第32話
「何してるんですか?」
「雅紀からゲーム借りたからやろうかなって。もう少しで準備終わるから紅愛もやってみる?」
「はい」
ケーブルを繋ぎ、電源ボタンを押すと、テレビにゲーム画面が映し出される。今日遊ぶゲームは初心者でも楽しめる某レースゲーム。
隣に腰を下ろした紅愛にコントローラーを渡し、キャラクター選択の画面へ進む。
「好きなの選んでいいよ。選ぶ時はスティックで動かしてこのボタンで決定ね」
「んー、ではこのキャラで」
紅愛が選んだのはキノコ頭のキャラクター。ちなみに俺は王冠をかぶった大きなお化けだ。キャラクター選択が終われば、次はカートの選択に入る。お決まりのカスタムをささっと選び、紅愛が選択するのを待つ。
「……これにします」
しばらくして紅愛も選び終える。コース選択の画面に移るが、ギミックの少ない初心者向けのコースを選び次に進む。
「前に進むのはこのボタン、アイテムはここでドリフトはここ。まずは軽くやってみよっか」
「はい」
雲に乗ったキャラクターがカウントダウンを始める。本来はカウントダウンに合わせてアクセルを踏むとスタートダッシュが決まり有利になるのだが、今回は紅愛に操作を教えるために併走するのでスタートダッシュは決めない。そうしてカウントダウンが終わり、NPC達がスタートダッシュを決めて進む中、俺達はゆっくりとコースを走り始める。
「今のは何ですか?」
「あれはさっきのカウントダウンの途中でアクセルを踏むと出来るよ。あ、そこの四角いやつがアイテムね。何が出るかはランダムだけどこの順位だとキノコかな」
くるくる回っていたスロットが止まり、紅愛のキャラクターがキノコを手に持つ。
「あ、キノコが出ました。アイテムはここのボタンでしたよね?」
「そうそう」
「わっ、加速しました」
勢い余って紅愛がダートに突っ込む。驚いた様子が可愛らしくてつい頬が緩む。
「キノコみたいな加速アイテムはそういう減速する場所で使うとショートカット出来るよ」
「なるほど……こうですか?」
「そうそう!上手だね紅愛」
紅愛がキノコを使ってショートカットを決める。やはり理解が早い。その後もドリフトなどを教えたがすぐに紅愛は物にした。そうして色々教えながら一つ目のコースを完走する。
「これで大体は教えられたかな。もう一回聞きたいところとかある?」
「いえもう大丈夫です。ふふっ、こういったものは初めてですが案外楽しいですね。あっ、蒼太くん、次のレースから順位が下の人は言う事を何でも一つ聞くということにしませんか?」
「いいけどそれって俺の方が有利じゃない?いいの?」
紅愛の提案は決して初心者のするものじゃない。どのゲームにも言えることだが初心者が経験者に勝つ可能性は限りなく低い。それでも勝算があるということなのだろうか。
「えぇ。構いませんよ。では始めましょう」
「あっ、あっ、ゴールしちゃ駄目です!あぁ!?」
「ふぅ……あっぶな」
紅愛の投げた赤い甲羅から逃げ切り、何とか一位でゴールする。紅愛は二位でゴールイン。紅愛の急成長っぷりに驚かされてしまう。これでもそこそこ自信があったのに。
「も、もう一回やりましょう!」
紅愛が悔しさを滲ませた表情で言う。まずいな。正直に言うともうちょっと余裕だと思ってたから、今かなり焦ってる。一旦落ち着こう。
「いいけどその前にお願い聞いてもらおうかな。喉が渇いたからお茶持ってきてくれる?」
「分かりました!」
紅愛をキッチンへ向かわせて時間を稼ごうと思ったらすぐに帰ってきてしまった。
「緑茶でもよろしかったでしょうか?」
「うん、ありがとね」
紅愛からコップを受け取り、一口飲んでテーブルに置く。そして紅愛が座ったのを確認してからボタンを押し、次のレースを開始する。
このコースは通称前張りコースと呼ばれており、前に出れば出るほど強いコースとなっている。スタートダッシュを決め、一位を維持しながらコースを走っていく。
順調に進んでいき遂に迎えた最終ラップ、ここで悲劇が起こる。
「赤い甲羅が三つ!蒼太くんを狙い撃ちです!」
「えっ!?ちょっ、アイテムないし、それは待って!」
「問答無用です!」
紅愛が引いた赤甲羅三つによって大幅に距離を縮められる。さらに、
「うわっ、甲羅投げたやつ誰だよ!…ってまずい!抜かれるって!」
緑甲羅も被弾する。これによってすぐ後ろに紅愛が迫ってきた。そして紅愛のキャラが手にしているのは赤甲羅。あっ、終わった。
「えい!」
可愛い掛け声とともに放たれた赤甲羅に被弾。それによりゴール直前で追い抜かされてしまう。巻き返すことも出来ず、そのまま紅愛がゴールする。
「や、やりました!蒼太くんに勝ちました!」
「嘘でしょ……」
「ふふ〜ん♪何をお願いしようか迷っちゃいます♪」
……まぁ、上機嫌な紅愛が見れたからよしとしよう。
「……決めました!蒼太くん、このお店が先週からカップル限定のメニューを発売しているんですけど行ってみませんか?」
紅愛がスマホで見せてくれたのは駅近くにあるカフェが最近発売したカップル限定のデザートの写真だった。
「ん、じゃあ着替えて行こっか」
「はい!」
ゲームを片付け、身支度を整えた俺達はそのカップル限定のデザートを食べに出かけた。
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