第27話 ~aoringo視点~

 ~青野 凛(アオ視点)~


 私、青野凛あおのりんは今日、旦那に振られてしまいました。

 それも結構、ど最低な理由。

 結婚二日目にして幼馴染に負けました。


 喫茶店までは実のところ、家から10分ぐらいで着くんですよね。


 ちょっと行くまでに色々と、やることがありました……。


 今は自室、ディスプレイを3つ並べてコルネットをしています。


「……くしゅん」


 おっと、誰かが私の噂をしてますね。

 心当たりがあるとすれば、イサと先咲先輩で。


 まぁ、ズル過ぎる幼馴染さんのことは置いておいて。


 私はイサ、貴方に振られてしまいましたね。


 泣くのを我慢して、すっごく我慢して。

 なんだか感じたフリみたいになっちゃいましたけど。


 あれが私の精一杯でした。


 あんなの、どうしようもないですよね。


 本当に好きだから、その人の幸せを願いたくて。

 だったら泣くの我慢するしかない。


 私が泣いてたら貴方がまた、泣いてしまうだろうから。


 イサが私の為に泣いてくれていたのは分かっていましたよ。


 そんな人だから、私はきっと好きなんです。


 あのまま二人で泣いてたら、そのまま何も話せず、先咲先輩が着ちゃってたでしょうし……。


 だから…………良かったんです。



 私はあの時、お姉ちゃんの名前をノートに書かなかった。


 それはイサ、貴方の名前がノートに────書いてあるのを見たからです。


 だって、その効果を私は知っていますから。


 NTRノートで実験していたのは私たち3人。


 つまり私も書いています。


 私は────私自身の名前で身をもって検証したんです。


 現実で彼氏なんていたことはありません。


 貴方が寝取ってくれるまで処女でいましょう。


 私はそろそろ…………ダメになってしまいそうです。


 着丈に振る舞っていましたが、やっぱり思い出すだけで泣いてしまいそうです。


 自分の名前を書いた後で、私は訳あってコルネットに新規登録したんですよ。


 貴方と会ったのはホントにその────瞬間だった。


 イサ、貴方は私を誰かから寝取ってくれる人ですか、それとも運命の人ですか。


 もし私に彼氏ができたら、一番愛してくれますか。



 ……………………。


 大丈夫です。やりませんよ、イサ。


 私は圧倒的包容力で貴方を……ずっと待ってます。



 イサ、すぐに貴方の方から接触があるとは思いますけどね。



 だって私はノートに自分自身の名前を書き、旦那の名前を書かれている。


 状況としては皮肉にも先咲先輩と非常に近いのです。


 つまり貴方たち幼馴染の状況を誰よりも理解しています。


 だから結局、イサは私に頼るしかないんですよ。


 えぇ、そうですとも。勿論、これは──未練。いえ、貴方に対する恋心です。



 それから未練といえば、お姉ちゃんと婚約者さんと私の3人でずっと調査しているもの。



 イサ、一緒に結婚までしたゲーム、『コルネット』というタイトルに疑問を持ったことはありませんか。


 コルネットは角笛の意味の他にも……。


 フランス語で「浮気されていることを知っていてもなお、傍若自然としている人」、という意味もあるそうです。


 寝取られても平気な人と角笛、何か関係があるんでしょうか。


 マルチプラットフォーム展開のMMORPGにしては、マーケティングが下手な名前をつけてますよね。



 だから────おかしい。



 私がコルネットをプレイし始めたのはそれがきっかけです。


 勘は半分当たりで半分はずれ……だったと思います。



 うーん。私がログインしてない時に離婚申請されてもイヤですね。


 ここは一つ、イサのメッセージボックスにヒントを送っておきましょう。




 =======

 from<<aoringo

 to>>isaoman


 離婚するなら

 ノートのことを教えません

 (´・ω・`)



 情報に注意してください

 信じていいのは現実の言葉のみ


 =======



 は〜ぁ……。損な役回りです。

 今頃、先咲先輩と滅茶苦茶────してるかもなんですよね。


 やっぱ送らないでおこうかなぁ……。


 お姉ちゃんもなんというか……。


 本当の愛を探したいことには同意してます。


 だけど私からしたら、ノートによる力でも自然発生的な恋でも。

 ぶっちゃけどうでもいいと思うんですけど。


 どうせリアルでの恋のきっかけなんて……。

 本屋で手が触れたか、イケメンだったぐらいの話じゃないですか。


 そういうの、私全然興味ないんですし……。


 むしろノートの方が私の考え方的にロマンチックに感じます。


 あれは本来、人の心を変える力は持ち合わせておりません。


 ただきっかけを与えてくれるだけなんですから。


 そういえばあの時、ホテルに入って行った山田先輩と夏樹先輩。

 詳しいことはわかりませんが、恐らく……。

 山田先輩が本来知り得ない情報……きっかけをノートの力で知ったんでしょうね。


 まぁとりあえず、一枚一枚綺麗に破られた別冊の各ページ。


 NTRノート本体に名前を書かれた人。その人が書かれた時の状況によって、寝取られ方が書いてあるそのページ。


 愛しの旦那様が当てはまっているであろう、その紙切れの一つを。


 私はこれから探すとします。


 イサもすぐに合流してくれるでしょう。


 …………はぁ。嫌なこと思い出しちゃいました。 


 先咲先輩……あれ、わざとですよね。

 本体の方に私の旦那の名前と自分の名前。

 丁度、裏表で重なるように書いてくれちゃって……。




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