第16話
第16話
「ふぅー……かなり疲れたなぁ。これでもうしばらくは戦いたくないな。」
俺はここでやっと全ての魔法と警戒態勢を解いた。ついに俺は神話級の黒龍を討伐したのだ。
「というか、何でここで声が聞こえるんだ?皆んな避難したはずだろ。」
皆んな避難したんだよな?そう疑問に思いスターリングウォードを方を見ると何やら物騒な人たちがいた。何か女性も一人いるけど。ここから見るとゴツくて派手な格好した騎士達が何か言いながら女性を囲っている様にしか見えないが……。………まさか王都からの応援かな?
俺がそんなふうに考えていると、そんな俺の様子に気づいてか、その騎士団と思われる人たちがこちらに向かってきた。
***
「おーーい!そこの者ーー!!」
そう言いながら馬に乗った、将軍?かと思われる女性がきた。にしてもかなり綺麗だな。やっぱり王都からの応援だと思うけど………それにしても舌噛まないようにしなさいよ。聞こえないだろうけどさ。
「おーいそこの者ーー」
うん、来たかというか案外遠いとこで見てたんだな。まぁその方が安全だけどさ。
「はい、えーっ貴方は?王都からの応援ですか?」
「う、うむ。そうだが何だ其方さっきの戦いは?規格外にも程があるだろ。相手は神話級だったのだぞ!」
まぁそれは驚くだろうけどね。俺も上手くいきすぎて驚いてるくらいだし。
「えぇ、まぁ本当に勝てるなんて思わなかったですが………でも俺が戦うしかなかったんです。」
俺がそう言うと、目の前にいるその女性は頷いた。
「あ、あぁそんなことは分かっている。大体の事情はレイス殿から聞いているからな。取り敢えず神話級を倒してくれたこと、国の危機を救ってくれたこと、この国の一王族として本当に感謝する。私はこのハルバート王国第二王女エミリアだ。其方は…………」
「………ソ、ソラです。以後お見知り置きを……」
えーっ、王女かよ!?慌てて俺は跪く。
マジかよ、何で姫様が軍率いてんだよ!!あれか、姫将軍ってやつなのか!?そうなのか!?
「よいよい、ソラ殿。其方はこの国の英雄なのだ。むしろ敬意を払うのはこちらの方だ。なぁ」
エミリア王女は今度は後ろの人たちに声をかけた。すると後ろの厳つい人たちは全員頷いていた。
「とのことだ。ソラ殿この後、レイス殿たちと合流しに向かうが、その後王都に着いてきてはくれないだろうか?」
ふむ、まぁスターリングウォード以外にもいつかは行かなくちゃいけないからな。ちょうどいいかもな。それに断ると何か……ね。王族だし………ね。
「分かりました。同行します。」
「うむ良かった。それでは早速レイス殿たちのいる交易街に向かうとしよう。ソラ殿は私の後ろに乗るとよい。馬に乗って来ていないだろ?」
おそらく
「はい、お願いします。」
そう言って俺はエミリア王女の馬に乗り、エミリア王女のお腹あたりに手を回す。
"ヒャッ!"
とエミリア王女が急に言った。おいおい、周りの騎士団の人にめっちゃ見られてるんだが。と、とりあえず急いで謝ろう。
「す、すみません。やっぱり降りた方がいいですか?」
「い、いや。こちらこそすまない普段一人でしか乗らんものだからな。少し驚いただけだ。そうだよな、不安定になるから普通掴まるよな………。で、では早速行くとしよう。」
な、なんとかなったみたいだ。本当に無意識だったからな。あぶねっ、何かエミリア王女顔赤くなってるけど、怒ってはいない…よな?
