第30話「新たな火種」

第30話


「メリー…本当にメリーなの!」


自己紹介が終わった後、すぐにエミリアは涙目になりながら隣のトラスト公国から来たメリッサ王女の元へ行き、問い詰めていた。


「本当、本当だって。落ち着いてよエミリアちゃん。」


「だって……だって……。何年も来てくれなかったではないか。」


何かもうカオスだな。当事者からすると感動の再会だろうが。というか俺これ完全に場違いなんだが、……まぁいいや実況してよ。


「……姉さん………姉さん!落ち着いて!」


お、アーサーが動いた。お、エミリアはようやくメリッサさんから離れた。


「久しぶりだね、アーサー君。最後にあったのは………まだ6歳ぐらいの頃だったかな?ごめんね、エミリアちゃん。公国とか私も色々あって、国から動けなかったんだ。」


ふーん、王族は大変だね本当に。


「大丈夫だよメリッサ。それは、僕もエミリアも理解はしてるからね。ただ姉さんにとってはメリッサと会えないのがとても辛かったんだと思う。なんせメリッサは姉さんの唯一の心を許せる友達だったからね。」


本当に大切な幼馴染だったんだな。


「………うん、そうだね。ごめんね、エミリアちゃん。それにアーサー君も。これからは毎日一緒に学園生活楽しもうよ。」


うんうん、いい友情じゃないか。エミリアもそう言われて、もう泣いてるし。


「でも公国でもアーサー君とエミリアちゃんのことはよく聞いたよ。聖剣使いの新生に、近衛騎士団を率いて自ら戦で活躍する姫将軍。私からしたら二人とも本当にすごいと思うよ!」


うんうん、二人は本当に凄い。背負うものが計り知れないほどあるのに、自ら戦っているからな。

うんうん、三人が話しているのを俺は頷きながら聞き続ける。


「ところでさ、アーサー君にエミリアちゃん。この方は?」


メリッサさんは俺の方をみた。

それで思わず俺は「え?」と言ってしまった。また、それに合わせるかのようにしてアーサーとエミリアも「え?」と言った。


「あ、え?………いやシンモン ソラさんですよね。名前は先程覚えましたが、正直さっきはエミリアちゃんとアーサー君のことでいっぱいいっぱいだったので…………その、すみません。」


「はっはっ、ソラを知らないってさ。メリッサ、彼はね僕なんかとは比べ物にならないくらいの超新生だよ。何せ単独で神話級討伐を成し遂げたし、レオナルド七大将軍を下し、僅かな期間で黄金双剣勲章と七大将軍という地位、さらには最上位伯爵という爵位まで得た男だからね。」


アーサーお前しょっちゅう俺のこと笑うよな。そんなに俺を煽るのが楽しいか?


「そんな凄い方だったのですか。すみません、無礼を。まさか七大将軍がお一人であったとは………」


「い、いやいややめてくださいよ。俺とは気軽に接して下さいって、ほらお互いにアーサーやエミリアとも気軽に接していることですし、ね?それに貴方は公女様なんですから敬うのはこちらですし。」


なんだこりゃ、お見合いかなんかかよ。


「えーっと、分かりました。それではアーサー君と同じようにソラ君と呼ばせてもらいます。私のことはメリッサかメリーでお願いします。」


「はい、いやうん分かった。よろしくメリッサ。」


よしまず一人仲良くなったぞ。そう思い俺は心の中でガッツポーズをした。そしてその後もその四人で話をしていた。

すると少ししてからランド先生が戻ってきた。


「そう言えば、今日の予定と連絡事項言い忘れてたな。今日はこの後一限は実技でお前らのステータスを測るからお前らが試験を受けた戦闘場に集合な。あと、あれだ今日からちょうど30日後くらいに学年別の最強決定戦的なやつがあるから各自準備しておくように。」


先生がいった。久しぶりにステータス測るな。少し緊張するなぁ。あ、でも俺は転生者の特権でいつでも見れるんだった。………というか昨日の夜も見たし。はぁーつまんないの。

あ、でも最強決定戦か、俺も男子だから血が騒ぐな。なんちって。でも本当に楽しそうだ。


「それと最後にもう一つ。お前ら安心していいぞ、今回の最強決定戦にソラは不参加だ。」


えっ!?


「なんでですか!?」


「はぁ、だってお前が出ると無双するだけになるだろ。それに早速お前以外の新入生はお前との差を見てモチベーションがなくなったり、メンタル折れたりしたらどうするんだよ。お前は七大将軍なんだぞ。」


「そうだな、俺もソラとは戦いたいけど今回は仕方ないと思う。先生のいうことは正しいよ。」


先生とアーサーに言われる。


「でも………はぁ。分かりました。」


俺は仕方なく了承する。はぁ出たかったな。

そんなこんなで俺の楽しみにしていた希望は一瞬にして崩れ落ちたのだった。


「まぁそんなに分かりやすく項垂れるなソラ。別に1年の部に出られないだけで戦うなとは言ってないぞ。………というかこれは俺のせいじゃなく、ラビリンス校長の意思だしな。それとお前はこの学園の十傑評議会決定戦に校長推薦枠として出てもらうことになった。まぁあれだな、色んな強い奴らと戦えるチャンスだ。楽しみにしておけ。それと最後にもう一度言うがこれは校長の意思決定だ。」


なんだ十傑評議会……なんだそりゃ?

