第31話

「……38度。風邪だね」

「うぅ……」

「今日は安静にしてよっか。学校にも連絡入れとくね」


 体育祭の余韻が抜けてきた6月の半ば、紅愛が風邪をひいた。恐らく体育祭に関係した生徒会の仕事などで疲れが溜まっていたのだろう。


「ごめんなさい蒼太くん……」

「謝らなくていいから。何か欲しいのある?」

「……子供」


 赤くなった顔の半分を毛布で隠しながらボソッとふざけた事を言う紅愛。チラチラとこちらに期待の眼差しを向けているが怒られたいのだろうか。


「そんな冗談が言えるなら看病しなくてよさそうだね」

「う、嘘です。看病してください……えと、薬と水が欲しいです」


 俺の怒りを察した紅愛が顔を出して慌てて訂正する。最初からそう言ってくれればこちらも怒らなくて済むのに。


「ちょっと待っててね」


 寝室を出て風邪薬と水を用意して戻ってくる。風邪の時は冷たい飲み物は体に悪いと聞いたことがあるので新しいペットボトルの水を用意した。


「持ってきたよ」

「ありがとうございます」


 上半身を起こした紅愛に薬と水を注いだコップを渡す。


「………ふぅ」


 空になったコップを受け取ると、再び紅愛が横になった。


「寝る?」

「そうですね。そうさせていただきます……」


 そう言って目を瞑る紅愛。しばらくすると寝息が聞こえ始めた。


「……よし、学校に連絡入れるか」


 この後、学校に連絡を入れたり、白湯を作ったり、慣れないながらもお粥を作ったりして紅愛が目覚めるまでの時間を潰した。






「…ん……」


 あれから3時間ほど経ち、紅愛が目を覚ました。


「あっ、起きた?おはよう。体調はどんな感じ?」

「まだ辛いです…」

「熱測れる?」

「はい」


 体温計を渡して熱を測ってもらう。数十秒後、ピピピ、と音が鳴った体温計を確認する。


「…37度8分。まだ下がらないね。あっ、お粥作ったんだけど食べる?」

「えぇ、少しだけいただきます」

「分かった」


 サイドテーブルに置いたお粥の入った茶碗とスプーンを手に取る。


「自分で食べる?それとも食べさせた方がいい?」

「勿論食べさせてください。あーん……んっ、とても美味しいです」


 紅愛の感想に胸を撫で下ろす。


「良かった。一応味見はしたんだけど自信がなくてね」

「蒼太くんが作ってくれたんですもの。美味しくないわけがありません。あーん」

「あーん」


 少しだけと言っていた紅愛だが、結局、茶碗一杯分のお粥を食べてしまった。


「ふぅ……ご馳走様でした」

「お粗末様でした」

「いえ、美味しかったですよ。また食べたいです」

「おかわりはまだあるからね。欲しかったらいつでも言って」

「えぇ、んっ……あの、蒼太くん。私の部屋から着替えとタオルを持ってきてくれませんか?」


 紅愛のそのお願いに一瞬だけ疑問が浮かんだがすぐに理解した。


「…汗かいた?」

「……はい///」

「下着もいる?」

「あ、ショーツだけお願いします……」

「ん」


 二階に上がり、紅愛の部屋に入る。辺り一面に俺の写真が貼ってある、他人が見たら恐怖するような部屋だが、そこは愛されていると思って受け入れている。そんな紅愛の部屋のクローゼットからパジャマと下着を取り出して部屋を出る。タオルは洗面所から適当に持っていく。


「持ってきたよ」

「あっ、ありがとうございます……って、蒼太くん?タオルを渡してくれませんか?」


 タオルを渡さない俺に困惑する紅愛。意地悪で渡してないわけじゃないぞ?


「俺が拭いてあげるよ」

「……い、いえ!大丈夫です!私今すごく汗臭いですから!」

「そんな事ないよ。それに背中とか拭きづらいだろうし何より病人にそんなことさせられないよ。俺に任せて……脱がすよ。はい、バンザーイ」

「あっ……///」


 抵抗する暇を与えず両腕を上げさせ、服を脱がす。続いて紅愛の体の後ろに腕を回し、ブラのホックを外す。あっという間に紅愛は上半身裸になった。白く滑らかな肌、程よい大きさの胸、細く引き締まった腰。相変わらずいつ見ても美しい。


「うぅ……///」

「拭いてくね」


 紅愛の横に腰を下ろし、汗を優しく拭き取っていく。首、背中、腕、腋、胸、腹と隅々まで丁寧に拭いていく。


「んっ…あふっ……」


 時折漏れる色っぽい声に理性を削られながらも上半身を拭き終える。パジャマを着せれば上は完了だ。


「ふぅ……次は下だね。脱がせるから少し腰を持ち上げてくれる?」

「はい……///」


 紅愛が腰を持ち上げている間にズボンとショーツをさっと脱がせる。わぉ……これは非常に刺激が強い。ムレッムレである。持つかな俺の理性。


「は、早く拭いてください///」

「ごめんごめん。今拭くよ」

「あっ……んんっ!」


 右脚を軽く持ち上げて太ももから足首にかけて拭いていく。煩悩滅却と心の中で唱えながら左脚も拭き終え、着替えも済ませると紅愛は横になった。


「寝る?」

「はい。でも、一つだけお願いが」

「何?」

「私が寝るまでの間でいいので、手を繋いでくれませんか?」

「いいよ。それと寝るまでと言わず寝てる間も繋いでるよ」


 紅愛と手を繋ぐ。


「ありがとうございます…ふぁぁ……」

「おやすみ」

「ふぁぃ……」


 数分もしないうちに紅愛は眠った。そして俺も慣れないことをしたせいか、いつの間にか座って寝てしまっていた。








「…ぁ、寝ちゃったのか。紅愛は……」


 ベッドを確認すると紅愛が目をぱっちりと開けてこちらを見つめていた。


「おはようございます」

「おはよう……熱測れる?」


体温計を渡そうとすると、


「既に測っておきました。37度4分です。快調とは言えませんが十分元気です」


と言われたのでサイドテーブルに体温計を戻す。


「それでも今日は安静だよ」

「分かってます。蒼太くんに迷惑をかけたくないですし大人しくしています」


 その言葉通り、その後も紅愛はベッドで大人しく過ごしていた。おかげで翌日にはすっかり治り、元気な姿を見せてくれた。


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