第19話「王都の生活」

第19話


「エミリア王女殿下、黄金双剣勲章というのは凄いものなのですか?」


俺は待合室に戻ってきて、エミリア王女と話しをしていた。


「凄いに決まっているだろう。今まで貰ったのは初代国王を除くと、この国の軍事の中心というか柱を担っている"七大将軍"の中の一人であるレオナルド・フレア大将軍くらいだぞ。というかソラ殿、屋敷と冒険者ランクアップだけで黒龍を手放すとはなんなのだ、もったいない!」


まぁ妥当な意見だな。


「えーっとですねエミリア王女、俺は今後もこの国にお世話になると思うんです。それに俺は貴族になったので尚更です。学園にも通うつもりですし。それならば良好な関係をつくっておくに越したことはないじゃないですか。あ、でもこれはここだけの話でお願いします。」


俺がそう言うと後ろからエミリア王女とは違う声がかかった。


「神話級を倒せて、心も広く、頭も回るときましたか。どこまでも英雄ですね。いや、賢者でしょうか。」


そう言ったのは何とニコラス宰相だった。だがそれだけでなくニコラス宰相は国王陛下と一緒に来ていたのだ。


「「国王陛下!?(お父様!?)」」


俺とエミリア王女は驚いて席を立つ。そして俺が膝をつこうとすると、


「よいよい、私的な場でこういうのはなんだか良い気分ではない。それにソラ殿は今このハルバート王国の英雄だ。」


国王陛下がそう言うので、俺は立ち上がってから国王陛下とニコラス宰相が席についた後に、俺も再び席についた。


「まずはソラ殿、黒龍を譲るような形で我々が受け取ったことを感謝するとともに詫びたい。」


そう言って国王陛下が頭を下げようとしたから咄嗟に俺は「いえいえ、そんなことないです。国王陛下ともあろうお方がやめてください。」と言った。


「そ、そうだな…すまない。だが本当に感謝する。それで本題についてだが、ニコラスの方から頼む。」


国王陛下がいうと、ニコラスさんは俺に


「はい。この度、ソラ殿を特別昇格としてSランク冒険者とし、王都のもと公爵家の屋敷を与えることとする。そして、王立ソルガレス魔術学園に特別特待生として入学してもらうことになりました。」


と言った。まぁその時に「全然黒龍とは見合っていませんが申し訳ありません。」と言われたが正直ここまでしてくれるとは思わなかったから全然十分だ。


「いえいえ、全然十分です。本当にありがとうございます。それに先程エミリア王女に申したことは全て本心ですので。」


「それはよかったです。これからもよろしくお願いします。ソラ殿………いや、ソラ男爵閣下。」


「やめてくださいニコラスさん。俺のことはこれからソラって気軽に読んでください。勿論国王陛下やエミリア王女も含めて。」


「そうですか、分かりました。追って考えるとしましょう。まぁそんなこと取り敢えずはいいです。この際ですしまずは全員の自己紹介をするとしますか。」


そう言ってニコラス宰相は俺以外の名前を教えてくれた。


「先程も言いましたが、まず私はここハルバート王国の宰相で公爵のニコラス・ド・ロレーヌと申します。そしてこのお方がここハルバート王国国王のハルバート・レイヴンス陛下です。そしてもうご存知でしょうが、ソラ殿の隣に座っておられる方が、ここハルバート王国の第二王女のハルバート・エミリア王女です。」


レイヴンス陛下か、かっこいいな。


まぁその後もニコラスさんとレイヴンス陛下とエミリア王女と話し、夕暮れが近づいてきた頃、俺は公爵家だった屋敷に向かうべく城内で馬車に乗った。ちなみにエミリア王女も何故か一緒だった。


***


ははぁーーーーデッッッッッカ!!これに一人で住むとか無理だろ!?掃除とか含めてどうすんのこれ!?俺が欲しかったのは、屋敷ではなく家!だ。


俺は内心でそう叫んでしまった。


「いや、思っていたのよりもかなり大きいんですけど………エミリア王女。」


「そうなのか、でもまぁここは元々は元七将軍にして公爵であったカルロス・シーザー大将軍の家だったからな。それよりもソラ殿、もう敬語をやめてほしいのだが。それにエミリアと呼んでほしい。」


エミリア王女は俺に言った。えぇーっと…これはどう返すのが正解なんだ……?


