第30話 ダンジョン 9階層 その①

今日の晩飯は8階層でゲットした海産物尽くしだ。

特にパエリアがうまかった。


「春菜、今日もおいしかったよ。中華もできたんだね。フカヒレのスープもうまかったよ。」


「お粗末様です。食べたことがあるものでしたらスキルのおかげで再現できるのです。作るのも好きですが、食べることも好きだったので大体の物は作れますよ。」


「それは今後も楽しみだ。そうだ。約束してた真珠のネックレスとイヤリングを渡すね。」


オオホタテからドロップした真珠は7mm程の大きさで少しピンク掛かっていた。

そして、レアドロップなのか、いくつかは黒く9mmもある大粒が混じっていた。


「中に黒い真珠が混じっているだろ? その真珠は魔石に似ているんだ。それで黒真珠は充電池のように魔力を溜めることができるようなんだ。その1粒で愛莉の魔力を全回復できるほどの容量があるよ。愛莉のネックレスには3つあるから3回も全回復できることになるね。寝る前に余った魔力を溜めておくといいぞ。」


「そうなんだ。ありがとう。大切にするね。」


「それと春菜にはイヤリングの他に黒真珠の指輪ね。愛莉と同じように魔力を溜めておいてね。」


「ありがとう。指輪をもらったということはプロポーズと取っても良いのかしら?」


「え? そういうわけじゃなかったんだけど。じゃあ、指輪は返してもらおうかな?」


「冗談よ。大切にするね。」


ちょっと愛莉の視線が怖かったが修羅場にならなくて良かった。


「8階層が結構きつかったよね。明日は休みにして体調を整えてから9階層に向かうことにしよう。」


「「了解」」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ★


「王様、ただいま戻りました。」


「ご苦労であった、ガモジール、ジョイよ。捜索の結果を報告するのだ。」


「はい。攻略済みの5階層の隅々まで捜索いたしましたが、コレクターと賢者を発見することができませんでした。魔物に襲われ死んだか、またはダンジョン以外のどこかに逃亡したと考えます。」


「6階層に向かった可能性は無いのか?」


「未だ高ランクの冒険者でさえも攻略できていない5階層を突破したとは考えにくいです。しかも、オーガを見かけた者もおりました。いくら召喚者であっても魔物を狩り始めて数週間でオーガを倒せるとは思えません。一緒に召喚した勇者がやっとゴブリンを倒せるようになったレベルですので。」


「そうか。しかし、他国に向かわれると厄介だ。禁止されている召喚の儀を行ったことが公になってしまう。念のため国境の警備を強化しておくように。」


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【転移者限定掲示板】

 ※第28話からの続き


76.勇者(男)

 捜索隊が帰ってきたぞ。

 やはりコレクター君たちを見つけられなかったらしい。


77.アサシン(男)

 俺たちもそろそろ逃げる準備をした方が良いのかな?

 明らかにこの国というか王様たちは怪しいよね。


78.魔法使い(女)

 でも、国の保護なく異世界で生き抜くことができるのか不安だわ。


79.鍛冶師(男)

 そうだよな。

 一人でも生きていけるだけの力を得てからじゃなきゃ逃げられないよね。


80.薬師(女)

 みんな気付いてる?

 コレクター君達があれ以来、一度もログインしていないんだよ。

 もしかすると。。。


81.裁縫師(女)

