第8話 宇宙の種

「ところで、あなた様は、宇宙と人間との関係について深く想いをめぐらせたことはございますか。こちらの世界の人々は、歴史のはじまりとともに果てなき宇宙に想いを馳せ、またその無窮の広がりに恐れ慄いてまいりました。けれどもその都市では、宇宙は人体に収斂されるもの、すなわち宇宙の果てと人体の奥深くは無限の螺旋を描くものであると考えられております。彼らの思想を伝える古い民謡をお聞かせいたしましょう」


樹木は宇宙に向かって伸びる

まるでその秘密に触れようとするかのように

長い時間をかけて 宇宙の淵まで背を伸ばす

その淵から透かし見る私の瞳には

宇宙はひとつの黒い点と映る

私はようやく気がつく

その黒い点が

故郷の透明な孔雀の糞であることに

私の身体の中心に植えられた

黒々とした種子であるということに

宇宙の淵の先端は

私の淵へと続いている

宇宙と私をつなぐ透明な道を

一羽の孔雀が優雅に羽ばたく

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