第4話 入部と部員紹介______興味

 仮入部期間が終了して週が明けた。いよいよ本入部の日。帰りのSHR《ショートホームルーム》で「入部届」を書いて提出、放課後、書いたものを持って部活に向かう。悠之亮は多目的教室Aに向かった。

「おはようございます。」

 入ると先輩たちの挨拶が迎えてくれた。平田部長は前に座っていた。その両隣には男子がいた。二人とも優しそうだが、左の男子先輩の身長が高いことは座高で分かった。

「荷物は机の上に置いて、入部届をその箱の中に入れて、前に詰めて座ってください。右から、1年、2年、3年になっています。」

「わかりました。」

 入部届を「入部届入れ」と書かれた箱に入れ、1つの机に3人座れるタイプのキャスター付きテーブルが3列、一列に13もの机がもあった。驚くことに、1年で男子は悠之亮だけだっただけだった。悠之亮が座ると、平田部長は腕時計を見て、話し始めた。

「それでは時間になったので始めたいと思います。まず初めに、演劇部に入部して頂き本当にありがとうございます。」

 そして話されたのは、部活動紹介とほぼ変わらなかった。

 部員は3年生1人、2年生11人の12人。部活は月曜から金曜で演劇の大会が近くなると土日もある。活動場所は、多目的A教室、選択教室A・B、視聴覚室のどこかでその都度知らされる。大会と公演前は基本視聴覚室になる。本番に近い形で本格的な劇の練習ができるからだという内容だった。

「次に、顧問の先生からです。林田先生、お願いします。」

 すると、年のいった、かなり頭の硬そうな顔つきの女の先生がきた。

「顧問の林田です。普段は古典の授業を持っています。ウチの部はと言う名目でやっています。演劇というのは、声を出したり、体を使って演技をするための体力がいります。今年から体操、発声練習に加え、外周も加えて行きますので、よろしくお願いします。後は部長に任せます。」

 話終えると、部員全員お辞儀をし、林田先生はそれを見て、三年の列の席に着いた。

「それでは、入部初日なので、みんなで自己紹介をしたいと思います。まず3年生からお願いします。やり方は……。」

「その場でいいんじゃね?」

「そうだね、じゃあその場でお願いします。」

 部長の隣にいた背の低い男子先輩が話して決めた直後に、

「演劇部なんだから前に出て言いなさいよ。」

 と林田先生が横槍を入れてきた。任せますって言ったのお前だろ。悠之亮は心の中で思った。そして、前で座っていた3人が2年生の列の机に座って、前に出ての自己紹介が始まった。3年生は1人だけだった。

「3年の泉彩奈です。役者をやっています。春大会が終わるといなくなってしまいますけど、一年生は短い間になりますが仲良くしたいと思います、よろしくお願いします!!」

 優しそうで話しかけやすそうな雰囲気の人だ。拍手され交代、次は2年生の自己紹介が始まった。

「部長の平田花純です。照明担当です。わからないことがあったらなんでも聞いてください。よろしくお願いします!! 」

 仮入部期間の時とは違い、眼鏡をかけていたので、なんとなく知的に見えた。

「副部長の三井裕也です。演劇部の羽生結弦です。役者担当です。よろしくお願いします。」

 滑っているのは確かだった。

「会計の小島遼です。いつもは役者をしていますが、今回の春大会では舞台監督をやつています。よろしくお願いします。」

 身長が高く、顔も良かった。

「小池遥です。担当は大道具と小道具で、棟梁をやっています。よろしくお願いします。」

 身長が高く、しっかりしてそうな先輩。

小笠蓮おがされんです。担当は役者です。気軽に話しかけてください。よろしくお願いします。」

 背が低く、外国人女性にほんの少し近い顔つきで、とても整った顔だった。あまり見ないようにしていたが、周りの女子達より胸が大きいので、つい目がいってしまう。制服越しでもその大きさを感じた。

