第31話「大魔法打ちっぱなし選手権」

第31話


「おぉ二人とも戻ってきたな。アーサーもう大体の説明は終わったけど大丈夫なんだな?」


俺たちが教室に戻りすぐに先生が聞いてきた。


「はい、この学園のイベントは全部人気ですし、こっそり毎年見に行っていましたから。」


「そうか、分かった。それでソラのことはどうなった?」


「えーっと、十傑第一席のことを聞かせたら何か決意したかのようにしていて………まぁとにかく止めるのは無理そうです。」


「そうか、分かった。まぁ俺としても二人の戦いは見てみたいしな。それじゃあそろそろ一限になるから早く戦闘場に移動するぞ。」


先生がそう言って、俺たちはつい先日試験を受けた戦闘場へと向かった。


この時、俺は学園生活が始まったばかりということで油断していたのか、十傑たちにもうすでに目をつけられていることなど思いもしなかった。


***


「よーし、全員いるな。それじゃあこれからお前らのステータスを測るぞ。この学園は王立の最高峰だから正確なステータスボードが設置してある。まぁそんなことはいいとして、ステータスの他にも魔法の威力とか使い方だとか効率・お前たちとの相性の良さとかを総合的にみていく。」


ふーん、でもそれって皆んなに俺のステータスバレることになるんだけど………。まだ信頼関係ができていない以上、迂闊に教えたくはないんだけどな。それにまだアーサーとエミリアにも教えてないしな。それこそ、俺がステータスを教えたのはレイスさんくらいだし。


あーレイスさんどうしてるかな。


「あの、ランド先生。ステータスって測ってどうするんですか?」


俺は思わず先生に聞いた。


「うーん、別にほとんど何にも使わないな。それに別に公開したりなんかしないし。ただお前らは普段簡単には自身のステータスなんて見れないから測るだけだ。」


それならさ


「あのー自分で見れる場合、測らなくてもいいということですか?」


俺がそういうとランド先生含め皆んなが驚きを隠せないような表情を見せた。

それから少ししてランド先生が頬に手を当て


「まぁ七大将軍だからな。それに国家の最大戦力だし、そう簡単にステータスは晒したくないわな。………よし分かった。ソラはステータスは測らなくてもいい。だが魔法は撃ってもらうぞ。

それに皆んなも安心しろ、ステータスはステータスカードとしてお前らに直接渡す。お前らの管理不足ということ以外、お前らのステータスがバレることはない。」


ランド先生が言った。そうか、てかそのシステム先に言えや。変に注目される必要なかったやんけ。まぁいい念には念を、だ。


「よーし、それじゃあ早速ステータス測ってくぞ。まずはアーサーからな、それじゃこっちこい。」


そう言われてアーサーは巨大な水晶の前に行く。前にスターリングウォードの冒険者協会で見たやつよりも随分とデカイな。


それから俺以外の皆んながそれぞれステータスを確認していく。


「アーサー、エミリアどんな感じだった?」


俺は戻ってきたエミリアとアーサーに声をかけた。


「うん、まだ本格的に授業始まってないからなんとも言えないけど、入学前よりかは多少上がってたかな。というか皆んなも大体そんな感じだと思うよ。それよりもソラ、本来ステータスを教えるのは本当に信用できる相手だけだからね。人にすぐ聞くのはマナー違反ってやつになりかねないから気をつけて。」


「あ、あぁ悪かった。すまない、本当に俺は色々と知らなさすぎるな。」


俺がそう返すと、今度はエミリアが「次から気をつければ全然問題ないさ。」と励ましてくれた。


各々がステータスカードを受け取り、今度は魔法の威力を測ることとなった。


「よーし、これで全員自身のステータスが把握できた状態にあるな。それなら次は魔法だ。これは各々が打ちたい魔法を撃ってくれて構わない。だが一つ言っておくと、これはさっきのステータスと違い学園での評価の一基準になり得る。魔法はステータスと比べて、情報漏洩等も気にし過ぎる必要もないのに加え、ステータスよりも戦略的重要性が高いからな。」


先生がいった。その後ランド先生が「ほとんど、全員が全力で魔法を撃ってる。それこそ十傑第一席とかもな。」と何やら意味ありげに言った。何かあれだな、事実か誘いか分かりにくいな。


