時系列不明

氷川丸と

 蒼い海に青い空。それらは何も現世の者たちだけの物ではない。現世に限りなく近い所に現世ではない場所……【道】と呼ばれるその場所に、人に望まれ人に想われて生じた【艦霊】と呼ばれる神々。彼らは人と共に海に生き空に焦がれ暮らしている。そして、生と死をその身のうちに秘め今日も時を刻んでいるのだ。


「あら、あなたまだそんなところでいたの?」

氷川丸は薄暗い小さな瓦礫の山に話しかける。そこには生気のない男が一人座っている。男が見に纏うのは汚れて黄土色に変色した軍服で頭には包帯を巻き膝から下は赤黒く不鮮明な姿である。氷川丸は男の側に寄り静かに膝まづいた。そして男の手を宝物を扱うように優しく自分の手で包み込み、口を開いた。

「おかえりなさい。ここはもうあなたの国ですよ」

氷川丸の言葉を聞いた男は安心したように微笑み、ふうと姿を消した。


 その船が運ぶモノは――

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