↑とけい

 いじめは絶対にしてはいけない


 オレンジ色の夕焼けの下

 僕はいじめに加担した


 人っ気少ない帰り道

 大将が白羽の矢を立てて

 なすがまま僕は君にこぶをつくる


 「ごめんね」なんて話せない

 言い訳なんかしか言えない

 それでも君は優しいから

 立ち向かうことはしない

 本当はこんなことしたくない

 本当は君の笑顔が見たい



 「いいえ」は絶対に言わせない


 大将の望むのは絶対服従

 君はその通りに泥水を啜る


 容姿端麗と異型

 運動得意と苦手

 豪邸住まいとボロいえ

 パッと見、大将と君とは雲泥の差で

 けれども、君の方が遥かに上

 君の心は、優しさは

 大将とは比にならないぐらい大きい


 足りない彼は嫉妬して君をいじめる

 広い人脈を利用して君をいじめる


 黒に手を染めた僕は戻れない

 白く光る君はとても美しい

 僕も大将も心が弱いから

 君をこんな目に合わせてしまう

 本心ではこんなことしたくない

 本心に従ってともに抗いたい



 その気持ちはみんなも同じだったみたいだ

 エスカレートしていくのに耐えきれなかった

 次の日、大将に謀叛むほんを起こして

 黒優勢のオセロが白優勢へと変わった

 今度は君に主導権があって

 君は大将をいじめることができた



 なのに、君は最後まで優しかった

 君は大将をいじめようとはしなかった

 例え立場が逆転したとしても


 オレンジ色を背景にして

 路頭に迷う大将に

 優しく手を伸ばす君

 道端に転がる僕は「ごめんね」と言い

 「ありがとう」と続けた

 きっとその言葉は届かないけどね


 それでも


 伝えたかったんだよ

 小粒な見た目の僕にとって君は希望だから

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