第3話 謁見まで探索とする

 豪雪を潜り抜けた先には、美しい雪国が広がっていた。


 立ち並ぶ家々は白を基調とした壁に、赤や青といった色とりどりの円錐屋根。

 そして中央に聳え立つ城は、雪も霞むほどの純白だった。


 せっかくなので観光したいところだが、ここに来た本来の目的がある。スルーして城へ向かい、一度門番に止められる。が、門番にも話が伝わっているようで、招待状を見せると簡単に通された。


「法皇陛下が是非ともお二人にお会いしたいとのことです。控え室でお待ちください」


 案内を務めるという侍女が一礼し、客室へと促した。


 ──瞬間、二人の視線が合う。もし、ここに他の文芸部員がいれば、「あっ、これ碌なこと考えてないな」と悟っただろう。


「ただ待つというのも退屈だね。城内を見回ってもいいかい?」

「畏まりました。では、私が案内させていただきま──」

「──ちょっとごめんね♡」


 スウッと八宝菜の姿が消え、侍女の姿と重なる。侍女が悲鳴を上げる前に、かくりと膝が折られ、


「<憑依>完了! いぇい!」


 侍女──に<憑依>した八宝菜がダブルピースを決めた。落差がひどい。


「君も大概チートだよね」

「そうでもないよ。<光魔法>の使い手だと弾かれるし、そもそも霊感あったら避けられるしね」


 動作確認とばかりにくるくると動き回る八宝菜。


「それでも、<憑依>先の記憶まで覗けるのは破格だろ?」

「それはそう。……あぁ~」

「どうした?」

「やっぱこのメイドさん、“裏側”知ってる」

「もし、あのまま案内を受けていたら……」

「多分、神皇国にとって都合の良い場所巡りされて終わりだっただろうね」


 それでは楽しくない。二人に国の闇を暴き、正そうとする正義感はないが、人並みの好奇心はあるのだ。言うなれば、単なる野次馬根性である。


 そんなわけで、色々ときな臭い神皇国の内部探索を開始した。


 城の構造の地図などあるわけもなく(あったとしても都合の悪い部分は隠されているだろう)、地道にマッピングを進めていくしかない。


 途中で見回りの衛兵と出くわすが……


「お疲れ様です。メネ様。……おや? 客人はお二人様のはずでは?」

「はい。ですが、希望する行きたい場所が異なっていらっしゃったので、別の担当者が案内しております」

「そうですか。失礼、足を止めさせてしまいまして」

「いや、問題ないよ」


 そふかが寛容に頷き、衛兵が敬礼しているのを横目に通りすぎた。


「君って本当に口が回るよね」

「んふ、まぁそれが取り柄だしね!」


 そうして八宝菜の口八丁でどうにかしたり、


 見張りがいた場合には……


「おや、お客様。失礼ですが、ここから先は関係者以外立ち入り禁止──」

「<凍結フリーズ>」


 そふかが黙らせたりした。


「そふかって結構ごり押しするよね」

「力で制圧した方が簡単なときもあるだろ?」

「そりゃそうだね」


 カツン、カツン、と二人分の足音が響く。地下へ続くであろう石階段を下りながら、この先の話を膨らませる。


「何があると思う?」

「地下牢とかかな」

「わたしは拷問場だと思う」

「それは君の趣味だろ」


 真っ赤な金属製の扉が二人を遮る。錠と鎖で雁字搦めにされているが、それしきでは二人は止まらない。


 重厚な扉を抉じ開けた先には──

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