***
スターリングウォードを過ぎて、エミリア王女の後ろに乗ったまま、レイスさんたちと合流しに行こうとしていた。
「そう言えばソラ殿、冒険者になったばかりのようだが、その前は何をしていたのだ?傭兵でもやっていたのか?」
前に乗るエミリア王女が俺にそう聞いてきた。でも傭兵とかはやってないしな。
だからといって、転生してチートになりましたー。とか本当のことを言うのは色々と不味そうだしな。でも嘘をつくと後々面倒くさくなりそうだし。ここは何となく研究してたとかでいいかな。事実だし、大体のことなら知識としてあるから聞かれた時も答えられると思うし。
「えーっそうですねぇ。研究をしていましたね色々と。」
「そうなのか。というよりソラ殿の魔法は一体何魔法なのだ?基本魔法では無いと思うが。いわゆる特殊魔法なのか?あとその研究はソラの不思議な魔法に関係があったりするのか?」
「まぁそんなところですね。まぁ確かに俺が使ってるのは特殊魔法ですけど。俺は基本魔法は何も使えないので。」
「そうなのか……それは大変だったようだな。まぁとりあえずレイス殿たちと合流するしよう。レイス殿もソラ殿のことを心配しているだろうし。」
「あー、そう言えば黒龍の死体はどうするんですか?」
「うむ、それについてはレイス殿と合流した後、一度戻って回収しよう思っている。今はソラ殿が
***
それからしばらくして、スターリングウォードよりは規模が小さいが街が見えてきた。さっきエミリア王女に聞いたところ、ここは王都とスターリングウォードの間に位置していて、交易中心の交易街らしい。ちなみに名前はマーチャントというらしい。というかマーチャントって商人って意味のまんまやん。何か……うん安直過ぎ感が否めないな。
「よし、着いたぞ。ここにスターリングウォードからの避難民達が留まっているはずだ。早く合流しよう。」
エミリア王女がそう言うと、一行は馬を降りて早速街に入っていく。それに続いて俺も街に入っていく。
「おぉ、避難民というかスターリングウォードの人口が多いから、流石にいっぱいいるな。さてと、レイスさんはどこだろうか?」
俺はレイスさんを探し街の中にさらに入っていく。すると何やら店の前でエミリア王女とレイスさんが話しているのが見えた。そこで俺はレイスさんとエミリア王女の元に向かった。
「お、おソラ!!良かった、無事だったか!!本当に良かった。」
「なぁレイス殿、ソラ殿は本当に規格外だ。途中から戦いを見ていたが神話級の黒龍をほぼ一方的に倒していたぞ。なぁレイス殿………」
レイスさんが泣きそうになるかのような顔で俺の方に向かってきた。ちなみにエミリア王女はレイスさんに俺がどうたらこうたらだと話している。まぁレイスさんは今エミリア王女のことを相手にしていないようだが。
「はい俺は無事ですみました。でもそれは俺のお陰だけではありません。勇気ある聖剣使いさんのお陰です。彼が龍の首元に傷を与えていなかったら負けることはなくとも、勝てなかったかもしれないです。だから本当に聖剣使いさんに感謝です。」
すると驚いた様な顔をしてから、レイスさんはその場で崩れ落ちた。そうだろう、おそらく聖剣使いの彼はレイスさんの元々の仲間で、命を削ってレイスさんたちを守った張本人であったのだろうからな。
「そうか…そうか………、本当にありがとうな仇を打ってくれて。アーサー………お前のお陰だ。本当にありがとう。アーサーの死闘は無駄にならなかった。……これでゆっくり、安らかに眠ってくれ。」
レイスさんはまだ泣いていた。今は一人にしてあげた方がいいな。そう思って俺はエミリア王女の手を引きレイスさんの元を離れた。
「離れる時にレイスさんは俺の方をしっかりと見て、ありがとうと言った。」
うんうん、良かったな。まぁエミリア王女は突然俺に手を引かれて「えっ?」と混乱していたが、まぁいいだろう。
***
その後、しばらく経ってレイスさんが戻ってきた後俺とレイスさん、そしてエミリア王女の三人で黒龍の死体は明日回収しにいくこととなった。それで俺が王都に行くことも話したがレイスさんは賛成らしい。どうやら王都にはかなり大規模な魔法学校やイベントなどがあるらしく、レイスさんが紹介状を書いてくれるらしい。
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