第36話
家に帰ってきた俺は紅愛の太ももを枕にしてソファに寝転がっていた。
「前からずっと思ってましたが蒼太くんは周りを気にしすぎです」
俺の頭を撫でながら紅愛が言う。顔は見えないが、声色からして不満そうにしているに違いない。
「……そうかな?」
「はい。大体なぜ周りに受け入れられないと駄目なのですか?私達が付き合おうと周りには関係ないではありませんか」
「紅愛の言う通りなんだけどね……やっぱりこう…気にしちゃうんだよ。客観的評価って言うかさ、周りから見て俺って紅愛の彼氏としてどうなんだろって」
もし仮に付き合った人が紅愛じゃなかったらここまで気にすることもなかっただろう。だが俺が好きになり付き合ったのはあの高嶺の花、篠崎紅愛なのだ。男子達にとって紅愛はただの女子生徒ではなく、文字通り高嶺の花だった。そんな紅愛を堕としたとなれば、その男に注目が集まるのは当然のことであり、評価されるのも仕方がないことであった。
まぁそれを気にするかしないかは俺次第であり、俺は前者であったというだけの話だ。その結果があの醜態なのだけれども。
「ふぅん……ちなみにもし受け入れられてなかったらどうしてたんですか?」
仮定を嫌う紅愛にしては珍しくそんなことを聞いてきた。
「もっと努力したよ。紅愛に相応しいって思われるまで」
それに対して俺は顔を上げ、紅愛と目を合わせて迷いなく告げた。
明さんの時と同じだ。今の俺で駄目ならもっと頑張って認めてもらう。
「……っ///そ、そうですか///」
俺の真剣さを感じてくれたのか、恥ずかしげにしながらも嬉しがる紅愛。
「照れてるの?」
「だって……かっこよかったんですもん///」
可愛い。思わず腕を伸ばし、少し赤く染まった頬に触れる。しばらくすると紅愛は俺の手の上に自らの手を重ね、すりすりと頬擦りを始めた。と思ったら突然ため息を吐いた。
「はぁ……せっかく蒼太くんを慰めようといっぱい甘やかすつもりだったのに。これでは必要無いではありませんか」
「え〜、なんか急に元気なくなってきた。甘やかしてよ紅愛」
「もう…しょうがないんですから」
そう言って俺の体を抱き起こす紅愛。何をしてくれるのだろうかと思った瞬間、俺の視界は柔らかい何かによって封じられた。勿論、柔らかい何かとは紅愛の胸のことである。着けてないのかその柔らかさがダイレクトに伝わってくる。
「おぉ…最高……」
「ふふっ、蒼太くんのおかげでまた少し大きくなったんですよ?分かりますか?」
「うーん……」
「むっ、さてはあまりピンと来てませんね。そんな鈍感蒼太くんはこうしちゃいます」
「んむっ!?」
頭に回された腕に力が入り、さらに強く押し当てられる。男としてはこれ以上ないほど幸せなのだが、如何せん呼吸がしづらい。
「んぅー…ッ!」
そろそろ危なくなってきたというタイミングで紅愛が腕の力を弱める。それに合わせて顔を離し、息を大きく吸った。
「ぷはっ……すぅ、はぁ、彼女の胸の中で死ぬとこだった」
「流石に死なせませんよ。まったく……で、どうでしたか?分かりましたか?」
「んー……正直大きくなったかなぁ?って感じだった」
「……」
正直に答えると紅愛がジト目を向けてきた。
「ごめんって。今度からはしっかり分かるように努力するから」
再び胸を押し当てられる予感がしたので慌てて謝る。しかし紅愛の返事がない。相当怒っているのかそれとも呆れているのか、どちらにせよ非常にまずい事態だ。
「は、ハグしてもいい?」
「……」
「失礼しまーす……」
恐る恐る紅愛を正面から抱き締める。
「……ぷっ、うふふ、あはははは」
ぎゅっと抱き締め、髪を梳くように撫でると突然紅愛が笑い出した。
「…紅愛?」
「ふふふっ、冗談ですよ蒼太くん。胸も蒼太くんが言う通り触って分かるほど大きくなってません。少し意地悪をしてしまいました」
「もぉー、それならそうと早く言ってよぉ」
「んふふ、ごめんなさい」
笑いながら抱き返してくる紅愛。
「ふぁぁ……」
紅愛を抱きしめていると、抱き心地の良さと温かさについ欠伸が出てしまう。
「眠くなっちゃいましたか?」
「うん……少しね」
「では続きは一眠りしてからにしましょう。さっ、ベッドに行きますよ」
紅愛に手を引かれて寝室に移動する。ベッドに横になった俺は紅愛を抱き締めながら瞬く間に眠りに落ちた。
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