第15話「姫将軍とソラ」(エミリア視点)

第15話  エミリア視点


レイス殿と話して、私はすぐに隊列に戻り指示を出した。


「このままスターリングウォードへと直行する!!進むぞ!!」


それにしても神話級だなんて。本当にいま一人で抑えているのは誰なのだろうか?本当なら相当の化け物だぞ。


***


「スターリングウォードの北門に着いたぞ!!このまま西門まで突っ切る!!遅れるなよ!!」


私と近衛騎士団の面々はスターリングウォード内の大通りを駆け抜けていく。今は誰一人いないから街の中を突っ切って行った方が、市外を廻っていくよりもうんと早い。



スターリングウォードに入ってから、私たちはすぐに西門についた。


「よし、急いで編成を整えろ!!この西門を越えたらすぐに戦場だと思え!!」


流石は近衛騎士団だな。毎度思わせられるがエリート騎士ってだけあって、全てほぼ完璧に私の指示したことをこなしてくれる。だから私も毎度ちゃんとしないとなって思わせられる。


「よし、それでは今より神話級討伐の任務を開始する!!」


私がそういうと少しざわついたが、少し経つと皆覚悟を決めたのか、キリッとした顔立ちになった。まぁ神話級と戦うなんて今初めて言ったからな。


「では行くぞ!!私に続け!!」


そう言って、私たちは西門から駆け出た。


***


私たちは戦闘準備を整えて、スターリングウォードの西門から飛び出したのだが、私たちが警戒態勢を維持しつつ魔の森へと進んだ末に見たのは、一人の青年がとてつもないくらいの威圧感を放っている黒龍を魔法で押さえつけているところだった。


「何て男だ、私でも震え上がって腰を抜かしそうて一歩も動かない状態なのに。あの青年は自身の魔法で神話級を押さえつけている。とんだ化け物だな。……ぜ、全員ここにて待機だ。絶対にあの青年の邪魔だけはするな。あの青年は近い将来の王国の命運を左右するかもしれなくなるからな。」


私がそういうと、近衛騎士団の面々はその場で馬を降り、座り込んだ。どうやら近衛騎士団でもあの神話級の威圧はかなり堪えるらしい。


しばらく見ていると青年が目にも留まらないようなスピードで、急に龍の顔面の真前に現れて大爆発を起こした。


「な何なのだ、今のは!?大規模魔法を一瞬で!?……これで終わったのか?」


私がそう考えていると青年が街、私たちの方を向いた。帰るのだろうか?それなら私たちはあの青年に話を聞くべきだな。よし、行くか。………そう思った時、急に大爆発によって起こった煙の中から蒼い光とともに先ほどよりも強く濃い、それこそ気を失ってしまいそうになるくらいの威圧感がたちこめた。


「な、なんなんだ!?こ、これは!?」


私がそういうとバタッバタッと数人の近衛騎士団兵が気を失って倒れていった。流石の近衛騎士団兵でも、神話級の本気の威圧には耐えられないようだ。

私がそう考えている間にも煙は引いていき、蒼い光は強くなっていった。


「一体………何が起こるんだこれから?それにあの青年は神話級に勝てるのか?」


少し経つと煙が晴れた。するとその中から蒼い雷のようなものを纏った黒い龍が姿を現した。


「あ、あれが………神話…級。」


私がそう言っていると、その龍とともに戦っていた例の青年も一緒に姿を現した。青年が姿を現したと思ったら、今度は黒い龍が爪に雷を纏わせ振り落とした。 


"ドガーーーーーーン"


という爆音が鳴り響き、かなり大きな穴が地面に空き、とてつもない爆風が空を切った。


「な、なんて威力だ。これは放っておいたら本当に国一つ滅ぶぞ!あ、あの青年は無事なのか!?」


私は必死に煙の中にいると思われる青年の姿近づいていこうとしながら探す。だがその時に近衛騎士団の兵士に「危険です姫!!お下がり下さい!!」と言われたため、そこまで近づくことはできなかった。が少し経って青年の姿を目視することができた。それで私は少しホッとした。


「本当に何者なんだ彼は?神話級の本気とまともにやり合ってる。というか彼は優位にさえ立ち回っている。私たちはまともに立ち上がることすら難しいのに。今でも魔法で龍を押さえつけながら戦っているし。」


私たちは彼が何者なのか全く分からない。でもひとつだけ分かるのは、彼があの神話級の黒い龍を倒してくれないと、国が危なくなるということだ。……だから本当に頼むぞ、勝ってくれ。


"ドゴーーーーーーーーーーーーン"


私がそんなことを考えていると、そんな爆発音が響いた。全く何で火力だ、今のでやったか?私は期待を抱きつつ煙の中に目を凝らす。……だが、煙の中から出てきて見えた時、まだ龍は普通に生きていた。それだけでなく、すぐに反撃を繰り出そうとしていた。だが青年はそんな龍の様子を察してか、龍を押さえつけていて、凄まじい風を起こしている魔法の威力をさらに上げた。


「うぬぬ、私たちも混ざって戦いたいが、やはり私たちではあのレベルの戦闘にはとてもだがついてはいけないな。全く不甲斐ない………」


本当に不甲斐ない。国を代表すべき将の一人として、あんな私と同年代か年下のような青年に命運を委ねるということにはとても申し訳なく思う。

私がそんなふうに思っているとまた戦況が大きく変わった。彼は遂に完全に龍を身動きができないほどに地面に貼り付けた。彼には底がないのだろうか。今度は何をするのだ?何か考えているようだが……さっきの攻撃で仕留められなかったからか?


すると青年は何か思い立ったようにして、剣を構えるようにして構えた。


「しかし何だあの構えは。明らかに普通の剣の構えではないことは分かるが。しかし何処かで見たことがあるような………」


そう考えていると、私の考えていたよりも突如この伝説的な戦いは幕を閉じた。


"ヴンッ……………ズパーーーン!!!"


彼が腕を振り切ってから、そのような音が鳴り響いて龍の首が落ちた。その後"ズドン"と龍の首が落ちた後はしばらく沈黙が流れた。


その後少しの間沈黙が流れたのち、"何だあの青年マジでスゴイな"と、神話級の龍による威圧が解けてやっと声が出せるようになった近衛騎士団の面々がそう呟いた。勿論これは私と一緒に来た近衛騎士団の面々のものだ。


「ほ、本当に一人で神話級を倒しきった。魔物大暴走スタンピードを一人で抑えた後に、たった一人だけで神話級討伐まで……………」


私は目の前に転がっている事象を前に、驚き呆れることしかできなかった。

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