第2話

「もう字数が少ない。強行突入だ!」

  

 隊員たちは強行突入を開始した。

 強行突入である。具体的にと言われても、強行突入としか言いようがない。


「隊長。この部屋に人質が…。しかし、もう3文字しかありません」





「助けるぞ」


「え?」

 

「助けると言ったんだ」

「しかし…。国際法違反ですよ!?」


 隊長は、手にしていたバズーカ砲を、固く閉ざされたドアに向かって構えた。


「知ったことか」

 そう呟くと、彼は、全身でその引き金を引いた。


 ドッカーーーーーーーーアアアーーーーーーーーあぁぁぁぁぁンンんんん。


「字数制限事件担当特別機動隊だ!テロリストども神妙にしろぃ!」

「ナニ?〝ジセイタン″ダト?」

「隊長!?その名称だと長いから、字数削減のためにCLRPって言わないといけないんじゃ…」

「ぃやかましいわい!」

「隊長…」

「ぼやぼやするな!不忠をはたらく極悪非道のテロリストどもを生け捕りにするのだ!!」

「はいっ!」

「オーノー!オマエタチ、コクサイホウヲシラナイノカ!?」

「テロリストが言うなよ…」


 その後、隊員たちとテロリスト集団との間で、激しい銃撃戦が繰り広げられた。

 ある者は仲間のため、ある者は家族のため、そしてある者は、自分の信念のため。惜しむことなく、ダダダダダ、バンバンバンと銃撃音を響かせた。

 彼らは、まるで、今まで自分たちを縛ってきた呪縛から解き放たれたようであった。なんとも元気で、生き生きとしていた。


「報告します。実行犯12人のうち、7名を逮捕。残り5名は死亡。こちらはけが人が三名。死者が一名です」

「そうか…」

「ですが、人質は全員無事です。いやぁ、どうなることかと…、失礼しました。報告は以上です。」

「かまわないさ。もう任務は終わった。それに…、いつの時代も、人間が人間らしさを失ってはならん」

「は、はあ」


「ところで、何文字オーバーだ?」

「さあ?5文字ぐらいじゃないですか?僕たち頑張ったし」


 夕暮れの赤坂に、二つの笑い声が灯った。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

緊急指令 500文字以内に人質を救出せよ 源義史 @yoshifumi_minamoto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