ギャルと、ナイトプール

「徹さん、お昼はすいませんっした」

「いいって」


 夕飯は、プールのフードコートを利用する。

 結愛さんは特盛りの焼きそばを、ボクとシェアした。


「今日は楽しかったわ。一生の思い出にする」

「大げさな。だけど、ホントに楽しかったなあ」


 町田カップルは、中華をあーんし合っている。

 マオちゃんと栄子は、肉厚ハンバーガーをメインにサラダとポテトをチョイス。


「ここって、ライトアップされたプールがすごいんですよぉ。といっても、ウチらはガキなんで、すぐ帰らないとなんですけどぉ」


 それでも、星とカラフルなライトに照らされたプールは幻想的だった。

 エアーマットの上で二人座りながら、ボクたちは星を眺める。


「おい、徹」

「はい?」

「この空ぜーんぶ独り占めって、すげえな」

「ですね。日本じゃないみたいです」


 マットの上で、ボクたちは手を握り合った。

 でも、この時間は決して永遠ではない。


「もっと遊びたい!」

「ガマンよ、マオ」

「だってぇ、ギャルといえばナイトプールっしょ!」

「それでも帰らないと」


 栄子に諭され、マオちゃんは渋々ナイトプールから上がる。

 着替えを終えて、退場門に集まった。

 マオちゃんは「まだ遊び足りない」と言っておきながら、下柳さんに負ぶってもらっている。


「楽しかったのね」

「洋海さん、今日はありがとうございました」

「いえいえ。夏はこれからよ。遊んでくれてありがとう」


 栄子に別れを告げて、下柳さんは町田と手を握り合う。

 家の前に辿り着き、ボクは栄子を先に帰す。


「じゃあ、ボクは結愛さんを送るから」

「気をつけるのよ」

「大丈夫だよぅ」


 コンビニでアイスを買って、結愛さんと手を繋ぐ。


「ナイトプール、またやりたいな」

「ウチの庭なんてどうでしょう? 一応、ビニールプールがあるのですが」

「いいな。ご家族のお邪魔じゃなかったら、遊びたい」


 結愛さんは、目をキラキラさせた。


「どうぞどうぞ。家族も、結愛さんのこと気に入ってくれたみたいなので」

「ホントか? こんなナリでも?」

「うちは、人を見かけだけで判断しないので」

「ありがと。じゃあまたな」

「あの、それなんですけれど、もう少し、寄り道しませんか?」


 ボクは、誰もいない公園へと結愛さんを誘う。


「どうした、徹?」


 結愛さんの言葉に、ボクは口づけで返す。


「ごめんなさい。ファーストキスは、突然だったので。ボクからもちゃんとやらないとって思ったんです」


 瞳を潤ませて、結愛さんはうなずいた。


「ありがと、徹。好きだ」

「ボクも大好きです、結愛さん」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クラス1凶暴なギャルが、ボクにだけ優しい。 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