第20話「試験開始」
第20話
「おはよう御座います。」
俺は自室のからリビングについて、アルフレッドさんとメイドさんたちに挨拶をする。それにしてもこんな朝早くから働かせているみたいでなんか嫌だな。いくら仕事とはいえさぁ………ね。なんだかブラックみたいじゃん。
「「「おはよう御座います。」」」
俺がそんなことを考えているとメイドさん二人とアルフレッドさんが挨拶を返してくれた。
それから、メイドさんがご飯を運んできてくれた。朝ご飯はパンにサラダにスープとなんかの魚だった。どれもめちゃくちゃ美味しそうだ。
「うまぁぁぁ。」
とろけそうになる程だ。俺は朝ご飯を楽しんだ。
そして、それから俺はアルフレッドさんに「俺が試験から帰ってきて少し経ったら、職員さんたちの名前を覚えたいので集めてくれませんか。」とお願いをしておいた。
***
朝食をとってからしばらくして、昨日アルフレッドさんに言われた通り、昼前ごろに学園に向け屋敷をでた。アルフレッドさんに「馬車で行きますよね?」と聞かれたので、少し聞かれ方に疑問は感じつつも、初日だし道もよくは分からないので馬車で行くことにした。
しばらく乗っていると王城が見えてきた。そして何故か王城に向かっている気がする。俺は何故だ?と疑問を覚えた。すると、しばらくして王城の中に止まった。
「ん…?俺が向かうのは王城ではなく、学園なんだけど……。」
俺がそう言って何故なんだ?頭を抱えていると、とある人物の登場で王城に来た理由が分かった。
「おはよう、ソラ。頭を抱えて何を言っているのだ?」
そう言って俺の馬車にエミリアが乗ってきた。なんでよ、何で自分の馬車で行かんのや。王族でしょ。
「えーっと、お…はよう。エミリア…何で?」
俺が素直に思ったことを尋ねると、エミリアは少し言い淀んだ後に
「それはあれだあのー………一緒に行きたかったのだ」
と言った。何やら悩んでるようだが最後の方聞こえなかったぞ。
「え、えっとエミリア何て?」
「だ、だから一緒に行きたかったのだ!」
いや、怒んなや。そんな大きな声で言わんでええやん。
「ご、ごめんごめん。本当に聞こえなかったからだよ。俺も一緒に行けて嬉しいから。」
俺は慌てて言うがまだ機嫌は悪いままらしい。そんな気分を変えるべく俺は早速学園へ向かってもらうことにした。
***
「……おいおい、また城かよ。」
俺のソルガレス魔術学園を見た感想である。
「ほらエミリア行こ?」
俺は学校とは思えないほどの規模の、魔法学園にかなり戸惑いつつも、先に馬車から降りてエミリアに手を差し出す。これで機嫌直してくれるといいんだけど。
「う、うんありがとうなソラ。」
そう言ってエミリアは俺の手を取り、馬車から降りた。機嫌直ったかな?