「えーっとエミリアさん?」


結局俺がそういうと「エミリアだ!」と睨まれた。なので俺は仕方なく、


「エミリア………これでいいか?」


俺がそう言うとエミリアは満足げな表情をして頷いた。何だこれは、俺が恥ずかしくなってきたわ。この状況やだな。とりあえず家を見るとするか。


「と、とりあえず家を見ようかエミリア?」


「う、うむそうだなソラ。」


何だこりゃ新婚夫婦かよ!そう思いながら俺とエミリアはめちゃくちゃ立派な屋敷の門をくぐった。てかいつの間にかソラ殿、からソラに呼び方変わってるし。まぁいいか、悪い気はしないし。


「うわぁぁぁぁすっごいなぁ。公爵家ってこんななのか。」


門が開くと広大な庭が広がっていた。馬車が2台並んで走れるのでは?というくらいの石畳の道を進むと途中には両サイドに噴水があり、さらに進むと石の灰色と緑を基調としたかっこいい屋敷がそびえ立っていた。まるで一つの城みたいだった。

それは何でこんなに大きい家をくれたんだろうか。と疑問を覚えるほどに。

これだけ貰っても、謝られるくらいって……いったい黒龍にどれだけの価値があるのだろうか。


「じゃ、じゃあ開けるよエミリア。」


俺がいうとエミリアは「えぇ」といい、俺はかなり大きい扉を開けた。


「「「「「お帰りなさいませ」」」」」


俺とエミリアが屋敷の中に入るとスーツを着こなした紳士たちとメイド服を着ているメイドたちに出迎えられた。えーっと、誰?見た目的には執事とメイドみたいだけど。てかよく見たらシェフ的な人とか庭師みたいな人もいるじゃん。俺がそう言って戸惑っていると、どこかで見たことある、というか王城であった執事さんが近づいてきた。


「お帰りなさいませソラ殿。我々はソラ殿の召使いとして、ニコラス宰相閣下に派遣されて参りました。これから職員一同、どうぞよろしくお願い申し上げます。」


そう執事さんがいい、玄関にいた人たちは一斉に俺に頭を下げた。なんか大人数に頭下げられるのはあんまいい気分じゃないな。


「あ、はい。俺はシンモン ソラと言います。こちらこそ、これからよろしくお願いします。」


とりあえず俺は自己紹介をすることにした。


すると執事さんはまだ戸惑っている俺と、エミリアをリビングに案内した。ちなみに他の召使いの方々はそれぞれの仕事に戻っていった。いやー流石は一流のプロたちだ。


***


「改めまして、お帰りなさいませソラ殿。それにエミリア王女も、先程ぶりですね。」


執事さんはそう言いながら紅茶を注いでくれる。


「なに?アルフレッド、ソラとどっかで話したの?」


エミリアが執事さんに聞く。どうやら名前はアルフレッドさんというようだ。


「えぇ、先程王城の方で。ほんの少しの間ですがね。」


アルフレッドさんがそういうと、エミリアとアルフレッドさんは俺の方を見てきた。


「えーっと確かにアルフレッドさん?には王城でお茶を出してもらって少し話したよ。」


「へぇそうだったのか。それならば多少は顔見知りがいて良かったではないか。」


「うん、そうだね。良かったと思うよ。」


俺がそんなふうに返すと、エミリアはふと何かを思い出したかと思うと、


「おっともう日が暮れかかっているではないか。私はここで失礼するぞ。またなソラ。」


と言ってエミリアは俺に微笑みかけると、早歩きで部屋を出ていった。




「全く、勇ましくはなりましたが、昔からの天真爛漫なところはお変わりありませんなエミリア王女は。すみませんソラ殿、紹介が遅れました。私はアルフレッド・ヴァン・アストレアと申します。以前にも申した通り、冒険者をやっておりました。これからはソラ殿の執事として、お使えさせていただきます。改めてよろしくお願い申し上げます。」


アルフレッドさんは俺にそう言った。


「はい、こちらこそ。それにしても、王城の執事さんなのかと思いましたよ。Sランク冒険者だったと聞いた時は驚きましたが、どうやらアルフレッドさんは先輩ですね。」


「えぇ確かに。ですが私はSランク冒険者ではありましたがソラ殿ほど強くはありませんでしたよ。まぁ多少はアドバイス出来るかもしれませんが。それと私は確かに王城の執事でしたが、ソラ殿を見たとき失礼ですが面白い方だなと感じましたので、ニコラス宰相閣下にお願いした次第です。」


「ははっ、そうなんですか………。あ、そういえば明日学園に向かうこととなったらしいんですけど、制服とかってどうすれば良いんでしょうか?あといつ行くかも知らされてないですし。」


「そうですね、ちょうど明日は試験日なのですが。ソラ殿が通うのは最高峰のソルガレス魔術学園だったと思うので、ここからも割と近いですし昼前に向かえば十分かと思います。それに制服等は明日の試験が終わってからの配布ですのでまだかと。」


なるほど俺も試験は受けるのか。てかそりゃそうか。不平等って思われるしな。まぁ特別特待生とか言われていたのが何なのか?とは少し思ったが。


「分かりました。それなら明日に備えて今日はもう早くに寝るとします。ありがとうございました。」


それから俺はメイドさんの作ったご飯を食べ風呂に入ってから就寝した。


***


「明日から学園か。まぁ明日はまだ試験だし、受かるかは分からないけど………。でも楽しみだな。」


俺は自室のデカいベッドの中で呟いた。


「あ、そういえば職員さんたちの名前まだ聞いてないや。明日にはちゃんと全員分聞くとしよう。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る