10 杯目 声明

SIDE 紘目ひろめ 茉奈まな


 反響は大きかった。SNSでの投稿、ブログの記事双方に膨大な引用や返信が付いていった。会ったこともない実に様々な人がSNS上で意見を述べていた。あまりにも多すぎて追いきれないほどだ。全く新しい概念なだけあって驚きの声が多いものの、まずは広範囲に向かって啓蒙できたという点において、わたしの目論見はまずまずの結果を得たと言える。

 世間から注目される話題は大抵そうなのだけれど、投稿が拡散されるにつれ、不快な内容の返信が届くようになった。文法的に酷く誤っている人、明らかに文章を読んでおらず思い込みで発言する人、わたしと全く異なる考え方で生きてきた人、等々。……わたしを振り回した人々も、その一種だった。


 その返信が来たのは、投稿から二日後だった。業務終了後にブログを見ていると、一文目に「全面的な撤回と謝罪を求めます!」と書かれた返信が来ていた。読むと、うどんを愛する学生集団(自称)からの声明であった。小難しい主張で何だかよく分からないけれど、角の有無でうどんの良し悪しを勝手に判断するな、と言いたいようだ。見慣れない言いまわしを多用するせいもあり、いささか怪文書じみたものだった。わたしは軽く一読すると次の返信を読み始めた。もっと拡散されれば、わたしの元へはこれからどんどんクソリプが送られてくるはずだ。こんなのに関わっている暇はない。

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