 大丈夫。

 忙しくてログインしていないだけだよ。

 私は無事を信じているからね。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ★


また裁縫師さんが心配してくれているみたいだ。

裁縫師さんだけには俺たちの無事を伝えておこうかな。

ダイレクトメッセージを送ってみた。


To:裁縫師様         From:コレクター

裁縫師さん、こんばんは。

心配してくれてありがとう。

僕たちは無事です。

今、ダンジョンを攻略しているところです。

みんなや王様達にはバレたくないので、このことは内緒でお願いします。

それと裁縫師さんを俺たちのパーティに誘いたいと思ってます。

良いお返事を待っています。


すぐに返信が来た。


To:コレクター君         From:裁縫師

無事で良かった。

もちろん絶対に秘密にします。

パーティへのお誘い、本当にうれしいです。

しかし、私の戦闘能力は皆無です。

しかも、裁縫師ですし。

それでも宜しければぜひ仲間に入れてください。



To:裁縫師様         From:コレクター

現在8階層まで攻略しました。

キリの良い10階層を攻略したら地上へ戻る予定です。

その時に迎えに行きます。

迎えに行くときにまた連絡しますね。



1日休んで9階層へ向かった。


「ねぇ。9階層は諦めない?」


「私もあの中に入るのは嫌です。」


「なんで入り口にゴブリンがすし詰め状態なんだ? 絶対臭いぞ。とりあえず、愛莉さん。魔法をぶっ放して入り口付近のゴブリンを蹴散らしてください。」


「はぁ。やっぱり行くのね。仕方ないわね。エクスプロージョン。」


入口付近にいたゴブリンは消し飛んだ。

スタンビートにならない限り階層の外には出れないので入り口に集まっていたのだろう。

とにかくフロア情報を確認してみよう。


<9階層フロア情報>

 場所: メビウス 9階層

 フィールド: 草原

 探索者: 3名

 宝箱: 5個

 魔物: ゴブリン F- ∞

     ホブゴブリン E ∞

     ゴブリンファイター D ∞

     ゴブリンメイジ D ∞

     ゴブリンアーチャー D ∞

     ゴブリンシャーマン C 1

     ゴブリンクイーン B+ 1

     ゴブリンキング A- 1


うわ、ゴブリンファミリーのフロアじゃないか。

フロアに足を踏み入れた瞬間、生ゴミのような悪臭が鼻を突く。

それにしても∞ってなんだよ。


「第2波が攻めて来たわよ。」


ゴブリンの群れが津波のように押し寄せてくる。

ノーマルゴブリン以外も混ざっているようだが、数が多すぎて区別することができない。


「あの数をチマチマ相手にしていたら数の暴力で圧倒されてしまう。近づかれる前に範囲魔法で蹴散らしてしまおう。」


「「了解」」


「マジックブースト」

「ファイアストーム」「ファイアストーム」「ファイアストーム」


燃やしても燃やしても、第3波、第4波と押し寄せてくる。

そして、インベントリの中にはゴブリンからドロップしたボロボロの短剣や弓矢などのガラクタが溜まっていく。

気配探知で広範囲を探ってみるとこの先にゴブリンが溢れ出てくる場所があるようだ。

しかも、そこには一回り大きな魔力を感じる。


「まだ入り口からほとんど動いていないぞ。前方の群れを殲滅したら少しずつでも前進しよう。500m先ぐらい先にゴブリンが湧き出してる場所があるようだ。そこを目指そう。」


「イライラしてきたわ。一気に行くわよ! 二人とも下がって。インフェルノ!」


地獄の猛火が辺り一面を覆った。

一瞬にしてゴブリンどもは消し炭となった。


「愛莉が敵じゃなくて本当に良かったよ。また湧き出す前に一気に進むよ。」


新たなゴブリンが攻めてくる前に走った。

前方にゴブリンファイターよりもさらに大きなゴブリンが魔法陣に魔力を込めているのが見えてきた。

その魔法陣から次々とゴブリンが召喚されている。

あっという間に何百もの群れとなった。


*鑑定

  種族: ゴブリンシャーマン

  ランク: C

  スキル: 闇魔法、雷魔法、火魔法、火属性耐性、眷属召喚

  弱点: 光魔法、右腕

  アイテム: 魔石、ダークマターの杖、イカズチの杖、マグマの杖、

      シャーマンの腕輪、高級ポーション


眷属召喚をコピーさせてもらおう。


「もう一発行くわよ。インフェルノ!」


シャーマンは赤く輝く魔石の着いた杖を右手に持ち、ファイアウォールを唱え、愛莉の魔法を反らし耐えきった。

一方、周囲の群れは一瞬で消し炭となって消えた。


「耐性があるとしても愛莉の魔法を反らし耐えたってことはタダのファイアウォールじゃないね。あの杖が魔力を増幅しているのかも。厄介だな。火魔法以外で攻めようか。」


ゴブリンシャーマンはCランクだが、厄介な敵のようだ。

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