6.八日目

 

 社会人が仲間に加わってからというものの、三人での生活は程よく楽になっていました。特に社会人が、近い将来また転居することを加味しての仮拠点を文句なく作り上げて、さらに必需品の補給もテキパキとこなしてくれました。

 さらにさらに、社会人は「今の私たちを示す集団名を定めたほうがいいのではないでしょうか」ともっともな提案もしてくれました。彼の案「旅団Corp」は残念ながら不採用となりましたが、彼らはその時から「夢の島旅団」になったのです。


 名前がついたことで結束力が定まったか、今日はなんだか三人ともやる気に満ち溢れています。その勢いのまま、元カノはさらなる幸運へのかけはしを見つけることとなりました。

「何これ? どでかい鉄のボールみたいな」

 それは鉄製物品多めのジャンク帯にありました。叩いてみると仄かな振動が伝わってくることから、それほど厚さはなさそうです。

「これ半円のフォルムをしてるみたいです」

 確かに、少し下のジャンクを足でかき分けてみると、その下にまで鉄はありません。二人で力を合わせてひっくり返してみると、それはやはり、中が空洞の半球状の金属でした。

「もしかしたらですけど」

 しっかりとその固さを確認するために少し間を置いて、社会人が続けます。

「これ、フレキシブルに移動できる、フットワーク軽めの住居になるかもしれませんね。ほら、夜は最初みたいに、地面を覆うようにしておいて、その中で寝るんです。三人だとバッファも十分あると思いますし、大丈夫なんじゃないですか」

「ふーん。その移動できるってのは」

「ほら、いまいまのフォルムで中に必要なものを入れますよね、それでこの球体を、みんなで引っ張るんですよ! そうしたら、着地面積も少ないですし、球状ですから、地形の影響を受けにくいですし。サマリーは、この半球体を家替わりにすれば、建築の労力が省けて、移動も楽になるんです!」

 どうですか私のプレ(ゼン)は、と、社会人の圧に元カノはたじたじです。でも確かに、考えてみれば移動先で建築する手間が省けるのはとてもいいことですし、移動も直に持っていくよりかは、これに入れて進んだ方が楽な気がしてきました。一応これがあった場所の写真を情報として記録しておきます。

「んじゃ、まあ一回科学者に聞いてみ。あいつがOKしたらそれでいいんじゃないの」

「はい! そうさせていただきます」


 これに対する科学者の反応は、かなり好印象で、すぐさま現在の拠点を半球に変えることにしました。ただ、内部に光は一切入ってこないために夜は光源が必要になるのと、目立ちやすいのが難点と言えるでしょう。今のところ社会人の働きで食料飲料はともに十分なので、三人は光源探しに尽力しました。それでもあたりが暗くなるまでに見つかったのはトマト缶二つだけだったので、今夜は物理端末ブックの画面を光源として一夜を明かすことにしたのでした。









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