第17話「いざ王都へ」
第17話
昨日レイスさんたちと合流した後、黒龍の死体を回収しに行くことと、俺が王都に行くことがきまった。ちなみに俺が王都に行くタイミングはエミリア王女たちが王都に戻る時だそうだ。
だがどうやらレイスさんはついては来ないらしい。まぁギルド長だし、忙しいだろうから仕方ないな。
***
「んっんぁー、明けたか。今日は確かこの後黒龍の死体回収に行くんだったよなぁ。」
俺はその場で立ち上がる伸びをする。
「おはようソラ。案外起きるの早いんだな。」
そう朝イチに声をかけて来たのはエミリア王女だ。また、それに続いてレイスさんも来て「おはよう」と声をかけてくれた。
「はい、お二人ともおはようございます。」
俺はそう言って、二人と共に街の出口の方へと向かった。そう言えばどのくらいの人手がいるだろう。
「レイスさん、何人で行くんですか?それにあんなデカい黒龍運べるんですか?もしかして切って運ぶんですか?」
そもそも黒龍自体20〜30mくらいあるのだ。普通に運ぶ何て不可能に等しい。
「うむ、運べるかについては問題ない。それに黒龍の回収には私とエミリアとソラの三人だけで行く。あとだな神話級の魔物を切ったりするわけないだろう。血の一滴にまで価値があるのだぞ。」
そんなもんなのか。すげぇな流石神話級というだけある。で、三人で行くのは別にいいのだが結局どうやって運ぶんだ?
「それでどうやって運ぶんですか?絶対に三人じゃ無理だと思うんですけど………。」
「うむ、実は私が冒険者時代に手に入れたものでな空間魔法が付与されている袋を持っているのだ。だから龍が大きくても恐らく入るだろう。だから心配にはおよばない。………よしそれでは行こうか。」
レイスさんがそういうと俺とエミリア王女は、レイスさんに続きスターリングウォード、魔の森の方へと向かった。
***
魔の森の竜の死骸のところに向かう途中、俺たち一行はマーチャントと魔の森の間に位置する、スターリングウォードに寄っていた。
「昨日の今日で街は何も変わっていないな。まぁそれも全部ソラのお陰なのだがな。この様子ならもう今日明日には市民を皆んな戻せそうだ。改めて感謝するぞソラ。」
何か改めてレイスさんに言われると照れくさいな。だがまぁ自分で言うのも何だが事実ではあるからな。
「ま、まぁそれより早く行きましょう二人とも。」
「「うむ、そうだな。」」
そう言って三人は引き続き黒龍の死体の元へと向かう。
***
「ほ、本当にソラはこれを一人でやったのか、死体でも随分と威圧感があるな。それにしても首をバサッと落としたのか………本当に凄いな。さてそれではもう早速しまってしまうか。あまり好き好んで見ていたいとは思わんしな。」
そう言ってレイスさんが小さいポーチ?みたいなやつを取り出した。そしてレイスさんがポーチを開けて黒龍の体に触れると突如黒龍の死体が消えた。
「へぇこれが空間魔法か。凄いし便利ですね。」
俺がそう言うと、エミリア王女が不思議そうに
「何だソラ殿は初めて見るのか?王宮とかでは割と使われているが、それこそ王都とかでも。」
と言ってきた。
いや俺王都行ったことないし、それにあんた王族だからそんな頻繁に見られるんだよ。と思った。
「いや知ってはいましたが、実際に見るのは初めてですね。それに王都にもほぼ行ったことないですし。」
「そうなのか!それならば楽しみにしておくとよい。王都はすごいからな。」
「へぇそんなんですか。今からもう楽しみです。」
そんなふうに少しの間、エミリア王女と話していると、そんな間にもう収納が終わったらしい。いやはや凄いな空間魔法。
「よし収納はもう終わった。………ソラこの袋は其方にやろう。もう私は引退しているからな。いくらこれが便利とは言えソラが持っている方が良い。それにソラは黒龍を王都に持っていかねばならないしな。」
嬉しいが流石に貰いづらいな。だってこれおそらくレイスさんが仲間達と協力して手に入れたやつじゃん。昨日の泣いてる姿何か見たら貰えないだろ。
「いや、……でもこんな物貰えないですよ。これはレイスさんが仲間達と手に入れた大切な物ですし。」
「うむ、そうかもしれないが。これは私なりの感謝と信頼の表しだ。受け取ってくれると私としても嬉しい。」
