第5話 片と両
その後の勇者は圧倒的だった。
聖なる力の二乗で次々と化け物を斬り伏せ、斬り捨て、斬り刻んだ。
ぶっちゃけ、途中で魔王が要らなくなったまである。一応
「それじゃあ、お休み」
最後の一匹を両断し、聖剣を鞘に納めた。
「お疲れ~」
「お疲れ様」
「もしかして今回成果なし?」
「いや、余りくらいはあるんじゃないかな。……ほら」
うーめんは推定:
「——地下室のさらに地下?」
「貴重なもの、保管してそうじゃない?」
「よっしゃ行くぞ」
「任せろー」
バリバリと扉を引きはがし、中に飛び込む。流石にもう化け物はいないだろうという判断だ。
床に降り立つ。
八宝菜とうーめんの眼前に広がる光景。それは、無数の眼球だった。
否、ただの眼球ではない。それら全てが魔眼。
先程と違うのは、瓶詰めされた魔眼が、綺麗に棚に並んでいるところだった。
見る者によっては、恐怖を煽る光景。しかし、二人にとっては宝の山。
「うーめん! ここにあるの片っ端から<鑑定>してくれ!」
「いや、他力本願すぎでしょ」
「私の<魂眼>だと魂がある生物のことしか分かんねぇんだよ」
「んー、良さげなのはこれとこれとこれ……かな?」
「おっ、三つもあんの?」
「逆に三つしかないんじゃないかな。私たちが殺した中に、レアそうなのいたからね」
「やめろよ、後悔しちゃうだろ」
「草」
向かい合わせになるよう座り込み、コトンと瓶を三つ置く。
梅鼠色、
「こっちはラズベリージャムみたいで綺麗だね」
「例えがお上品すぎんか?」
「なら、八宝菜はどう思ったのさ」
「動脈血」
「真っ先に出るのそれってやばない???」
「それはそう」
「じゃあ、こっちは静脈血?」
「うん」
「“うん”じゃないが」
朱殷色の魔眼の瓶を持ち上げて言ったうーめんは、何の迷いもなく肯定した八宝菜に呆れ顔になった。
「ちなみに、こっちの鮮やかな赤い魔眼は<
「梅鼠色な」
「梅鼠色の魔眼は<
「魔法で足りる」
「だよね」
純粋な魔法攻撃系の魔眼は、八宝菜もうーめんも活用できないため見送りである。
「私<
「どんな効果なん?」
「ざっくり言うと、魔力の流れを乱すスキルが込められてる」
「……天敵化計画進行中?」
「まぁ、視野には入れてるね」
魔力で魂を覆うことで現世に留まっている
「と、いうわけでよろしく」
「りょーかーい」
うーめんの目を抉った。
<
「おー、ぴったり」
「そう? 良かった
……で、八宝菜はどっちにするの?」
「両方」
「二つも?」
「知ってるか、うーめん。ヒトは目が二つあるんだぜ……」
「違うそうじゃない」
「はよはよ」
「ちゃんと策があるんだろうね?」
八宝菜の目を抉った。
<
「で、どうする気なの?」
「ヒント:魔眼には実体があるぞ!」
「なるほど、<実体化>さえ解けばどうにでもなるってことね……。あれ? でも<実体化>しないと他の人から見えないんじゃ……」
「そうじゃん……」
「え、どうするの?」
「安心しろ、盲目のアバターになったことならある」
「結局、力技じゃないのさ……」
うーめんに魔眼が作用しないよう目を閉じる八宝菜に、再び呆れ顔になった。
「私は慣れてっからいいけど、うーめんはずっと片目だけ閉じてるのめんどいでしょ? そふかに頼んで眼帯つくってもらおうぜ」
「そふか君って裁縫師なの?」
「うんにゃ? リアル技能」
「女子力高いな……」
「あいつ何でもできるから」
「君は何でもするけどね」
「おめーも大概だろ」
抉った八宝菜の片目を弄ぶうーめんと、うーめんの片目を握りつぶす八宝菜。
「本人の前で容赦ないね」
「え? あぁ、無意識」
「無意識でそれやる???」
そうは言っておきながら、目の前で自分の眼球を潰されても、うーめんは平然としている。どころか、「さっさと帰ろー」と梯子を先に登って行った。
八宝菜も後に続き、ついでに地下室を魔法で破壊したところで、
「…………………………………あっ」
「え、何?」
「番長のお土産として取っとけばよかった……」
「あ」
魔眼採取、これにて完了。
「後味わっる!!!!!!」
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