第28話「ちょっとした試練と初登校」

第28話


オスカル・ラビリンス校長の式辞が終わり、今度は特待生主席としてアーサーが挨拶することとなった。

それにしても今更だが、オスカル・ラビリンス校長が精神魔術を使って式辞をしたら全員を精神操作したりすることもできるってことだよな。そう考えると本当にヤバいな。


「御紹介にあずかりました。僕はハルバート・アーサーと申します。この国の第二王子です。ですがそんなことは全く気にせずに、皆さんとは一同級生として仲良くしてくれればなと思っています。さて、それではこれからお世話になる教職員の方々に挨拶を申し上げたいと思います………………………。」


それから少しの間アーサーの挨拶が続き、ついに俺が呼ばれた。俺は呼ばれたので舞台裏から出て、歩いていくとザワザワし始めた。やはり少し有名人になったらしいな俺。それともあれか、レオナルド大将軍やラビリンス大将軍と同じ正装をしているからだろうか。

そう感じながらも俺は歩き続け、台があるところまで行く。それにしてもめちゃくちゃ視線を感じるな。まぁ皆んなの前に立ってるから当然っちゃ当然だけどさ。


「皆さんこんにちは。御紹介にあずかりました、シンモン ソラと申します。ついさっき正式に七大将軍に任命を受けました。最近、王都に来たばかりだということもあり、この都市のことなどは全然知りませんがそこは温かい目で見守ってくださればなと思います。……さて、この学園の教職員の方々。私たち第100期生はこれから、教職員の方々にかなりのお世話になると思いますし迷惑をかけることもあるかと思います。しかし、私たちは学問研究、戦力向上のため全力を尽くしていくことを誓います。全生徒にとって、この学園にきた意味をしっかりと果たしていくことを誓います。」


"ズンッッ!!!!!!!!!!!!!!"


俺はそういうと魔力を放出し、生徒たちを威圧した。だがこれはただ威圧することだけが目的ではない。先程、生徒の中から変な魔力を感じたので、もしかしたらオスカル・ラビリンス校長によるものだったら面倒だなと思い、それを弾くためにも魔力を放ったのだ。まぁ威圧がないと言えばそうでもないが。だってありがち、というかどこにでもいるじゃん。どうにもならないような問題児。プライド高すぎる坊ちゃんとかさ。


それからすぐに俺は魔力を解いた。すると一気に緊張感が緩くなった。まぁそりゃ当然か、俺が七大将軍の魔力を弾き飛ばせるくらい威圧したからな。


それからは変な魔力を感じなくなったので、俺は礼をして舞台裏へと戻っていく。後でちゃんと説明しないとな。


(流石ですね、シンモン大将軍。やはりレオナルド大将軍を倒したというのは事実らしいですね。まぁ貴方が纏う魔力オーラから試す必要はないなとは思ってはいましたが。)


そんなこんなで俺はもといた席に戻って行こうとした時、ラビリンス校長の声が俺の頭の中に入ってきた。でも別に敵意はなさそうだ。

俺がオスカル・ラビリンス校長の方を見ても微笑んでいるだけだしな。本当にただ俺を試して楽しんでいただけだったらしいな。


(まぁ一応で魔力を放ったのですが、正解でしたね。これからお世話になります。"先輩")


俺は頭の中でそう返した。するとオスカル・ラビリンスはさらに微笑んで頷いて返事をしてきた。何か読みにくい人だな。


そう思いながら俺は舞台裏へと戻って行った。何かあれだな、学園生活始まったら何よりも先にあの人が信頼できるのかを調べたほうがよさそうだな。まぁ七大将軍に任命されている時点で信頼に足ると思うけど。………でももし、さっき頭の中に語りかけられた時に魔力を体内で循環させてなかったらもしかしたらだけど魔法かけられたかもしれないってことだし。

