第7話 システムの恩恵
「と゛う゛し゛て゛レ゛ヘ゛ル゛か゛追゛い゛越゛せ゛な゛い゛の゛ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「うるせぇ……」
ぎゃんぎゃんと泣き喚く(
「別にレベルくらい良いだろ? 僅差なんだし」
「良くない!! やだやだ!!! わたしが負けず嫌いなの知ってるでしょ!!!」
「それは……まぁ」
幼馴染の二人はお互いの性格を知り尽くしている。よって、こんなときに喚いている八宝菜を
「(´;ω;`)ブワッ」
「泣くな泣くな」
「(´;ω;`)ぴぎぃ」
「鳴くな鳴くな」
段々慰めが雑になるそふか。放ってどっかに行かないのは、一応そふかの慈悲である。一応親友なので、一応
「まだまだ時間はあるんだし……」
「残念ながら時間切れなんよなぁ」
「あ」
ピピピと八宝菜とそふかの脳内に響く音。現実時間に合わせて設定したタイマーが鳴ったということは、ゲーム内での残り時間はあと十時間になったということだ。
「いやー、この機能ありがたいね。時間忘れずに済むし、脳内に直接伝わる感じがまるで幻覚っぽくていい」
「僕は苦手かな。異世界ファンタジーなら、ファンタジーの世界観を突き通してほしいね」
「そこら辺、そふか
先程まで泣いて喚いていたとは思えないほど、楽しそうにけらけらと笑いながら、八宝菜は目を
「? ……どうかしたのかい?」
「……ん? あぁ、皆にメッセージ送ってるだけだよ。目ぇ閉じてんのは、文章考えるとき視覚から情報入ってくると混乱するからやってるだけ」
「……誰とも会ってないのに、どうやって?」
メッセージを送るのはフレンドにならないとできないはずだ。八宝菜とそふかはフレンド登録を済ませてあるが、他の部員とは一度も会っていないため、登録はしてない。
ならどうして……とそこまで考えたところで、はたと気づく。
「もしかして、本体を同期させたらメッセージを送れるようになるのか……?」
「んぁ、いや、うん、そうだけど。……えっ、分かってなかったん? じゃあ、何のためにやったと思ってんのさ」
「部員全員のキャラメイクをするため」
「わたしがそんな自分の利益だけを優先させる人間だとでも!?!?」
「うん」
「即答で草」
十時間を少し過ぎて、そふかは手に持つ氷の短剣を消した。
「俺は、……僕はもうログアウトするけど、君はどうするんだい?」
「時間ギリギリまでレベ上げ」
「お疲れ」
「疲れるぅ!!!」
そふかがログアウトすると、そふかのアバターは魂が抜けたように目から光が消え、洞窟の壁を背に座り込んだ。
「じゃあ、雲日。そふかの護衛よろしく」
「ピピュピュジー!」
バサッと羽を広げながら鳴いて答える雲日を見て、満足そうに頷きながら、これからの苦行に別の意味で目から光が消える八宝菜だった。
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