時々言葉が亡くならないかと本気で願うのに、言葉でしか表現する術がなくて哀しくも使うのだ




 大丈夫。

 この疑問に対する返答の選択肢は、多く設けられているようでその実、二つしかないのではないかと思う。

 大丈夫。

 口を閉ざす。


 純粋なる気遣いでも。

 その内話してくれるようになってくれるとの些細な願望でも。

 この子は他の人とは違い何か世に変化をもたらしてくれるのだから今はこうしているだけすごいわとの狂った信奉でも。



 大丈夫、大丈夫、大丈夫。

 月の石はいつしかヘドロへと容を崩す。

 己を腐食させていく。



 親だけが原因ではないのは、重々承知しているのだ。

 けれど、どうか、心に刻み付けてほしい。

 親が主軸に在ることを。

 そのまま、主軸にするにしても、多くの副軸に変化させるにしても、抜き取るにしても、一生付きまとう存在であると。

 





 大丈夫あなたは私が居なくても完ぺきな私が居るから。

 そうやって、捨てられても。

 私はあなたをまだ捨てられない。

 捨てる方法を知らないから。

 捨てたいのかどうかさえわからないから。








 知りたくて、答えを。だから、無礼を承知で話しかけたのかもしれない。

 森の中。地面にへたり込んでいるお姫様に。




 

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