「それじゃ行こうか。」
そう言って俺はエミリアと手を繋いだまま校門をくぐり、試験場を案内してくれる場所まで歩いた。エミリアは「えっ……」と言っていたが別に構う必要はないだろう。
しばらく歩いていくと立て看板が置いてありった。それには三本の矢印と対象が書かれていた。それの対象はそれぞれ、一般生向けの、特待生向けの、特別特待生向けとなっていた。そして会場となる向かう先はそれぞれ校舎、戦闘場、戦闘場となっていた。つまり俺とエミリアの向かう先は同じである。
「ソラ、どうやら私たちはあっちの方らしいぞ。」
「そうらしいね、エミリアが一緒でよかったよ。というか俺たちはいわゆる筆記試験を受けなくていいのかな?」
「一般生は倍率がえげつないから全て実践では捌き切れないため筆記試験で足切りするそうだ。」
俺が聞くと、エミリアはそう返した。なるほどね納得したわ。是非頑張ってくれ、未来の同級生。
まぁ俺たちは俺たちの試験に集中しよう。そう思い俺とエミリアは試験場へと向かって行った。
「おいおい、今度はコロシアムかよ。はぁまぁ俺の知ってるやつよりは小さいけどさ。」
俺とエミリアは試験場である戦闘場についていた。その試験会場は実物よりは小さいがまるでコロシアムようで、俺はもう諦めつつも、少しの間それを見て唖然としていた。
「早く行くぞ。別に私たちだけじゃないはずだからな。あまり待たせるのは気が引ける。」
すると、エミリアにそう言われ俺は、エミリアに引かれるように戦闘場の中へと入って行った。
***
俺とエミリアが戦闘場の中に入るとめちゃくちゃ注目された。黄金双剣勲章とやらをつけてるせいだろうか。実を言うと本来黄金双剣勲章はつけてこないつもりだったのだが……だってかっこいいじゃん汚したくないし。
でもアルフレッドさんに「これは常時身に付けておくものです。」と言われたから仕方なくつけてきたのだ。話している雰囲気からして、貴族のいざこざとかに下手巻き込まれないようにするためだろうか。一応強い証明みたいだしね。
俺たち以外に中には明らかに案内役の人だろうなという人を除くと、全部で六人いた。みんな武装していて、無言で座っていた。やっぱりどこでも試験前は緊張するものなのだろう。
「姉さん、やっときましたか。はぁ僕と行かないと言った時はかなり焦りましたが、こういうことでしたか。」
俺とエミリアが戦闘場に入って周りを見ていると、そんな俺たちに美少年が話しかけてきた。俺がこいつ誰だ?エミリアが姉ということは王子なのか?とか考えていると、自己紹介してくれた。
「これはすみません僕はハルバート王国第二王子ハルバート・アーサーです。貴方はソラ殿ですよね。やはり特別特待生はソラ殿でしたか。今一番有名ですしね。王宮でも大騒ぎでしたし。」
へぇ俺有名なんだ。やっぱりそれもこれも黄金双剣勲章のおかげだろうな。
「えーっと俺はシンモン ソラと申します。よろしくお願いします。」
と返した。別に普通の自己紹介だ。
「えーっとソラ殿。せっかく同級生ということなので試験お互い敬語なしでいきませんか。エミリア姉さんもそうみたいですし。あと僕のことはアーサーでいいですから。」
アーサーに言われた。まあエミリアとも敬語ではないしそうだしな。友人になるんなら当然か。
「分かった、それならこれからよろしくアーサー。」
「はい、こちらこそソラ。」
俺は何気に初めてこの世界で男友達ができた。何か感慨深いな。
それから少しの間、俺、アーサー、エミリアとで話をした。ちなみにそれ以外の受験生はみんな無言で装備のメンテナンスをしたりしていた。まぁ俺は装備なんてないけどな。
そんなこんなで三人で話していると、遂に試験が始まるのか、案内役の女の人が
「それでは今から特待生による実践試験を開始します。特待生の七名の方々は戦闘場の方にお越しください。また特特生のソラ様は上の観客席の方へとお願いいたします。」
そう声をかけた。それと同時にみんなは立ち上がり、舞台入り口の方へと歩いて行った。そこで俺はアーサーとエミリアに「ちゃんと見てるから頑張って」と声をかけ皆んなを送り出した。
そして俺はみんなと違い階段を登って観客席の方へと歩いた。
俺が階段を登り、観客席に向かうと何やら先客がいた。それがまた驚きの人物たちだったのだ。
「レ、レイヴンス陛下にニコラス宰相。それと護衛の方が一人。なんでこんなところに………。」
俺が近づいていくと陛下が振り返った。
「おや、ソラ殿。昨日ぶりだな、元気そうか?」
「はい元気です。それより何故ここに?」
「それは息子娘が試験だからだろう。」
あぁそうかそりゃそうだ。でもそれならエミリアとアーサーの親しか来てないことになるけど。まぁそれはあれか王族だから、特別ってことかな?
