クオリア

触った月夜は手をすり抜けてく

未来を展望するより綺麗で

飾って 偽って 微睡まどろんでいても

終わりが来るまで志半ば


何回だって話をしよう

形そのまま忘れないように

論客の野次 挟まないままで

揺蕩たゆたう夢で交わしていこう

対価を越えて寄り添えるように

掛け値なしにして


代わり映えのない傘の下で

それぞれの空をただ眺めていた

行き交う身体が引きる影

気付かない間にも重なってた

臆病で 尊大な 慟哭どうこく

誰よりも僕を測りかねていた

何ができるかな

高尚で 傲慢ごうまん鴻鵠こうこく

何よりも僕を照らし合わせてた

僕でいられるなら


騒がしい朝に街は息を

遠巻きに眺め俯瞰ふかんを決め込む

好いて 嫌って キャンバスみたいに

誰の姿も意のままに染めて


何回だって話をしよう

正しい色へ塗り替えるように

手持ちではまだ足りない絵の具

さきわう筆で描いていこう

災禍も余さず見据えるために

鮮やかさに向け


歩みがいのない道と定め

それぞれのかすがいを羨んでいた

賑わう僕らが意味する影

つつがないように見せて守ってきた

臆病で 尊大な 慟哭に

誰よりも僕を許しきれずいた

何が言えるかな

凡庸で 謙譲けんじょう燕雀えんじゃく

何よりも僕を照らし合わせてた

誰といられるかな


たばかそしり 互いを組み上げ

満たしてきたものを何と呼ぶのか

勝ち負けなんて そんな生き方を

望んだわけじゃないのに


代わり映えのない空の下で

それぞれの傘をただ掲げていた

つま先を向ける道の先に

振り上げた拳より価値を見たい

臆病で 尊大な 慟哭に

誰よりも僕らを描き染めていた

何ができるかな

鴻鵠で 燕雀な 胸臆きょうおく

何よりも僕を僕たらしめてきた

何が言えるかな


僕でいられるなら

誰といられるかな


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