第27話「入学式と校長」

第27話


「かっこいいなこれ。だけど勲章も二つあるしなんだか慣れなくてちょっと嫌だな。」


「まぁまぁあんまり文句言うなよ。普通にかっこいいし。邪魔にはなるかもしれないけどお前からしたらなんともないだろ。普通に戦うくらいならほぼ動く必要もないだろうし。」


「ま、まぁそうなのかもな。」


アーサーは俺をなんだと思っているんだ。てかエミリアも頷いてるし。



それからしばらくして学園についた。


「うぉーすっごいいっぱい人がいるね。これ皆んな合格した同級生たちか………こんなにいたんだな。それになんだかすごい緊張感だし………。」


何か俺はここ最近命の危機ということでしか緊張してない気がするんだよなぁ。俺もそうじゃなくてもっと別の緊張感が欲しいんだよな。ビクビクするんじゃなくてザワザワする感じの。


「いや、それはそうだろう。学校生活に緊張している人もいるだろうけど、今年は僕とエミリア王姉さんも入学するんだから。」


「うむ、アーサーのいう通りだ。あまり特別扱いとかを同級生にはしては欲しくないがそう言うこともあるだろう。」


もう皆んな知ってるんだ。へぇそうなのか。

そう思いながら俺とエミリアとアーサーは馬車から降りる。………おっと忘れてた、エミリアには手を差し出すんだったけ。


「よいしょ。んじゃエミリア行くか。ほら。」


「う、うんありがとうソラ。それでは行くか。」


何でエミリアは顔を赤くしちゃってるんだ。君の不機嫌から始まったことだよね。


「おーい二人とも、そんなに見せつけてくれるなよ。こっちが恥ずかしくなるだろ。いちゃついているなんてさ。」


は?何をどう見たらいちゃついているんだ。手繋いだだけだよ。そう俺が立ち止まって考えているとエミリアに「もう行くぞ!」と言われながら手を引かれていった。



「めちゃくちゃ注目されるなぁ。お前ら王族だから仕方ないか。」


でもどちらかと言うと俺が注目されてる気がするんだけど。………うん、自意識過剰だろうな。あー恥ずかしい俺。


「まぁそれもあるかもしれないけど、どちらかというとソラだと思うぞ。今この国で一番の注目されている有名人だろうし。」


「そうなのか………家にいるかアーサーとエミリアといるかのどっちかだったから全く自覚なかったから。」


というかそんなに広まっているのか。


「ソラ、もう諦めろ。平穏な日々は訪れないと言われたであろう。それは何も戦だけのことじゃないぞ。日常とかでもだ。」


えー、嫌だぁ。

けど今考えればレオナルド大将軍が公表したとか言ってたもんな。エミリアの言う通りだ。


「ま、まぁいいや。関わる人はちゃんと自分で見極めるからさ。」


そう俺が苦し紛れに言うとアーサーは何かを察したかのようにして


「そういうことにしとこうか。………それじゃあ行こうか。」


と言った。そうして俺とエミリアの先を行き、入学式会場と書かれた方へと向かった。


***


「ここが式場だね。それにしても前に一度見に来たけど本当に綺麗だな。」


会場について、アーサーが言った。

俺が一番最初に何か感想を叫ぶと思った諸君には「まだまだだね。」と告げたいと思う。


「本当に凄いな………流石は最高峰だね。」


「さて、ソラ。そろそろ姉さんの手を離してくれないかい。移動しにくいしさ。」


アーサーが俺にそう聞いてきた。何だ?いまさら怒ったのか、それとも嫉妬か?


