第4話 地下牢での出会い
「ヒッ……! 誰!?」
女の悲鳴がぐわんと地下に響く。その声で露骨に機嫌が悪くなったそふかを茶化しながら、八宝菜は歩みを進めた。
「カビ臭いし、鉄格子でいっぱいだし、何か奥の方に拷問器具あるし……いやぁ! 典型的な地下牢だね!」
「別に地下牢と拷問はセットじゃないだろ」
「でも拷問するとき近場にあった方が楽じゃない?」
二人の会話を聞いて、檻の中にいる者たちが震え、怯え始める。
「も、もうやめて!」「わーん! おねーちゃーん!」「大丈夫よ……大丈夫だから……」「おい! 子供たちに手を出すな! 俺にしろ!」「駄目だよ、お父さん! もう体ボロボロでしょ!?」
「ありゃ、何か勘違いされたっぽい?」
「そりゃされるだろうね。君の台詞、完璧に悪役のそれだよ」
「そんなことよりさぁ、あれ見て」
そふかの指摘を雑に流して、八宝菜は檻の中を指差す。
イラッとしたため感情に従って<吸血>した後、吸ったMPで炎を生み出し、照らした。
──そこには、天使がいた。
比喩ではない。確かに彼らは天使だった。
翼は総じて片方だけ捥がれ、不恰好になっており、血や涙、様々な液体で汚くなった服を辛うじて着ているような状態。しかしそれでも、頭上に浮かぶ天使の輪とまだ残っている片翼が彼らを天使と証明した。
(プレイヤーではない、か)
頭上にあるのは天使の輪のみ。プレイヤーネームはない。
「人間至上主義の被害者……」
「で、間違いないと思うよ」
“天使”という種族は神の使いを騙る許しがたき魔物。少なくとも、神皇国の教義ではそうなっている。
「良し! 助けよっか!」
「いつにも増して急だね。君が慈善活動をするとは思えないけど」
「酷くない? わたしのこと何だと思ってるのさ!」
「クズ」
「大正解」
「「助けてくれるの……!?」」
「あ、馬鹿お前……!」
二人の茶番を遮ったのは、鉄格子にしがみついた双子の天使だった。側にいた男が必死に引き剥がそうとするが、幼い見た目に反して力はあるらしい。
「うん、助けるよ。──いや、わたしは君たちを助けに来たんだ」
ニッコリと明らかに何かを企んでいる顔で、八宝菜は笑った。
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