第12話「来たる神話級」

第12話


何だ何だあそこで蠢いている黒いやつは!?レイスさんと何か関係でもあるのか?

だが少なくとも威圧感が半端じゃない。それこそネクロマンサーなんかよりも。それに見たところアレはSランクを超えて、魔物の域に収まっていないEXランクの神話級とやらではないのかとすら感じる。おい……今の俺にはアレには勝てないぞ。でも100%こっちくるよな。しかももし本当に俺の思う通り神話級とやらだったら知能も高いんだろ。なにそれ無理じゃん。


「全くSランク冒険者とか、騎士団とかそれこそ前レイスさんが言ってたLレジェンドランク冒険者とか何をやっているんだよ。こういう時のための高ランカーだろ。」


俺が一人キレている間にも、もぞもぞと蠢くナニかはさらに威圧感を大きくしていった。それにきっとこの威圧感は、直接本能的な何かに語りかけられているんだろうな。それこそ生物としての"格"の違い的なのによる違いで。


「……はぁ、俺今戦ったばっかなんだけど。」


まぁ体はあったまってるけどさ。

まぁ取り敢えずレイスさんを落ち着かせよう。そうしないと、ただただヤバいということ以外に全く状況が分からない。

そう考えて、俺は固まっているレイスさんを抱き上げ城壁の上から、目の前に市街地のある門の下へとと降りる。


「レイスさん落ち着いてください。とりあえずここなら見えはしないはずです。」


俺がレイスさんに声をかけると、レイスさんは数回深呼吸をしてから俺に言った。


「ソラ……アイツが今回の魔物大暴走スタンピードのボスだ。……だが恐らく、いや絶対にソラでもアイツには勝てないだろう。なんせアイツは神話級の黒龍だからだ。………かつてアイツに私の仲間たちであるSランカー達は全滅させられたのだ。"聖剣使い"と言われた最強クラスの冒険者さえも。」


そうだったのか。レイスさんはさっきのアイツに仲間を全員殺されたのか。それにアイツはやっぱり神話級なのか………そうか、龍か。

俺はそれを踏まえた上で、意を決してレイスさんに尋ねる。


「レイスさん、それならここにいる冒険者や騎士団、傭兵の人たちで勝てるんですか?ここで怯えていて、何か変わるんですか?」


そう俺が聞くと、レイスさんは「うっ………。」と言い淀んだ。


「それならやはり、俺が戦うのが一番です。そして集まってくれた皆んなには、この街からの避難誘導や残った魔物の掃討などをしてもらうべきです。つまり俺が言いたいことは"逃げろ………無駄に死ぬな"ということです。それに冒険者になった今の俺にとって街の皆さんを守るのことも仕事ですよね。」


俺がそう言いと、レイスさんはそれなら私も残ると言った。勿論そう言ってくれること自体は嬉しい。だが正直言って自由に戦うのには邪魔である。仲間がいるというのは心強いかも知れないが、戦いにくくなることには変わりない。


「いや、レイスさんも逃げて下さい。あなたも守る対象にはいっています。」


「ダメだ!!………もう私は、私の見つけた希望を置き去りにして失ったり後悔するのは嫌なのだ。」


レイスさんは少し涙ぐんだような顔をして俺に訴えかけてきた。


……クールに見えるレイスさんでもこんな顔するんだな。でもそうか、聖剣使いと言われていたレイスさんのかつての仲間は、レイスさんにとって希望だったんだな。それに俺がなれたなら………やっぱり俺はここで退けないじゃんか。


「それならなおさら俺はここで退けないです。それに俺は聖剣使いさんと違って死ぬつもりなんてありませんよ。しかも、真正面から正々堂々と戦おうだなんて思ってもいませんしね。……それじゃあレイスさんは、司令官として俺の手助けをしてください。それでは一秒でも早く、この街からの一人残らず避難させてください。」


俺はそう言ってレイスさんと別れた後、城壁の上へと戻っていく。これで正解なんだ。これが最適なんだ。


***


「にしても、レイスさんの言う通り本当に黒い龍なんだな。さて、どう戦おうか。できるかは知らないけど取り敢えず目潰しでもしてみるか?それとも足を崩してみるとする?足元なんて、あんな巨大なら自分からほとんど見えないだろ。」


よし、まずは足を崩すか。それで、できそうなら次は目潰しだな。まぁもしそれができたらいくら神話級とはいえ勝てるだろ。うん…というか勝ててくれないと困る。


「てか俺めちゃくちゃ簡単なことかのように言ってっけど、本当にまず足崩すことなんてできんのか?」


そう俺がそんなふうに考えていると、


"グォーーーーーーー!!!!!!!!!!"


