第36話「十傑選定戦に向けて3」
第36話
「アーサー、ミナト エイシに魔法をかけられた時、いや正確にはミナト エイシに時間魔法をかけられる直前だけど、魔力は纏っていたりした?」
するとアーサーは不思議な顔をしながらも答えた。
「それは、恐らく纏っていたと思う。僕はそもそも超高濃度で高出力の魔力を使いこなすためにいつも魔力を纏っている訓練をしていたから。でも全然本気じゃないし、魔法を出しかけてたソラと比べたらほとんど魔力は放っていないに等しいと思うけどね。」
「そうか、分かったありがとう。」
俺は全力で魔力を纏い、集中させ、高めていたからな。やはり魔力が関係しているのだろうか?いや待てよ………
「アーサー、エミリアはどうだったか分かるか?」
俺がそう聞くとアーサーは「姉さんも魔力は纏っていたけど、なにも記憶がなかった。って言ったたよ。」と言った。
「そうか、ありがとう。アーサー。」
エミリアはなにも記憶がなかった。つまり全てが止められていたということか。だがエミリアにその後の変化はない。
つまり、ここの時点で精神魔法とかではなく、時間魔法であるということが確定ということか。次に俺とアーサーの魔力の共通点、俺・アーサーとエミリアの魔力の違いだが、俺の魔力は、れっきとした"熱"の魔力で、アーサーの魔力もかなりの高出力でかなりの熱を帯びた魔力。対して、エミリアの魔力はどちらかというと氷とか水に有利で余り熱を持たないものだ。
「つまり、熱が時間に関与している可能性がある……か。」
「ソラ………おーいソラ。なにを考えているんだー対策できたのか?」
おぉ、分析とか考察していたから全然アーサーを気にしていなかった。
「あぁ、うんアーサーとエミリアのおかげでだいぶ分かってきたよ。俺の仮説が正しくてかつ、上手くいけばだけど、ミナト エイシの時間魔法が攻略できるかもしれん。」
「そうか、それは良かった。それで一体どんな理屈で、どんな対策なんだ?」
そうアーサーは尋ねてきた。
「うーん………」
難しいな。なにもアーサーに話したくないなんてことは全くないのだが、いかんせんどう説明したらいいのかが分からない。なんせ、この世界は元の俺のいた世界基準でいうと、魔法を除くとせいぜい中世の文明に毛が生えたようなものだからな。
つまり、文明や科学についてなんかはまるで発展していないし、俺が話そうとしている宇宙論的な話も理解されるはずもない。そもそも宇宙ってなに?って次元だろうしな。
「アーサー、済まないが理屈に関しては難し過ぎて上手く話せない。本当にごめん、だけどこれだけは言える。恐らくミナト エイシの時間魔法は攻略できる、というかできるようにするさ。アーサーとエミリアが協力してくれたしね。」
「そうか、理屈に関しては気になることは多いにあるけど、それなら良かった。僕としてもソラには勝って欲しいしね。」
「あぁ、勝つさ。」
「うん、それ聞けてよかった。それじゃあ僕は先に教室に戻るよ。ソラももう少し休んで回復したら戻ってくるんだぞ。僕と姉さん、それにメリッサ以外にも結構みんな心配してたからね。」
そう言ってアーサーは先に保健室から出て行った。
「ふぅー………大体意味は分かったのだが、問題はどうするかだな。魔力は無限だから、もし上手くいって実現することができれば、常時展開で時間をずっと止めることもできなくはないはずなんだけどな。」
俺はそう言って、さらに考える。
まず、そもそも時間を刻むのは熱であると考えられている。そこでなんで熱なのかってことを言っておくと、まぁ少し説明じみたことになるけど、例えば水が熱によって沸騰を起こすように、宇宙や星々さらには生命が熱があって初めて誕生するように、変化という現象を起こすためには、必ずエネルギーとなる"熱"が必要となる。またそれらは絶えずして、消えては生まれ、消えては生まれを繰り返している。
