第6話 [ソウル、とれいん..]
[ソウル、とれいん..]
レールの継ぎ目を車輪が通過する音のテンポが次第に速まり
列車の速度が上がってきた事が分かる。
ボギー台車だから、二つの車輪が継ぎ目を通過する音が連続して
トトン、トトン、と聞こえていたものが今、ほとんど一つの音に重なって
ダッ、ダッ、と聞こえている。
力強く、ロック・ビートのように。轟音をあげて突き進んで行くという
イメージの鉄道車両、583系は直線的な鋭さのデザインされて
あたかもロック・ミュージックのようなパワフルさで昭和の時代を駆け抜けていた。
汽車をイメージした音楽といえば、古くは「Locomotion」などの軽快なポップス、
それは1960年代、という時代背景もあって、SLのようなのんびりとした優しさを感じるし、
1970年代になっては「Midnight Train /Soul Train」などの力強い黒人音楽。
スリー・ディグリーズのコーラスがなんともエネルギッシュであったし、
Midnight Trainなどは日本人の作曲のためか、どことなくペーソスを感じ
去りゆく蒸気機関車の時代とOverlapするようなイメージでもあった。
近年、とはいっても1990年代、JR東日本のキャンペーンソングであった
「Choo-choo-train」などは過去の名曲、例えば[shaft /Isaac Hayes]であるとか、
[Love's Theme/Barry White&Love unlimited]などの名曲を踏まえた曲で
音楽ファンの評価も高い作品であり、新しい時代の鉄道移動(旅行ではない)
を象徴としたよいイメージ・ソングであったと記憶している。
曲中、ノッチオフで進行する電車、おそらくは軽量車体のものであろうそれの
120km/h程度の通過音が挿入されており、なんとも軽快でスピーディ
新時代の鉄道を感じさせたものだが....
実際にはこのキャンペーンソング、スキー列車「シュプール号」などのCMにも用いられて
いたから、その頃の若者は583系などを「新時代の鉄道」イメージとして乗車していた
とも考えられて面白い。
実存する583系の走行音は重厚であるし、車内のデザインなども国鉄的なものであったから
若者たちはCFの華やかでお洒落な鉄道移動とはかなりギャップを感じたに違いない(笑)。
やはり583系は1970年代のロックのように力強く、暖かみのあるイメージ。
なにかに向かって行く時に乗車するアクティヴ・シンキングな乗り物であろう、と思う。
既に深夜。
回想を続けていても車両は淡々と最高速で進行している。
時折、場内進行制限で速度抑止、ポイント通過に車体をふるわせながら。
深夜特急は北を目指す...
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