と例の黒い龍が咆哮をあげた。それはとても深く濃い威圧の気を含んでおり、直接俺たち人間に生物的な格の差を示して脅してきているかのような感じだった。だが俺は魔力がとてつもなく多いお陰か、屈しそうにはなったものの何とか耐えることができた。さてじゃあ戦うぞ。


「さぁ、ついにお出ましか。そんなら早速行くとするか!!ネクロマンサーとの戦闘のお陰でステータスも大分上がったことだしな。熱強化ヒートアップレベル10!!」


「ステータスオープン。」

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新門 宇宙 (シンモン ソラ)


攻撃力 5000+500000 (10重+灼熱の魔眼)

防御力 5000+500000 (10重+灼熱の魔眼)

体力  5000+500000 (10重+灼熱の魔眼)

魔力  ♾

知力  計測不能

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使用可能属性 なし

特殊魔法 熱

使用可能魔法 

熱強化ヒートアップ:熱を自身に与え身体能力を飛躍的に向上させる。一重につき基礎ステータスを元と同じ分だけ上乗せする。十重まで可能。(十重時基礎ステータスの元の分の10倍分を基礎ステータスに上乗せする。)

分解アナリシス:自信を中心として、半径約2メートルの熱の球を展開し、敵から受けた魔法を純粋な熱エネルギーとして分解し、分析する。

反射リフレクト: 分解アナリシスによってできた純粋な熱エネルギーを魔法として再構築し、敵に反射する。

超新星爆発スーパーノヴァ:自身の拳に莫大な熱エネルギー量を凝縮し、集中させ、攻撃を放ったときに凄まじい爆発を起こす。

気流操作エアーフローオペレーション:熱によって気流や気圧などを操作し、上昇気流や下降気流を起こしたり、竜巻などを起こしたりすることも可能。


称号  人類の叡智、無限の魔力、転生者、              

    神の加護を受けしもの

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例の黒龍は"グォーーーーーーー!!!"と鳴き叫んだと思ったら、今度はとても大きく漆黒の翼をいっぱいに広げた。そして、俺の方を見た。俺はこれを見て明らかに挑発されている、と感じた。


「何だ……かかってこいってか?いいぜ!行ってやろうじゃん!!」


俺は黒龍を見据えると、全速力で城壁から飛び出した。


***


俺は城壁の上から飛び出すと、一直線に黒龍のいる魔の森へと走る。この時一気に空中を飛んでいかなかったのは、黒龍にただ近づくというだけでなく、黒龍にどこにいるのか分からなくさせるためだ。


「これじゃどこにいるか分かんねぇだろ。これでこっちはどの方向からでも攻撃し放題だ。……っておい!!やめろ、マジかよ!!!」


俺はこれでどっからでも攻撃し放題だなんて楽観的に考えていた。だが黒龍は自身の体に電気を纏わせると、そのまま咆哮を放とうとしていたのだ。それも街や街の人々が避難しているであろう方向に。俺は咄嗟に黒龍が咆哮を放つであろう直線上へと走った。


「姑息な手を使いやがって、お前性格悪いな!分解アナリシス!!……反射リフレクト!!ウラァッ!!」


俺は魔法を使うことで何とかそのとてつもなく強力な咆哮を受け止めるとともに反射した。

黒龍は、自身の咆哮を防いだ正体である俺を見て"フンッ"と鼻息を荒げた。


「アイツマジで性格悪いわ。だけどそれはちゃんと頭もキレるってことだしな。流石は神話級だ。………だけど神話級の黒龍さんよぉ、そんな姑息な手で攻撃したのに、見下していた人間の俺に自慢の攻撃止められちまったなぁ!」


俺は黒龍を挑発する。正直、勿論内心恐怖を感じてはいるが、今の一撃を止めることができて俺は少し自信が出てきていた。

俺が次はどうしようかと思案しながら駆けていると、黒龍が飛び出そうとしたのが見えた。


「おっと、俺としてもお前をここから飛ばせるわけにわいかんのよ。気流操作エアーフローオペレーション!!」


そう言って俺はかなり強めに下降気流を発生させた。………だが黒龍はそれでは抑えられなかった。


「おいおい、マジかよ!?気流を突き破るとか流石に力強すぎだな。」


何と黒龍は、自身の翼にも雷を纏わせ激しく動かすことで俺が作った下降気流を突き破ったのだ。

まぁ、だから何だという話だがな。まだいくらでもやりようはある。そこで取り敢えず俺はさらに強い下降気流を発生させることにした。


「どこまで耐えられるかな神話級!!!」


俺は下降気流を強くしていくだけでなく、周囲から発生した風を熱で操作しながら集め、逃げることができないよう、全方向から黒龍を押さえつけにかかった。



それからしばらくして、バタバタと翼を動かして抵抗していた黒龍がついに地面に平伏した。俺は魔法を維持しつつ、ついに黒龍の目の前に向かった。



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