第29話「学園初日とクラスメイト」

第29話


「おはよう、アーサーにエミリア。」


俺は自分の屋敷を出たあと、もはや通学路の一部となっているかのように王城へと寄っていた。


「「おはよう、ソラ。」」


俺が挨拶をするとアーサーとエミリアも挨拶を返してくれた。いやぁあたり前の会話ができるだけで幸せに感じる。なんでだろうな。


「どんなクラスなのかな。皆んな一緒だといいね。」


俺は馬車の中で二人に言う。


「いやいやソラ、僕らは皆んな同じクラスのはずだよ。皆んな特待生以上だからね。多分一番上のSクラスだと思うよ。」


「え、成績順なんだ。へぇー厳しいね。流石は最高峰の魔術学園だな。でもまぁ皆んな同じクラスなら、それに越したことはないけどね。」


俺はアーサーが教えてくれたことに対し、そう言った。


「うん、だけど二人の言う通り、私は二人と同じクラスで嬉しいぞ。」


すると今度はエミリアがそう言った。


それからもしばらく馬車の中で雑談を楽しみ、学園に着いた後は三人で生徒玄関的へと向かい、教室を確認してから自分たちの教室であるSクラスへと向かった。


"ガラガラガラ"


と音を立て教室の扉を開けて教室へと入ると、もうすでにほぼ揃っているくらいの人数が席についており、俺たち(多分、主に俺)が入ってきたのをみて緊張が教室に走った。

………これは後で新しいクラスメイトにもちゃんと説明しないとな。そう思いながら隣のアーサーとエミリアを見ると、エミリアは心配そうに見ていただけなのだが、アーサーはニヤついていやがった。よし、お前あとで覚悟しとけよ。


まぁ今はそれもスルーしつつ、適当に最前列三席に俺たちは腰掛けた。するとちょうどその時、俺たちよりも明らかに年上であり先生と思われる人物が入ってきた。うーん、今はまだ俺含めて10人しかいないけど、これで全員なのだろうか。


そんなふうに考えていると、


「んーとこれで全員揃ってるよな。1…2…3…4……10…うん全員いるな。よし、それじゃ早速始めるぞ。えーっとまずは軽く俺の自己紹介から。俺は今年一年間このクラスを受けもつこととなったネイシス・ランドという。一応貴族の出身だが、もう家を出ているから貴族じゃないようなものだ。気軽にランド先生と呼んでくれ。あ、あとそういえばだがこのクラスは俺以外に実技の授業の特別講師としてレオナルド七大将軍が来てくださることとなっている。だけどまぁ安心してくれ、基本的には全部俺が担当するからな。レオナルド七大将軍が来るのは、特別特待生のシンモン七大将軍のためだしな。……よし、それじゃあ初日だし全員に自己紹介をしてもらいたいと思っているが最前列のエミリアからお願いできるか?」


俺たちの先生となったランド先生が言った。するとエミリアは立ち上がり、ランド先生のいた教卓に立った。


「こんにちは、皆さん。私はここハルバート王国の第二王女であるハルバート・エミリアと申します。王族という立場にはありますが、ここでは一生徒として生徒同士または生徒と教師という立場で接していきたいので皆さんエミリアと呼んでくれると嬉しいです。それではこれから一年間宜しくお願いします。」


うんうん流石エミリアだ。そう思って俺とアーサーが拍手をすると周りの皆んなも拍手した。


「はい、ありがとうエミリア。それじゃあ次はアーサー、自己紹介を宜しく頼む。」


ランド先生がそう言うとアーサーも先程のエミリアと同じようにして、教卓へと向かった。


「皆さん、こんにちは。僕はここハルバート王国の第二王子にありますハルバート・アーサーと申します。入学式でも一応話したので顔は知っているかと思います。僕もエミリア姉さんと同じように気軽にアーサーと呼んでくれると嬉しいです。これから一年間宜しくお願いします。」


アーサーは自己紹介を終えると、ランド先生は先程と同じように「はい、ありがとうなアーサー。これからよろしく。」と声をかけたあと、「それでは次にライナー、よろしく。」と言った。

あれ、俺飛ばされたくない?

そう思ってアーサーに小さな声で尋ねると「特別特待生だから、最後ってことでしょ。」と言われた。まぁそれで俺はそういうものなのかなと勝手に納得し、自分が呼ばれるまで待っていることにした。