「分かりました、ちゃんと本気で撃ちますから。」


俺は仕方なさそうに言った。理由はランド先生がある程度の信頼に足ると見込んでのこと、それと皆んなには一度試験の時本気を見せているから別に魔法を見せてもいいと思ったからだ。


「さて、それじゃさっきと同様にしてアーサーから頼んだ。あ、やっぱりちょっと待ってくれ………」


先生がアーサーを止めた。何やら説明があるようだ。


「アーサーすまない。ここは最上位クラスだからな、高みを目指して欲しいからちょっと説明させてもらうぞ。まずあれを見てくれ。」


ランド先生はそう言って、人型のマネキンのようなものを指差す。


「あれは見ての通り人型の模型のようなものだが、あれは魔法人形といってだな受けた魔法の純粋な威力を数値として表せる。あの背中にある水晶ボードに数値がでる。」


なるほどね、分かりやすい。


「さて、そこでお前らには最低でも中上位魔法くらいは撃ってもらいたい。実を言うとこれでも甘いほうだからな。入学したばかりだからこれ程甘いだけだからな。あぁイメージとして、一応説明しておくとこれくらいが中上位魔術だな。」


そう言うと先生は巨大な岩を出し、魔法人形へと放った。


"ドゴーーーーーーーーーン"


先生が魔法を放った直後、爆発が起こった。全く関係ないけど名前の通り土魔法使うのね。

それにしてもなかなかの威力だな。マネキンの裏へと回って確認すると、ランド先生が放って出た数値は2500となっていた。


その後ランド先生の話を聞いていくと、魔術は初位→中位→上位→最上位→伝説級魔術→神話級魔術→神位魔術となっているとのこと。

そしてそれを数値化すると初位が100〜1000、中位が1000〜3000、上位が3000〜7000、最上位が7000〜12000、ちなみに伝説級からはというと魔法人形が耐えきれないらしい。

それと目安として大体の一般人はいっても中位止まりらしく、魔術学園の生徒の平均は一般クラスで中上位、Sクラスでは上位くらいらしい。ちなみにこれは一年の全過程が終了した時点での話だ。

つまりランド先生はSクラスなのだから今の時点で一般クラスの全過程終了時の平均くらいは取れと言っているのだ。


でもそれらを踏まえて考えると、中上位と上位って順番というか序列だけでいうと一個しか変わらないけど、それだけ中位と上位の間には分厚い壁があるんだな。


「よし、これで説明は全部だ。それじゃ改めてアーサーから頼むな。」


説明が終わり、アーサーが魔法人形の前へと出る。


「それじゃあ行きます。」


アーサーはそう言うと聖剣を取り出し、あの試験の時のように魔力を集中させ始めた。ちなみに、剣とか武器は自由に使っていいらしい。まぁそこら辺はアバウトにってことだな。


「それにしても、凄い量と質の魔力を練っているな。あの時よりも少し強くなってる気がする。……凄いなアーサー。」


「アーサーは凄いな。私よりも凄く多くのことを背負っている……それに比べて私は………はぁ」


何かエミリアと話しているとエミリアが急に落ち込みだした。何でだ?


俺がそう思っているとアーサーの剣が金色に輝いた。これであの試験の時と大体同じくらいなのかな。魔力の質は今回の方が凄い気がするけど………あれ?まだ撃たないのかだろうか………。


それからまた少し経つと金色の外側が、蒼く光輝きだした。何なんだよ、その魔力の密度は!?

俺がそんなことを思っていると、ようやくアーサーが剣を振るった。


"はぁあーーーーー!!!!!"


アーサーが叫びながら本気で剣を振るった。

すると出た数値はなんと8000だった。


「凄いなアーサー…最上位魔術じゃないか。これは俺も負けられないな。」


俺は戻ってきたアーサーに声をかけた。


「威力だけだからね、でもあれは直接戦闘じゃ使い物にならないし、まだまだ課題も多いよ。」


アーサーは俺にそう言った。


「うーん、まぁ確かに一対一の時じゃ使うのは難しいけど、それこそ戦争の時とかは十分使えると思うけどなぁ。それにアーサーが撃てるように持っていったりするのが仲間の役割だしな。だから別にアーサーは指揮官になったりするのも手じゃないのか?それこそ立場もあるし。」


「なるほど、確かにね。僕も思ってたこともあったけどソラが勧めるなら間違いないのかもね。………でもやっぱり僕は個人としても七将とタメ張れるくらいは強くなりたいから、僕は指揮しながら戦う将軍を目指そうと思う。」


俺が提案すると、アーサーは確固たる意志を持って俺にそう返してきた。

なるほどな、俺もアーサーと一緒に将軍やれたら嬉しいし、是非応援するとしよう。


…………さて、次は


「エミリア、次頼む。」


エミリアか…どうなんだろう?