早倉天音はやくらあまねです。役者をやっています。よろしくお願いします。」

 柔らかい声で、のんびりとした感じの先輩だった。

「池中茜です。役者と小道具、後メイクを担当しています。なんでかたまに、周りからと言われます。よろしくお願いします。」

 よっお母さん!! と蓮先輩が大声で煽っていた。確かに「お母さん」と言われる雰囲気と体型だった。

「俣野翔です。役者をやっています。野球が好きです。よろしくお願いします。」

 男子の先輩で、天然パーマの感じが少し面白く見えた。仮入部の時にすこし話したが、言うことも面白かった。

中月匡介なかつききょうすけです。役者をやっています。よろしくお願いします。」

 小島先輩と同じくらい背が高くて、顔の堀、声も深い。まるで阿部寛のようだった。

福田柚希ふくだゆずきです。役者と音響を担当しています。よろしくお願いします。」

 眼鏡をかけている女子先輩。男子みたいな容姿をしていて、髪型が特に男子のようだった。女子の制服がスカートで女子だと分かるが、顔だけだったら、男子と間違えそうになる程の顔だ。

 最後の1人は、前に出ると2年の女子達から歓声が聞こえた。

「おぉ!!  みんな注目だよ!! この部活の天使だから!! あそこに天使が舞い降りるから!!」

 中でも蓮先輩が一番騒いでいる。その女子の先輩は恥ずかしそうに前に出た。悠之亮はこの時なぜか鼓動が速くなっていた。嬉しくなると、顔を下に向け、口元を手で隠すのだが、その先輩を見た時に、口元だけを隠した。

「野々村佳奈です。音響を担当しています。気軽に『のの先輩』って呼んで話しかけてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。」

「「カワイイーーーー!!!!」」

 盛大な拍手と共に、2年の女子先輩達が叫んでいた。しかし、その声は、もはや叫び声よりも、絶叫に近いものだった。その時悠之亮は、野々村先輩から視線を外し、少し俯いて、口に当てた拳を思い切り握りしめ、感情を抑えていた。心の中では、先輩達と同じことをしていた。自然で飾らない感じや、話している時の声や表情に悠之亮は釘付けになった。

「では最後に、1年生お願いします。1年生には、希望担当と、意気込みをお願いします。それでは、前からどうぞ。」

 平田部長が言い、1年生の自己紹介が始まった。最初に出たのは、とても背の小さい女子だった。

東奏音ひがしかのんです。役者志望です。先輩達を見て、色々な事を学んでいきたいです。よろしくお願いします!! 」

 背が小さい事ばかり印象に残った。

大金茉莉奈おおがねまりなです。役者志望です。早く先輩達と仲良くなれるようになりたいです。よろしくお願いします。」

 彼女は眼鏡をかけていて、しっかりしてそうな感じだった。

「佐々木舞です。役者志望です。先輩達と劇ができるようになりたいです。よろしくお願いします。」

 彼女も眼鏡をかけていて、大金との違いは髪の長さと色。彼女は黒の長い髪。体型は、少し茜先輩と似ている。あと声が小さい。

小林真実こばやしまなみです。音響志望です。早く機材になれるように頑張ります。よろしく恩願いします。」

 少し変わった雰囲気の、落ち着いた感じの女子。顔が少し前に出ていて、不思議な見た目だった。福田先輩と野々村先輩は静かに喜んでいた。

高窪理央たかくぼりおです。照明志望です。」

「あ!! やったあ!! 」

 部長が甲高い声で喜んだ。すぐさま隣にいた蓮先輩が「うるせぇよ」と、制止した。

「あまり表に立つのは得意じゃないので、裏方で頑張りたいです。よろしくお願いします。」

 いつも笑顔で、1年女子の中で一番背が高く、本人はあまり表に出るのは得意ではないといっていたが、そうでもない感じがした。

「中村真奈です。大道具と小道具志望です。作り方を教わって、劇で出せるようになりたいです。よろしくお願いします。」

 彼女は少し焼けた肌で、動けそうで、何かを作るのは得意そうな雰囲気があった。

高橋陽加たかはしはるかです。役者志望です。色々な演技ができるように頑張りたいです。よろしくお願いします。」

 話し方も、表情も、明るい感じで話していて、すごく演技が上手そうに見えた。

 そして悠之亮の番が来た。何を話そうかは、もう決めていた。

「藤宮悠之亮です。役者志望で、台本も書きたいと思っています。今の僕はマイナスなので、ゼロに向かって行きたいと思っています。よろしくお願いします。」

 読んでいたジョジョの言葉を借りて自己紹介をしたら、意外にも受けていて、悠之亮は安心した。

「それではみなさん。明日から部活が始まります。これからよろしくお願いします!!」

「「よろしくお願いします! ! 」」

 

 こうして部員の自己紹介、演劇部の初日が終了した。悠之亮は眠りにつくまで野々村先輩のことで頭が一杯だった。だが、1年生はこの部活にあるをまだ知らない。

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