でも昔から付き合いのあるレオナルド大将軍とかが操られていなさそうってこととかを見ると、信用はできそうだし。まぁ今はいいやどうせ調べるし。


「ソラ!変なことをするなと言っただろ。何であんなことをしたんだ。」


俺は戻ってすぐ、アーサーに詰められていた。レイヴンス陛下も何でやったのか不思議そうに俺を見ている。


「はぁレオナルド大将軍は気づいているかもしれないけど、俺は今さっきオスカル・ラビリンス校長に試されてたんだよ。」


俺が言うとアーサーは「何があったんだ?」と聞いてきたが、レオナルド大将軍は「あの爺さんのやりそうなことだな。」と言った。また、レイヴンス陛下に至っては「前から懲りないな。でも今回はイタズラは上手くいかなかっただろうな。何せソラ殿はこの様子だし。」と何やら今までもあったかのような物言いをしていた。


「いや、アーサー気づかなかったか?アーサーが話す前にオスカル・ラビリンス校長が式辞したろ?その時に精神魔術を一部の生徒たちにかけていたんだよ。まぁあくまで魔力耐性が低そうなやつだけに効くだけだからエミリア含め特待生とか教職員にはなにも意味をなさなかったけどね。まぁだからなんて言うんだ。つまり俺は試されたんだよ、オスカル・ラビリンスに。だから俺はそれを魔力で打ち消したんだ。だから魔力を放った。まぁ七大将軍として試されたのか、特別特待生として試されたのかは定かではないけどね。」


俺が言うとアーサーは「そうだったのか。いきなり詰めてすまなかったな。」と言ってきたので「気にするな。」と返しておいた。


その後はレオナルド大将軍が、直接対決で俺に勝ったから信頼に足るなどと自慢げに語ったり、レイヴンス陛下が挨拶に出てきたりだとか、俺らの同級生たちは混乱しただろうな。何かすまないな。


とまぁそんな感じで入学式は幕を閉じた。それで俺とアーサーはエミリアと合流し、制服などを受け取った後、今日は結局帰ることとなった。ちなみに登校日は明日からだそうだ。本当に急だよね。


***


俺は入学式の後は普通に馬車で屋敷まで送ってもらった。


「ただいま、戻りました。」


そう俺が言うと、「お帰りなさいませ、ソラ様。」と黒髪ロングでクール系のメイドである、ラムさんが迎えてくれた。


「はい、ただいま。ラムさん。」


俺がそう返すと、「本当に覚えてくださったのですね。」となんだか嬉しそに言われた。それからしばらく沈黙が続いたのだが、居心地が悪かったので俺は「風呂の準備はもうできていますか?何か今日も疲れたので。」と唐突に言った。するとラムさんもハッとしたようにして、「はいできています。」と返してくれた。


よし、そんじゃ風呂入ってトレーニングでもするか。



それから俺は風呂でゆったりと体を休めて、地味に毎日続けているトレーニングをして、早めに寝ることとした。まぁ何せ明日は初登校だからね。


***


「んっんあー。さて、学校行く準備するか。制服着てっと。あとこれか、特別特待生のバッチ。てかどんだけ俺勲章みたいなのつけてなきゃいけないのさ。」


そう俺は朝食を取った後伸びをしながら言った。


「おやおや、ソラ殿。そんなことを言っていると今ある幸せが失われた時に本当に後悔しますよ。」


執事であるアルフレッドさんに言われた。


「そ、それはそうですね。確かに俺は幸せ者だし、もっと自覚する必要がありますね。…………えーとでも、一つ言い訳をさせてもらうと、そういうつもりで言ったつもりは本当になかったですよ。」


俺が少し不安げに返すとアルフレッドさんは笑いながら「勿論存じておりますよ。」と言った。全く執事なら、一応とはいっても主人をからかうんじゃないよ本当に。


「はぁ、もう行ってきます。いつも通り屋敷の方はお願いしますよ。」


俺が言うと「勿論です。行ってらっしゃいませソラ殿。」と返された。はぁ全く。


そう思いながら俺は馬車にのり、もはや通学路かのようにして王城へと向かい、アーサーとエミリアと合流し学園へと向かった。さて、どんなクラスなのだろうか本当に楽しみだ。

本当に学校なんて何年ぶりだろうか………。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る