第2話 イケメンな男装の麗人
「よぉ、貢がせてくれ」
「アバター見た第一声がそれってどうなの???」
待ち合わせ時間の十分前に梅原——プレイヤーネーム:うーめんが来ると、待ち合わせ時間の一時間前には待機していた八宝菜が金を差し出した。
うーめんのアバターは黒髪に緑のインナーカラーの男装の麗人である。八宝菜とお揃い(と八宝菜は強く主張した)の赤目で、白いシャツに黒のベストとスラックスに裏地が赤のマントを羽織っていた。底の低い編み上げブーツを履いており、腰には双剣を携えている。八宝菜は「私より魔王っぽいじゃねぇか……!」と戦慄した。
「ねぇ、普通にアバター作ってるの見てたよね?」
「実際に完成品を見て、動いてるのを確認したのは初めてだから初めて」
「日本語下手??? ゲーム実況動画見て予習しまくってるけどプレイするのは初めてだから実質初見って言ってるのと同じこと言ってるよ今」
「例えが分かりやすい」
「八宝菜に合わせたからね。てか、前に八宝菜が言ってたことだしね」
ぐいぐいと押し付けられる金を押し返しながら、二人は目的地へと向かった。
「あ、そうそう。私は別に引かないから、素のままでいいよ」
「ん?」
「え、何?」
「私、引かれるかもしれないから素出してないわけじゃないで」
「へぇ?」
「ぶっちゃけ、今ではどっちも素だし。つーか、引かれる云々だったら今更すぎるだろ。部室でグロゲーやった時点でアウトじゃ」
「じゃあ何で?」
「んー。……適応させた結果?」
「何で疑問形?」
「もしくは、はっちゃけられるところではっちゃけておきたかったから……? いや、楽しみたかっただけかもしんない」
「自己分析下手???」
「それはそう」
目的の詳細に一切触れず、雑談を交えて歩を進める二人。さらに言えば、八宝菜は目的地が進行方向の先にあるのかどうかさえも知らない。
「着いたよ」
「うん、ここどこ?」
「
「いや、そういうことではなく」
王国から南に位置する帝国、その植民地にて。ボロボロで今にも崩れそうな木の一軒家を前に、八宝菜とうーめんはようやく情報の摺り合わせをしていた。
「言っとくけど、私そふかと行動してて北ら辺ずっとうろうろしてたから、帝国のこと何も知らんよ?」
「え、そっから?」
「そっから」
うーめんはどうやら、帝国を中心に行動しているらしい。そこで最近、噂になっているのが
魔眼というのは、極僅かな人間、または人外が生まれたときから持つ、能力を宿した瞳を指す。それを好んで収集する殺人鬼の存在が現在、帝国内で平民、貴族問わず噂されていた。
「私は正確に言うと、まだ勇者見習いでね。勇者としての実績を積んでる最中なんだよ」
「あー、何か言ってたねぇ。“助けてください勇者様!”とでも言われたん?」
「ご名答」
ここで断ったら確実に何らかの支障がある、と確信したうーめんは二つ返事で解決を約束したのだった。
「勇者になれなくなるのも困るからねぇ」
「私は困らないけどね。主に天敵が増えるという観点で」
「あれ? 勇者と魔王の間に確執はなかったんじゃなかったっけ?」
「ヒント:聖剣にはアンデットを滅する力があるぞ!」
「それヒントじゃなくてアンサー」
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