうじゃないか。ある領域の空気中に漂う魔素を俺のマナとして完全に支配することができれば、ミナト エイシの如何なる魔法の影響も受けなくなるのではないだろうか。


「そうと決まれば、俺のやることは一つだな。…………ふぅ」


俺は一呼吸置くと、自分のベッドの上で胡座を組み、深呼吸を続ける。


「やっぱり空間を感じるには目を瞑って、深呼吸をしてやるのが一番だな。」


まずは俺を中心とした球を生成する。これ自体は、取り敢えず自分の周りのある一定の範囲を熱で括るだけだからそこまで難しいことではない。それに今までにも何度もやっているしな。


「………よし、取り敢えず球を形成すること自体はできたな。…………次は、」


次はその熱でくくった空間内を完全に俺のものとして掌握する。マナ自体で……。


「いや待てよ、……魔法自体は分かるけど、マナってなんだ……?熱の魔力自体はわかるからそれでいいならいいんだけど………。」


俺はマナ自体を感じ取るという、新しい概念を気にすることを諦め、熱の魔力を用いて始めることにした。ちなみに理由としては、俺はほぼこの世界にいる全員が使える基礎魔法を使えなく、熱魔法しか使えないからだ。

だからもし他の魔法の属性も使える人がマナゾーンを展開する場合、マナゾーンを作る際に一度の展開はできたとしても、その展開した際の一つの属性でしか戦うことはできないのではないだろうか。


「つまり、純粋な魔素、マナの根本を捉えていなければ、ほとんどの人たちはマナゾーンを展開する=一つの属性に縛られるということになるのではないだろうか。」


待てよ、そう考えると俺以外は特殊な人種か、一つの属性にかなり特化した人しかマナゾーンは使えないというか使わないことになってしまうのではないだろうか。


「それにこれは、考えついた俺からしてもかなり難しいぞ。それにマナゾーンを上手く形成できても、それを維持するのにはかなりの集中力と魔力量が必要となるだろうな。」


そうなら俺の専売特許となる可能性も低くない。なら極めるっきゃないなこれは。


「よし、じゃあ早速熱で区切った空間内を俺の熱の魔力で満たしていくとしよう……。」


俺はそうして、魔力をどんどん自分から外の球周までへと放っていった。


「さて空間内の魔力を、魔素を全て支配・掌握できるだろうか。」


俺はさらに熱の魔力の密度を上げていくようなイメージをしつつ、集中力を高めていく。


***


「………ふぅ、まぁ今日はこんなもんだろ。」


俺はしばらくマナゾーン形成のための鍛錬を続けたが、これまでとは違ってすぐには実現しなかった。


「…やっぱり問題はどうやって自分の熱の魔力以外の、空気中に漂っているマナを掌握するかだな。」


やはり結局はマナを感じ取れるようになるしかないのだろうか。

俺は魔力が無限だから、空気中に漂う魔素・マナの存在なんて気にかけてもいなかったからな。……まぁほとんどの人がそうだと思うけど。


「魔力無限の俺が魔法を使う媒体として優秀すぎたのか。………甘えだな。」


手っ取り早く、周りのマソを活用して戦ったりすることができたり、マソの塊である精霊と契約したり、生命力に敏感なエルフの戦士とかに会えるといいんだけどな。


こうしてミナト エイシとの対戦までの対策初日は幕を閉じた。


『十傑選定戦まで残り30日』

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