「なんでさ?」


「それはだな。ここで姉さんと僕たちは別行動になるからだよ。僕は特待生主席、ソラは特別特待生主席だから入学式で式辞をするんだよ。」


はぁ!?俺あんな大人数の前で喋らなきゃいけないのかよ。てかおいアーサーそんな話一ミリも聞いてないぞ。


「なんでもっと早くに言わなかったんだアーサー。お陰で何も考えずに大人数の前に立つことになるじゃねぇかよ。んーなんでかな?」


そう言って俺は魔力で威圧する。


「い、いや。すまないソラ…グッ………謁見でもあんなに堂々としていたから………いけるかなと思って…グッ……本当にすまないから………威圧を解いてくれ。」


そう言われたので仕方なく俺は魔力を解除する。


「あのなアーサー。あの時は短いセリフでしかもありきたりだったから言えただけだ。………はぁまぁいい。もうここまで来たらなるようにしかならないか。」


俺がそんなふうに考えていると、レイヴンス陛下とニコラス宰相がきた。てかいつも一緒にいるよねこの人たち。あとレオナルド大将軍もいるのか。


「こんにちはレイヴンス陛下、ニコラス宰相閣下、それにレオナルド大将軍。皆様も入学式にご参加ということ………ですよね。」


「うむ、それよりもソラ。其方今さっき魔力を放っただろう。其方は無意識でも側からしたら規格外なのだからそれを自覚しろ。もう七大将軍という立場もあるのだしな。」


レオナルド大将軍に叱られてしまったな。


「は、はぁすみません以後気をつけます。」


アーサー………お前のせいだからな。


「すみません。皆様こちらにお集まりでしたか。私はここソルガレス魔術学園の副校長をしておりますイースティンと申します。レオナルド国王陛下、アーサー殿下、エミリア王女殿下、ニコラス宰相閣下、レオナルド七大将軍様、シンモン七大将軍様。皆様の席がご用意できましたのでお越しください。」


ふーんここの副校長さんか。何か清楚でクール系な感じだな。めちゃくちゃ美人だし。

てか前も言った気がするけどさ、異世界って美人・美少女しかいないのかな。なんだか会いたくないけどブスが恋しいね。


まぁそんなことはさておき、俺らはイースティン副校長についていき、最前列へと案内された。その後さらに俺とアーサーとレイヴンス陛下とレオナルド大将軍は舞台裏的なところに案内された。本当に式辞しなくちゃいけないのかよ。


***


それからしばらくしていると、何やら賑やか?というか、ザワザワとしてきた。どうやら人が集まってきたみたいだな。


そう思っていると、先程俺たちを案内してくれたイースティン副校長が司会を始めた。


「えーそれでは皆様お集まりのようなので、第100期ソルガレス魔術学園入学式を開始致します。」


声がかかり、ついに入学式が開式した。


「それではまず。ここ、ソルガレス魔術学園の校長を務めており、現七大将軍がお一人であるオスカル・ラビリンス様に式辞を頂戴いたします。」


おいおい、また七大将軍かい。もう俺含めて三人目だけど。そう思い隣を見るとレオナルド大将軍が何やら苦い表情をしていた。俺は気になりレオナルド大将軍に尋ねた。


「どうしたんですか?レオナルド大将軍?お腹でも痛いんですか?」


「違う………あの爺さんはな。昔から強いというか厄介なのだ。だから、苦手意識があるのだ。」


「へ、へぇ……どんな風に戦うんですか?」


俺がそう聞くと、本当に嫌そうな顔をしてこう言った。


「いや、まず戦いにならない。それは何もあの爺さんが強いからじゃない…………いやこういうと誤解を生むか。あのだな、強いんだがとにかく厄介なのだ。あの爺さんは精神魔術が専門分野でな。その精神魔法のせいで行動制限とか精神不安定とか、場合によっては精神崩壊させられて廃人とかにされる、恐ろしい魔法を使うのだよ。」


マジかよ。てかそんなに嫌なら何でここに来たんだよ。


「それに俺の炎とか、攻撃魔法では防げないのが最も俺が嫌だと思う理由だ。あれは空気中にある魔素とかを通じたり、あるいは直接作用させたりするから、単なる守りじゃ防げないのだ。だから、俺には防ぎようがないし嫌なのだ。それに詳しい仕組みはまだ誰も分かっていないしな。」


「へぇ、確かに厄介ですね。それは敵だと思うと本当に嫌です。」


そう言って俺は考えごとをする。隣でレオナルド大将軍が「敵と似たようなもんだ!」とか言っているがまぁ無視だ。

魔力を使っての精神操作なら魔力自体を防げればいいんだよな。

でもそれなら今の段階じゃ空気を断つ、もしくは俺の魔法で空間、つまりはゾーンを作り出してそこに侵入できないようにする、のどちらかだろう。

まぁ取り敢えず前者はそんなことはできたとしても、こちらも命の危機に陥るからダメだ。後者は………試してみる価値はあるな。「マナ・ゾーン」できたらかなり強力そうだ。


だがその前に、まず俺は魔力や魔素などについて全然知識がないから、そこから研究すべきだな。ちょうど最高峰の学園に来たことだし生かさない手はない。もう早速学園で一番最初にする目的ができたぞ。


そんなふうに考えていたら、もうすでにオスカル・ラビリンス大将軍、いや校長の式辞は終わっていた。さて、次はアーサーが話して、その後はとうとう俺の番か。はぁ面倒くさいな………。

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