「………わ、分かりました。それならありがたく頂戴致します。本当にありがとうございます。大切にします。」
「うむ、そうしてくれ。」
そんなこと言われたら受け取るしかないじゃん。まぁ本当に嬉しいけどさ。
「よし、それではソラ!マーチャントについて準備を整えたら早速王都に向かうぞ!」
俺とレイスさんの話がそこでひと段落つくと、早速といった具合に、エミリア王女が俺にそう声をかけた。
早いなぁ……まぁ早くに王都に行くのは別にいいんだけどさ………。
「あのエミリア王女早くに王都に行くのは構わないんですけど、宿の解約とか挨拶とかまだ何もしてないんですけど。」
俺が思ったことを言うと今度はレイスさんが、
「宿とか面倒くさそうなものは私が処理しておこう。といってもほぼ面倒なものなんてないがな。それと挨拶はまだ皆んなマーチャントにいるのだ。それこそそこですれば良いだろう。」
と言った。
いやまぁそりゃそうだけどさ。………うーん、まぁいいかじゃあそれで。
「分かりました。じゃあ、とりあえずマーチャントに戻りましょうか。」
「「うむ(そうだな)」」
そうして結局俺たちは皆んなのいるマーチャントに戻って行ったのだった。
***
「それでは俺は銀の帽子亭の方々に事情説明とお礼に行ってきます。」
マーチャントに着いて、俺はエミリア王女とレイスさんにそう言って別れ、街の中で銀の帽子亭の看板娘のリリアを探しに行った。
それからしばらく経って、リリアと宿で見かけた方々を見つけた。
「こんにちは久しぶりですねリリア。」
そう言うとリリアは"ビクッ"としてこちらを見た。
「ソラさんどこに行ってたんですか!!心配………したんですよ!!」
俺の声を聞いてから、涙目でこちらに話しかけてきた。どうやら俺のことを心配して怒ってくれているようだ。
「本当に心配かけてすみません。冒険者ゆえ一人で戦っていました。それと話したいことがあって…………うぉっ!」
何か急にハグされた。泣きながら……
「そうですか…本当にお疲れ様です……。私の大切な街を…人たちを……守ってくれて、ありがとう…ございました。」
俺はあまり泣かれた経験がなかったので少し焦った。
「い、いえ俺としても守れて良かったです。こちらこそありがとうございます。その、あのですね実は俺王都に行くことになったんです。だから……」
「………そうですか、少し寂しくなりますが………そうですね、気をつけて行って来て下さいね。」
俺がリリアにそう伝えると、そう言ってくれた。まぁこれでひとまず安心した。
また、それから少ししてリリアが俺から離れた。
「すみません、急に迷惑かけました。気をつけて行ってらっしゃい。またスターリングウォードに来た時には是非。」
リリアはそう言って笑いかけてくれた。
「はい、こちらこそ是非その時はまたお願いします。それではまた。」
俺はそう言って銀の帽子亭の方々と別れた。そして俺はエミリア王女とレイスさんがいるであろうマーチャントの出口付近へと向かった。
「お、ソラ殿ーここだ。もう挨拶とかは良いのか?」
エミリア王女が聞いて来たので、俺は「はいもう大丈夫です」と応えた。それにしてもエミリア王女の後ろに騎士団がいるが何か本当に厳ついな。
「うむ、それなら良かった。早速王都に向かおうか。レイス殿、ソラ殿に何か言わなくていいのか?」
エミリア王女が言うと、俺はレイスさんの方を見る。
「うむ、言いたいことは大体言ったからな。でもまぁそうだな。まずは改めて本当にありがとう。それとソラだからあまり心配はしていないが、気をつけて頑張れること。これこそないだろうがソラが死んだなんて話は間違っても聞きたくないからな。………それではソラ、達者でな。」
レイスさんが俺にそう言った。でも俺の方こそレイスさんには感謝しかないからな。
「はい、気をつけます。それと感謝すべきなのはこちらの方です。本当に出会った時から何から何まで本当にお世話になりました。………それでは行ってきます、レイスさん。」
俺はまるで母との別れを名残惜しむように、そう言ってエミリア王女の馬車の後ろに乗った。
「では行くぞ!!ハイヤーッ!」
そう言ってエミリア王女、俺、騎士団、の乗る馬は王都に向けて駆け出して行った。
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