第29話 ダンジョン 8階層

8階層は砂浜が続く海岸エリアだった。

ここが魔物がいない砂浜だったら海水浴やバーベキューをしたいところなのだが。

海を眺めていると多数の上半身が魚の2足歩行する魔物が海から現れた。

手にはフォークのような槍を持っている。


*鑑定

  種族: サハギン(半魚人)

  ランク: D

  スキル: 槍術、潜水、水鉄砲(水魔法)、仲間を呼ぶ

  弱点: 雷魔法、火魔法、首

  アイテム: 魔石、サハギンの鱗、三又の槍、海藻、塩


水掻きのある足で砂浜を走ってくるが遅い。


「ライトニング」


愛莉が先頭のサハギンへ雷を落とした。

海から上がったばかりのサハギンは、びしょ濡れのため周囲の仲間も巻き込み感電し黒焦げになって消えていった。

かろうじて感電から逃れたサハギンは仲間を呼んだ。

多くのサハギンが海から上がってきた。

その後ろから大きなハサミを持った大きなカニが現れた。


*鑑定

  種族: ビッグシザークラブ(蟹)

  ランク: D+

  スキル: はさむ、泡を吹く、仲間を呼ぶ

  弱点: 雷魔法、火魔法、腹

  アイテム: 魔石、爪、カニ、エビ、塩


「数が多いから近づかれないうちに魔法で一掃しちゃうぞ。流石に囲まれたらやばい。」


サハギンとビッグシザークラブが次々と仲間を呼び、スタンビート並みに群れが大きくなってしまった。


「マジックブースト」

「ファイアストーム」

「サンダーストーム」


バフにより破壊力を増した炎と雷の嵐が巨大化した群れを殲滅する。


「ちょっと焦ったよ。あの数はやばかったね。」


「そうね。でも経験値はおいしかったわ。」


「それに海産物のドロップは有難いですね。今日はパエリアにしましょうかね。魚と貝も欲しいところですね。」


ドロップアイテムを拾い集めながら話していた。

海に背を向けて拾っていた俺の尻に魚が噛みついた。


「いたあああ! 何?! 魚?」


ピチピチ跳ねながら海に帰ろうとしている魚を剣で突き刺した。


*鑑定

  種族: ビックマウスサーモン(鮭)

  ランク: C

  スキル: 特攻、頭突き、噛みつく、ハイジャンプ

  弱点: 雷魔法、火魔法、脳天

  アイテム: 魔石、サーモン、小魚、塩


口がでかく歯が鋭い1mほどの魚が海からジャンプして噛みつこうと次々と襲ってくる。

しかし、最初の噛みつき攻撃さえかわしてしまえば後は海へ跳ねて逃げるだけだ。

なので避けた後に剣で突いてしまえば良い。

避けて刺す、避けて刺すを繰り返し魚を回収する。


「うわああああ。足が!!」


突然、砂の中に隠れていた何かに足を挟まれた。


*鑑定

  種族: オオホタテ(貝)