その間にクラスメイトの自己紹介は着実に進んでいく。


「皆さんどうも。俺は特待生として入りました。ライナーといいます。得意魔術は風と炎です。これから一年間お願いします。」


あ、入試試験を俺たちの中で一番に最初に試験受けた人だ。金髪だしちょっとチャラそうだな。


「こんにちは、皆さん。私も特待生として入りました、レインと申します。得意魔術は水です。これから一年間宜しくお願いします。」


何かオドオドした子だな。特待生なんだからもっと自身もっていいと思うのにな。


「皆さんこんにちは。初めまして、ルイス家の長女ルイス・クリスタと申しますわ。そうですわね、得意魔術は雷ですわね。以後よろしくお願いたしますわ。」


なんだか今度は、気が強いお嬢様みたいだな。どうやらアーサー曰くルイス家は上級子爵家で偉いらしい。まぁアーサーに言われてもなと思ったことはなかったことにしよう。


「こんにちは、カーヴス家の長男でレオンっていう。皆んなレオンって呼んでくれると嬉しいぜ。ちなみに得意魔術は身体強化全般だ。これからよろしく。」


うん、今度は元気のいい男子って感じだな。髪が淡い赤色で肌とかは少し黒ずんで?いる。火傷跡みたいなのもちょっとあるし。気になってアーサーにこっそり尋ねると、この子は王家御用達の一流の鍛冶屋らしい。姓もそれらの功績によってもらったりしているらしい。そしてレオンはそこの長男らしい。だからあんなに鍛えられているってわけか。


「皆さん、こんにちは。ケールっていいます。普段はレオンの鍛冶屋の向かい、王都の大通りにあるメニー・ハニーってレストランで看板娘してます。得意魔術は水で特殊魔法が回復魔法です。それとちなみにレオンとは幼馴染です。これからよろしくお願いします。」


今度は緑髪の子か。ふむふむ、いいなぁ幼馴染。俺にも前はいたっけなぁ。仲良くなってらみんなでそのレストラン行きたいな。


「こんにちは。俺の名前はアルフォード・ダインという。親父がアルフォード軍事大臣だ、といえばしっくりくる人もいるかもしれない。俺は親父を超えるのが目標でこの学園に来た。これから一年間宜しく。」


へぇ軍事大臣ってのがいるのか。ならこの人も偉い人じゃん。てか普通にもう強くなりそうなオーラ放ってるしな。アーサーと同じで。

さて、俺の番までもうあと一人か。


「こんにちは、隣国のトラスト公国から参りました。第一公女のトラスト・メリッサと申します。幼馴染のアーサー君とエミリアちゃんが入学するということで私も一緒に来ました。でも強くなるためにも来た、ということは間違いありません。これから一年間宜しくお願い致します。」


えぇー!?また王族かい。てかエミリアとアーサーと幼馴染なのか。でもさっき俺たちが登校してきた時は、声かけてなかった気がするんだが…………あ、あの時はすぐに先生が来たから声かけられなかったのかな。

どうなんだろ?俺はそう思い隣のアーサーとエミリアを見ると二人は唖然としていた。何なのだろうか、その反応は。まぁいいな後でどうせ話すんだろうし。さて、次はようやく俺の番だな。


「えーっと、特別特待生としてこの学園に来ました。シンモン ソラと言います。新しく七大将軍に就任しました。でも皆さんとは良い友達となりたいので、アーサーやエミリアと同じく気軽にソラって呼んでください。」


うーん…なんだかいまいち緊張が解れないな。


「ここで一つ皆さんに説明しないといけないことがあります。皆さんが俺を見て緊張感が走ったのは、入学式のことが一要因だと思います。ただそれには理由ありました。優秀とされ、ここにいる皆さんなら分かるかもしれないけど、あの時多くの生徒に校長による軽い精神がかけられていました。………まぁそれは校長が悪人だとかいうことは全くないけど、七大将軍として、特別特待生として俺を試したんだと思います。だから俺は校長の魔力を完全に弾くために魔力を放ったんです。信じてもらえないかもしれないけど、これが全てなんです。」


俺がそういうと、しばらくの沈黙の間が続いたが、そんな時にランド先生が声をかけてきた。


「まぁ確かにソラが言ったことは概ね事実だと思う。理由は完璧には俺にも分からんが、確かにあの時何人かの生徒からは不思議な魔力を感じたし、何よりあの校長ならやりかねんからな。だから、まぁとりあえずソラへの警戒はしなくていいと思うぞ。何よりアーサーとエミリアだけでなく、国王陛下や宰相閣下、レオナルド七大将軍も見ていたんだからな。それに今のソラには、とてつもない立場と責任がある。そうやすやすと信頼を崩すようなことはしないさ。さて、ということでとりあえず皆んな仲良くなるようにな。近々、学年対抗戦やら合同訓練やらがあるから、俺のボーナスのためにも頑張ってくれ。」


先生はそういうと一度教室から出て行った。何だいい先生だと思ったのに最後の最後で欲がダダ漏れではないか。でもまぁ面白そうな先生だな。


ちなみにだが、このクラスは全部で10人で内7人が特待生で、二人が一般からの昇格枠的な感じらしい。ちなみにその二人がレオンとケールらしい。


さーて、どうしようか。まずは仲良くなることだが、しばらくはアーサーとエミリアに力をかしてもらうとするかな。

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