それらと同じように、宇宙論とはいっても諸説あるが、宇宙の鼓動、宇宙を広げる膨張熱が時を刻むのに関係していると言われている。つまり膨張熱に関与することで宇宙全体の流れを止めようということだ。
だから結局はその宇宙の膨張熱に関与できれば良いのだが、正直言ってどうやればいいかなど分かりもしない。
「さーて、まずどうするかだな。」
手っ取り早く、宇宙の熱を感じ取れればいいんだけどな………そんなことできるわけないしな。
「うーん……これ以上考えても出なさそうだから、自分の熱やエネルギーの広がりや波動、またそれらが遥か遠くに、そうそれこそ宇宙の果てまで届くように、干渉できるようにイメージを広げていこう。」
俺はそうすることを決めて、保健室のベッドの上で胡座を組んで、静かに目を閉じると、深く深呼吸をした。
「ふぅー………
俺はそう唱えて、自身の放つ熱、エネルギーの波動を感じ取る。そして、それが広がっていくのを感じつつ、その波の一番外を意識しつつ、感じる。
「さて、どうだろうか。」
俺は意識を維持しつつ、さらにそれを広げていく。宇宙の最奥、最先端に到達するまで。波を大きくし、加速させていく。
「直線で突き進むんじゃない。………空間で感じ取るんだ。」
俺はそうして感覚を研ぎ澄ませながら、さらに奥へ、先へと熱の波動を進めていく。
一度でも捉えることが、感じることができれば、何度でも捕らえられるはずだ。
「ふぅ…ふう……、捕らえろ。」
そうして俺はしばらくの間、宇宙の膨張熱に関与するべく、自身の熱の波動による空間把握を進めた。
「…………空間の止まり、遂に俺の熱の追い越せない熱の波動を見つけたぞ。これ……なのか?」
実は今までも色々な熱を感知しながら進んできたが、俺自身の放つ熱の波動がそれを追い越すことができる以上、それは最も先を進む、宇宙の鼓動、宇宙の膨張熱ではない。
だが俺はついに最奥に辿り着いた。今もまだなお広げ続け、加速させ続けているが一向に追い越すことができない。
「よしこれだ、これを………捕らえろ。」
俺はそうして、自身の放つ熱の波動と宇宙の膨張熱とを同化、干渉させた。そして……
「………止め…たか?」
俺はここで遂に目を開け、胡座を解いた。
「どうだ……成功したのか?」
俺はそうして保健室の窓から外を眺めた。すると、一見風景が止まっているような気がした。だが俺話せるし普通に動ける。さて、どうなんだろうか。
「おぉー…本当に止まってる、のか?………おいおい、どうやら成功しちゃったらしいな。」
しばらくの間、窓の外を見て景色を眺めるいたが、一向に変化や現象が起こらない。つまり、さっき説明した通り、変化や現象が起こっていないと言うことは………俺以外の熱が停止している、つまり時間が止まっているということだ。まぁ難点としては、俺の場合はミナト エイシのものほど便利ではないということだな。
「恐らくミナト エイシは領域を定めて、自由に時間を止められるレベルまでに達しているのだろう。それにミナト エイシのは特殊魔法だしな。俺のは理屈に沿っているとはいえ、半分無理矢理にやっているみたいなものだし。」
そう、俺の場合は範囲や時間を指定しない、ただ理屈通りに全てを止めるということしかできない代物なのだ。
"プシューーーー"
「うおっ!?解除。」
そんなことを考えていると、急に肩から煙みたいなのが出てきた。これは負担がデカすぎるから使用限界的なのがあるってことなのだろうか。
でも理屈的にはできているはずだし、魔力も無限だからずっと止め続けることもできないわけではないはずなんだけどな………。
それはあれか、まだ俺の分かっていない宇宙のことがある、もしくは神による対処か、だな。
「まぁでもこれでミナト エイシに立ち向かう手段は得た。」
範囲や使用時間を決められるかは、取り敢えずまた今度に考えるとしよう。
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