何か周りの生徒たちはアーサーを含めめちゃくちゃ驚いているけど。


「さて、それでソラ。十傑評議会決定戦に出るにあたって先に聞いておくことがあるのだが、十傑には第一席から第十席まであるわけだが、ソラは第何席と戦いたい?」


先生に聞かれた。まぁでも聞いた感じ十傑とはこの学園の最強10人的な感じの存在なんだろうな。まぁ勝てたとしても負けたとしても、狙うなら一番だろ。だから


「勿論、第一席です。」


「おい!ソラ。ダメだ考え直せ。」


俺は一番強い人が気になったのでそう言ったのだが、アーサーがすぐさま反対してきた。


「なんでさ?」


「先生、少しだけ時間ください。ソラは十傑について何も分かっていないようなので。その間先生は皆んなに新入生対抗戦について説明しておいてください。僕はもう知っているので。それじゃあお願いします先生。ほら行くぞソラ。」


「お、おう分かった。よろしくなアーサー。それじゃあ、早速お前たちに対抗戦について説明するぞ。まず…………」


***


「はぁソラなら第一席とかいうと思ったけど、まさか本当に言うなんてな。」


俺はアーサーに教室の外に連れ出されていた。


「なんでさ……いいじゃん強くなりたいし。何より一番強い先輩と戦いたいし。」


「あのな…強くなることは皆んなの目標だし、お前の志が高いのも分かる。だけどソラはこの学園についてや色々と知らなさすぎる。何もソラのことを詮索するなんてことはしないが、知らなさすぎるのはソラにとっても致命的なことに繋がりかけない。」


なんていいやつなんだアーサーは本当に。俺の保護者になってもらおうかな。でもいくらアーサーでももう少しの間だけは転生者であることを隠しておきたい。すまないアーサー。


「すまない、アーサー。それじゃあ教えてくれ。」


「分かってくれたならいいさ。まず十傑評議会とは、この学園で校長と並び最高決定権を持つ評議会のことだ。主な役割は学園としての行動、意思の決定だ。まぁあとは委員とかの取り締まりとか色々あるが大体はそんな感じだ。」


へぇいわゆる生徒会的なものだろうか。

でも一体何でそれに戦いが必要なんだよ。


「それで十傑決定戦だが、まず原則年に三回、学期に一回ずつのみ行われる。それが今度の新年度の十傑決定戦だ。だけど普通は第一学年の生徒が出場するなんてことはまずない。つまり基本第二学年から第四学年で行われるということだ。」


ここ四年制なのか、大学みたいで懐かしいな。てか俺ここが何年制なのかも知らなかったのかよ。


「ここまで言って分かると思うが十傑はこの学園最強10人がなるものなんだ。さて、話は戻るがソラはその十傑の第一席、つまりいきなりこの学園最強の人に挑もうとしているわけだ。ソラはここの十傑第一席を知っているのか。勿論ラビリンス校長もそれを知ってソラを誘っているはずだ。」


「そんなに強いのか?自惚れるようで悪いが俺は一応レオナルド七大将軍にも勝ったんだよ?」


俺がそういうと、アーサーは難しそうな顔をした。


「確かにソラは七大将軍であるレオナルド七大将軍を倒して七大将軍になった。けどソラが挑もうとしている十傑第一席はもしかしたら七大将軍より強いかもしれないんだ。それに十傑第一席はあまり戦いを好まないんだ。だから七大将軍とも戦ったことがないし、軍とかにも興味を示していない。それこそ七将候補生と言われながらもずっと断り続けている。それでも、だとしても十傑第一席の彼の名前はこの国に止まらず世界中で認知されている。」


そんな人なのか!?


「いったいどんな人なんだ?」


俺が聞くとアーサーはこう答えた。


「そうだな……今分かっている時点で分かりやすいのが七将の話を除くと、この歳にして史上二人目の冒険者ランクLレジェンドランクの候補者ってこと。あと今更だけど、彼の名前はミナト エイシで、二つ名というか通称"才穎の白騎士"。」


マジか、そりゃアーサーも止めるわけだ。

だけど、それよりもミナト エイシって多分"湊 瑛士"だよな。いや漢字は知らんけどさ。でも今はそんなことどうでもいい……絶対に転生者だよなこれ。


「それはかなりの強敵になりそうだね。でもアーサー、名前を聞いて今なお確信した。俺はミナト エイシと会わなくちゃいけない。だから戦う。アーサーの話を聞くかぎりそう簡単に会える相手でも無さそうだしね。」


「ソラ本当にそれでいいのか………?、はぁ分かった。ソラがそこまで望むならもう止めないよ。でも何でそこまでして………」


「すまない、アーサーそれはまだ言えない………けど絶対いつか言う。ありがとうな忠告してくれて。」


俺がそういうとアーサーは「分かった。」と返してくれた。


そして俺とアーサーは教室へと戻っていった。

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