腹ぺこ戦士



コーヒーを飲み終えると、




硬い地べたへと体を戻す。






「つめてえし、いてえ。」






日常の当たり前が少しずつ、




いろいろな形で消えてゆく。






空は変わらず星が輝き、




ゆっくりと動いて、揺らぎ、




ふとした時に流れる。






ただそれをぼーっと眺める。






うとうととし始め、




地べたに敷いたシートに身を委ね、瞼が閉じる。




「ん、ん、、、」






?「ぉ、ぃ、」




「ん?」




?「ぉ、い、」




「?」




?「おい。」




ハッ!




俺の視界には見知らぬ男が居た。






だ、誰だよこの人、、




男は田舎の雰囲気には似合わず、




まるでアニメにでも出てきそうな装備で、




枝木の灯火に手を当てて座っていた。






男「暖かい。」




弱くなってきている灯りに木をくべる。




ぐぅ〰️、、






腹が悲鳴をあげると、静かな夜に響く。




それを嘲笑うかの様に、虫達はこだます。






くっついた眼を擦りながら、体を起こす。






「あの、、良かったら、これ。」




見ず知らず、勝手に暖を取り始めた男に、




バックの中からカップラーメンを取り出し、




がたいのいい男へと渡す。






男「何だコレは?」




男は不思議そうにカップラーメンを見回す。






ここらじゃあまりスーパーとかもないしな。




田舎の人はあんま食べねんだろ。




そう考えていた。






バリ、、




男は無造作にカップラーメンを破壊すると、




乾燥された中身を手掴みでつかむとそれを、




まるで、毒を確かめる様に鼻へと持って行き、




大丈夫だと理解すると、口へと運ぶ。






男「バリバリバリ」




えー。




カップラーメンの新たな食べ方を




この歳にして初めて理解した。




斬新、、、






いやいや、、、




そもそもお湯入れて渡さないのが悪かったな。






普通にお湯頼めばいいのに。




いや、それほど腹へってたのかな、、






謎の申し訳ない感に襲われ、調理に取り掛かる。




火の上に台を置き、湯を沸かす。






その光景を男は不思議そうに見ていた。




あぁ、やっぱり食べ方知らなかったんだな。






お湯沸かしてやれば良かったな、






しばしの静寂は焚き火の音に書き消される。




男はまるで、戦でもしているのかの様な身なりだった。




レイヤーさんでもないし、いやいや、




そもそも何でこんな田舎にレイヤーが、




ましてや寝てる奴の隣にくるんだ。






寝ぼけていた頭が回転し始め、いろいろな思考が回る頃、




ちょうど3分が経ち、男へと箸と共に手渡す。






男は箸を見つめると私の顔を見つめる。




ん?もしかして箸使えない感じか。






バックのなかを漁るとフォークがあった。




「どうぞ。」




男「おぉ。」




男は安心したかのようにフォークを受け取った。






お洒落髭なのか、乾燥麺の欠片が髭に着いている。






男はゆっくりと蓋を開けると一気にかけ込んだ。




ズルズル、、






男の旨そうな食いっぷりに俺の腹も呼応する。




誰かと食事をするのなんて、いつぶりだろうか。




バックの奥に手を伸ばすと、




最後のカップラーメンを見付ける。






男はペースを崩さずに汁まですすり終わると、




「旨い。、、旨い!!!」




と目を輝かせた。






いきなりの言葉にびっくりしながらも、




自らも夕飯を作ろうとしかけた時。






男「それも頂けるのか?」




男は申し訳無さそうにも、手は次のを要求する。






どんだけ腹へってんだこの人。




俺「3分待ってくれ。」




こんなに空腹な人を放って自分は食えない。




ぜってえ、あの人口ん中火傷してるよ、、






男は理解すると、手を引く。




それはまるで、容姿には似合わないが、




親の言う事をちゃんと聞く、子供の様だった。






俺「どうぞ、、」




男は待ちわびたかの様な表情を見せると、




俺の夕飯を自らの口へと運ぶ。






買いに行かないとな。






男はただ、黙々と食べ続ける。




カップラーメンの香りは俺の鼻を刺激する。




容器を傾けると、男は手を胸に合わせた。






男「我が主に、忠誠を捧げ、




我の身の一部となった者の命に、




魂から感謝を捧げる。




そして、この恵みが失われる事のない様、




今ここに、繁栄を願う。」






まるで、劇を見ているかの様だった。




男「すまないな。魔術師よ、」




男は頭を下げる。






俺「別に、、」




ってか、魔術師じゃねんだけどな。






男「悪いが、今は国が攻められていてな。




戦況が悪い。退路も断たれた。早く戻らなくては。




礼はコレでいいか?」






男の手からは胸元に着いていたブローチが渡された。




俺「いやいや、、




結構です、




困った時は、お互い様ですから。」






男は胸に手を当てて頭を下げる。




男「すまない。




忠誠を誓った者意外には脚を付く事が出来ない。




私が出来る行いの最上級の礼儀だ。






これも、決して人にあげてはならないのだが、




他に渡せるモノもなくてな、、




本当に感謝する。」






男の眼差しは力強く、その瞳には魂が宿っていた。






俺「いえいえ、、




また、来てください。






今度は一緒に食べましょう。」




男の差し出された手を握る。






その手は力強く、優しく大きな手だった。






男は下にあった剣を持つと肩に担いだ。




剣と言うには大き過ぎる剣だった。






俺、最後のカップラーメン渡さなかったら、




アレで斬られてたかもな、、






男の背中は逞しかった。






まるで何処かの王の様に






































































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