座敷童マツバの独り言

 星の輝く丑三つ時に目を覚ませば、ふと【あの子】のことが脳裏に浮かぶ。先の大戦で僕のもとから、それこそ鳥のようにいなくなってしまった【あの子】を忘れたことなどない。それでも刻一刻と進む時が、僕の中から【あの子】の記憶を少しずつ消しているのも事実だ。姿形は容易に思い描けるのに、声はもうどんなに頑張ったって聞こえないのだ。

「最近は夢枕にも立ってくれんなあ」

僕は会いたいのに、なんて言ったところで会えるわけでもないのに、少し心が軽くなった気がした。


 【あの子】はもう僕を恨む声すらも聞かせてくれない。

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