「確かにまぁそうですね。えーっとちなみにニコラス宰相閣下そちらの方は?」
俺が聞くとその護衛かと思われるもう一人が俺の方を向いた。
「お、黄金双剣勲章。ということはレオナルド・フレア大将軍……ですか。」
「おやおや私が言う前に分かったようですね。そうです彼はレオナルド大将軍です。現役のもう一人の黄金双剣勲章授与者です。」
「で、でも何でここに。護衛としては少し過剰と感じなくもないのですが………」
俺がそういうとニコラス宰相は
「まぁまぁそれはまた後で分かりますから、とりあえず今はアーサー王子とエミリア王女の試験を見ましょう。ほらちょうど説明も終わったところらしいですし。」
と俺に返した。まぁ確かにそうだな。今はアーサーとエミリアの試験が最優先だ。
俺は心の中で頑張れと応援しつつ見守る。
ちなみにずっとレオナルド大将軍は無言だった。
***
特待生試験の一人目は目つきが悪く金髪だった。名前はライナーというらしい。この歳にしてBランク冒険者らしい。それとちなみにだが、なんでも陛下のところの第一王子と同じ名前らしい。まぁこれは余談だからどうでもいいが。
「ほう、試験はグリアモールとの模擬戦か。」
レイヴンス陛下がいうとニコラス宰相は
「そうですね。ただ模擬戦というより"ダメージを与えられるか"でしょうね。」
と返していた。へぇということは守りが固くて有名なのかな。気になった俺はニコラス宰相に聞いてみることにした。
「有名な方なんですか?」
「そうですね、かなり有名ですね。なんせ彼は大ベテランのSランク冒険者ですし。それに彼の場合は騎士団の教官も務めていますからね。それと彼の強みは"金剛"という二つ名の通りかなり防御力が高く、敵の攻撃が通らないほど固いということです。だから今回の試験のポイントは如何にダメージを与えるかだと言ったのです。」
「なるほど、すみませんまだ冒険者関係にも疎いもので。」
全く本当になんも知らないな俺。
さて、まずはライナーだったか。頑張ってください。グリアモールさんの装備は正面に大楯を構えていて背中に大剣を背負っていた。
"始め!!"
そう先程の案内役の女の人がいうといきなり
"ドーーーーン"
グリアモールさんのところで爆発が起こった。そして煙が晴れてすぐに突如グリアモールさんの後ろにライナーが現れた。そして魔力をはらんだ剣を振りおろした。そうしたことでまた
"ドゴーーーーーーン"
という音が鳴り響いた。流石はBランク冒険者だけある。なかなかに強い。
"ドゴーーーーーーーーーーーーン"
今度もまたグリアモールさんがダメージを受けたかのように思われたが、今回はライナーが吹き飛ばされた。突如煙を切り裂くように大剣が振られたのだ。それで煙共々ライナーも吹き飛ばされた。ライナーは戦闘場の舞台から吹き飛ばされ、壁に埋まっている。やはりグリアモールさんはタンカーっぽいし、力もとても強いのだろう。
「し、試験終了。ライナーさんを保健室に連れて行って。」
案内役の女の人が様子を見て、試合終了の合図をし、別の職員の人たちを呼び担架を持って来させた。
「すごいな。流石はSランクあの攻撃ではびくともしないか。」
俺がそんなふうに驚いていると
「当然だ、実際あんなものは攻撃とはいえない。心の中では其方もそう思っているのだろう。」
無言だったレオナルド大将軍がそう言った。俺は途端にニコラス宰相の方を見るが、「あはは」というふうに笑っている。俺でなんとかしろってか。
「まぁそうかもしれませんが、まだこの歳でここまで戦えるのは褒めるべきなのではと思っただけです。」
「そうか、まぁ後でが楽しみだ。」
ん、後で………?さっきからニコラス宰相もレオナルド大将軍もなんなんだ。
まぁ今はいいか。次はアーサーの番らしいからな。頑張れよアーサー!
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