エミリアの本気の威力特化の攻撃は見たことないからな。

というか今更だけどアーサーのあの攻撃を受けても壊れないって凄いな。


うーん、エミリア少し力んでるけど大丈夫だろうか。そう思って見ているとエミリアもアーサー同様剣を抜いて、試験の時のように氷を生成して剣に纏わせた。すると今度は剣を地面に突き刺した。

確か試験の時は地面から氷山を出していたはずだけど、今回はどんな魔法だろうか。

そう考えながら見ていると、それからすぐにエミリアの頭上に巨大な氷の塊が生成され始めた。それからしばらく待っているともう視界が埋まるかというほどの氷塊が上空に出来上がっていた。これまた何で魔力量だ。


大氷塊の隕石フローズンメテオ!!!」


エミリアが叫び、すぐに"ズッズッズッズッ!!!"と大氷塊が落ちてきた。

おいおい、これ俺たちにも当たったりしたりしないよな。…………いやこれ俺たちにも当たるだろ!?俺はそう思ってすぐにクラスメイトと先生に声をかけ俺の周りに集まらせる。


「来るなあ、はぁ先生あれがここに落ちたら冗談じゃ済まないですよ。だってあれ規模とかをみるに最上位魔法くらいは普通にありそうですし………」


俺はランド先生にそう言う。するとランド先生は意外にも「まぁ最上位行かないくらいだろうな。戦略級の魔術ではあるが。」と言った。いや、それよりどう対処するか言えや。


「んで先生どうするんですか?破壊していいんですか?」


俺は少し急いでランド先生に尋ねる。もうすでにすぐ真上まで大氷塊が迫っているのだ。


「うむ、あれを教師権限で見込み数値7000とする。そして生徒と教師の安全確保のため破壊を許可する。まぁそれとこの戦闘場は壊れないから安心しろ。」


先生は俺にそう言った。俺は先生にも言質をとったので早速迫り来る大氷塊破壊するために、またまだ構えているエミリアの元へと向かう。


「エミリア、魔法としては凄いけどこれはやりすぎだよ。使う場所をもっと考えないと。」


俺はエミリアにそう声をかけた。するとエミリアは俺に笑顔を向けるとともに


「まぁ見ていてくれソラ、姫将軍としての本気を見せてやるからな。」


と言った。

なので俺はエミリアを信じて「分かった。だけど本当に俺たちが危ないと思ったら壊すからね。」とだけ声をかけて、ランド先生とクラスメイトのいるところへと戻って行った。


「ソラ、破壊しないのか?」


俺は戻って早々にランド先生とアーサーに聞かれた。さらに後ろを見るとクラスメイトの皆んなも不安そうな顔をしていた。


「戦闘場が壊れないということで、大丈夫と言っていたエミリアの言葉を信じます。あ、でも俺と皆んながいる場所にはもうすでに熱を高速回転させているので大丈夫です。だから安心して下さい。あーでもあんまり離れないで下さい。」


俺は安心させるために、ランド先生とクラスメイトに言った。


するとそう言った直後に、巨大な氷塊が少しずつ凝縮されていき、密度を増すとともにスピードも増して落ちてきた。エミリアの目標は勿論魔法人形だ。


"ドゴォオオオーーーーーーーーーン"


着弾した直後、アーサーの時と引けをとらない程の音がして魔法人形に激突した。

ちょうど俺たちとエミリア自身には当たらないようにかつ威力を増すためにコントロールしたのか。凄いなエミリアも。


少しして、ランド先生が数値を確認しに行った。


「えーっと数値は8500か………凄いなエミリア。アーサーと同じく最上位魔法だ。さ、さてそれじゃあ次はライナーよろしく。」


そう言われて今度はライナーが前へと出る。確か得意魔法は炎と風だったはず。なんだかこの二人の後にやらされるの可哀想だな。

さぁ今度はどんな魔法だ?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る