  ランク: C+

  スキル: 完全物理防御、体当たり、挟む、水魔法、雷耐性

  弱点: 火魔法、貝柱

  アイテム: 魔石、ホタテ、貝類、貝殻、真珠、黒真珠、塩


貝殻の隙間に剣を突き刺し、炎を付与し、一気に魔力を注いだ。

丁度貝柱に剣が突き刺さっていたおかげで貝柱が燃え、貝が開いた。


「ヒール。誠司さん、大丈夫ですか?」


「なんで俺ばっかりなんだよ。防御力上がってるはずなのにめっちゃ痛かったし。」


「あれ? あの白くて丸いのって真珠じゃない?」


「おい、愛莉さん。真珠より俺の心配をしてくださいよ。」


「誠司、大丈夫?」


「遅いです。そして、それは真珠のようですよ。」


「誠司、ネックレスができるくらい集めるわよ。」


「マジですか?」


「あなたの職業はコレクターでしょ? 集めるのが仕事みたいなものでしょ?」


「いや、俺は種類を集めてコンプリートするのが好きなだけで何でも集めれば良いってわけではないんだよ。でも、愛莉のためなら頑張るけどね。」


「ありがとう。」


「私はイヤリングで十分です。」


「春菜もかい。じゃあ、頑張りますか。でも、肝心なホタテの姿が見えないね。」


「砂に潜っているんでしょ。あぶり出しますか。ファイアストーム!」


最近、愛莉の性格が攻撃的になってきた気がする。

話し方も変わってきてるぞ。


周囲の砂浜が炎の絨毯となった。

数分後、砂の中から無数のホタテが慌てて顔を出した。

文字通り炙り出された。


「ライトニング。あれ? 貝殻が雷を弾いたぞ。貝殻には雷耐性があるようだ。物理耐性もあるから炎で行こう。」


「「了解!」」


「ファイアストーム」「ファイアストーム」「ファイアストーム」


貝が焼ける香ばしい匂いが立ち込めた。

お腹が減ってきたな。

ドロップアイテムを拾っていて油断しているときに、また魚に噛まれたり、貝に足を挟まれたりしたくないのでインベントリを改造することにした。

インベントリへ時空間魔法の転移を付与し、自動的にドロップアイテムを回収するようにした。

アイテムを取り損ねることは無いし、時間の節約にもなる。

凄く楽になり、討伐に集中できるようになった。

十分真珠を集めることが出来たので先に進むことにする。

その後、半魚人や魚に襲われ、都度倒していくと急に魔物が現れなくなった。


「あれ? おかしいね。急に魔物に気配が無くなったぞ。」


すると海面から三角のヒレが多数顔を出し、旋回し始めた。


「あれって、多分だけど。サメの背びれだよね? それも大きいし、数も多いわ。」


「そうだね。でも、今までの敵のように陸地まで襲ってこないね。」


サメがジャンプし、こちらを睨んだ。


*鑑定

  種族: キラーシャーク(鮫)

  ランク: B

  スキル: 噛みつく、食いちぎる、突進、連帯、水魔法

  弱点: 雷魔法、鼻先

  アイテム: 魔石、サメ肉、牙、サメ皮、フカヒレ、塩


「うわ、でかいな。3mはあるね。」


すると水面から顔を出したサメの頭上に魔法陣が現れた。

ウォーターボール、ウォータースピアが雨のように降り注いできた。


「ウォーターウォール」


愛莉が厚い水の壁を作り出し、サメの水魔法を相殺した。


「弱点は鼻先、そして雷だ。サメは魔法を撃つときに顔を出すから、鼻先に雷を落とすぞ。」


魔法陣が目印になるのでそこを目掛けてライトニングを放った。

モグラ叩きのような状態でなんか楽しくなってきた。

でも、相手は3mもあるサメなんだよね。

海上で戦うことになってなくて良かったよ。

それにドロップアイテムを自動回収できるようになっていて良かった。

海中にドロップアイテムを拾いに行く手間が省けた。

楽して陸地からサメを狩っているとサメが突然触手に絡みつかれ海中に消えていった。

海中には索敵が効かないため良くわからないが、とてつもなく大きな気配を感じる。

動物的な感というのだろうか。


「愛莉、春菜。とんでもなくでかいものが近づいているぞ。警戒して。」


「え? そうなの? わかったわ。」


「じゃあ、先にバフかけておくわね。」


全てのバフをかけてもらい、戦闘態勢を取った。

水面が大きく盛り上がり、その巨大な気配の主が姿を現した。

何匹も触手でサメを絡め取り、口に運びながら砂浜に上がってきた。


*鑑定

  種族: デビルクラーケン(8階層フロアボス)

  ランク: B+

  スキル: 触手、拘束、墨(煙幕)、毒牙、絞め殺す、超再生

  弱点: 雷魔法、氷魔法、目

  アイテム: 魔石、イカ、タコ、墨、吸盤、塩、水晶、宝箱


それは8階層ボスの巨大イカだった。

8mを超えるそのイカは触手を振り回し、毒を含んだ墨を吐き出しながら襲ってきた。

流石ボスだ。触手裁きが凄い。

鞭のように振り下ろしたかと思えば槍のように突き刺してくる。

クチバシのような口には猛毒がある。

捕まって噛まれたら終わりだろう。

それに触手を切り落としてもすぐに再生してしまう。

明らかに今まで戦ってきた敵のなかで最強だ。


「きゃああああ。」


春菜が触手に捕まってしまった。

急いで触手を切り落とし何とか助けることができた。


「愛莉と春菜は触手が届かない距離まで離れて魔法で攻撃してくれ。」


「わかったわ。サンダーストーム、アイススピア。誠司、切り口が凍っていると再生できないみたいだよ。」


「なるほど。ありがとう、愛莉。アイススラッシュ!」


氷の斬撃が触手を切り刻み、切り口を凍らせた。


「アイススラッシュ、アイススラッシュ、アイススラッシュ」

「アイススピア、アイススピア、アイススピア」

「アイスニードル、アイスニードル、アイスニードル」


ボスは触手を全て切り落とされ、動けなくなった。


「誠司、下がって。トドメを刺すわよ。アブソリュート・ゼロ!」


愛莉の最高の氷極大魔法が放たれた。

完全に氷漬けとなった冷凍イカは砕け、氷の霧となって消えていった。


「結構危なかったね。強くなったと思っていたが俺たちもまだまだのようだ。油断しないように気を付けよう。」


現れた9階層への階段を降り、安全エリアで一休みすることにした。


『まさか俺の最高傑作のデビルクラーケンを倒すとわ。最下層まで辿り着けるかもしれないな。よし、ちょっと本気を出しちゃおうかな。次の階層は甘くないぞ。』


謎の声が呟いた。

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