径庭

解けた靴紐の色を

初めて見たような気がした夜のこと

隣に並んでいたのは

何色なのか思い出せやしないけど


君の淹れすぎたコーヒーを 余すことなく飲み干せば

全てわかるような気がしたなんて言えなくて

誰を傷付けてきたのか 何に傷付いてきたのか

忘れられないほど何も知らないからさ


散々空は見慣れているのに

感情の浮かばない冷めた光景だ

綺麗であるはずがないじゃないか

街灯の道を歩み進めても

十字路で区切られた僕らの世界は

交わるその場所だけに見えたんだ


数えようとしないほどの

小さな幸せなど花びらに思えて

道の隅に舞い落ちては

土色に染る姿さえ留めない


冴えない笑顔に囲まれて 絶えない憂いに誘われて

いつか描いた理想にただ縋るばかりだ

空に見つけた砂時計が 落ちた砂を隠して消えた

いくつ残っているかだけを知りたくて


満ち足りた心を砕いたのは何か

論争に至らないほどに明解だ

所以が君なはずないじゃないか

どうやって声を繋いでいくのかを

忘れてはいないから僕らは歌える

そのやり方を君だけは知っていた


ねぇいつからか どうして こうして

笑っていられる僕らになったって

君は気付いているかな

何も分からないままでさ

それでも君に幸あれだなんだって

花を贈るよ


青い一文字を覚えていますか

君が色づかせた光景だ

綺麗でないはずがないじゃないか

どこにいても無くさない温度を

こうやって君からいつでも教わった

満ち欠けて揺れる音のない月が

不器用に泣き笑う僕らに似ていた

結んだ靴紐が見ていたんだ

街灯の道を歩み進めても

十字路で区切られた僕らの世界は

交わるその先にまで見えたんだ


正解から-0.03 正解から-0.03

正解から-0.03


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