第23話

こんにちは。お久しぶりです。誤字脱字あったら教えてください。

それでは本編どうぞ

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 土曜日、俺は紅愛の両親との初めての対面に臨んでいた。緊張で震える脚を手で押さえつけるが手まで一緒に震えてしまう。


「君が蒼太くんか。娘が世話になっているね。私は篠崎明しのざきあきら。見ての通り紅愛の父親だ。こう見えて40代前半なんだよ。たまに年齢詐称と疑われるけどね」

「あら〜かっこいいわねぇ。私は紅愛ちゃんの母親の篠崎紅葉しのざきくれはよ。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします……」


 今日ほど紅愛という美少女が生まれてきたことに納得してしまった日は無いだろう。そう思わせるほど篠崎夫妻は美男美女だった。

 明さんは疑う人の気持ちが分かるくらい童顔でとてもじゃないが40代前半には見えないし、 紅葉さんに至っては紅愛の姉と言われても納得してしまうほど若々しく綺麗だった。


「か、神谷蒼太と申します……えっと、紅愛さんとはお付き合いさせていただいてます」

「ふっ、そんなに畏まらなくていいよ。もっと気楽にしてくれ。それでだが蒼太くん。娘とはどこまで行ったんだい?」


 明さんが興味津々といった様子で聞いてきた。紅葉さんも気になるのか目をらんらんと輝かせている。


「えっと……その、か、体の関係まで持たせてもらったというか」

「なるほど。紅葉、君に似て紅愛も随分と積極的みたいだな」


 ……ん?紅葉さんに似て?


「そうねぇ。あなたと肉体関係を持ったのっていつだったかしら?」

「確か高校の入学式の時じゃなかったか?ほら入学記念ということで」

「そうだったわ。青春だったわよねぇ」


 え?早くね?

 隣の紅愛を見るが俺と違って驚いている様子はない。むしろもっと早く俺と関係を持っておきたかったというような後悔の念がその表情からは読み取れた。


「……とまぁそこまで進んでいるんだな。なら蒼太くん。君は将来的に娘を妻に貰うことは確定しているわけだ」

「は、はい」

「私が気になっていることはただ一つ。蒼太くん……君は娘を幸せに出来るかい?」

「っ!」


 明さんの態度が一変し、身に纏う雰囲気が鋭くなる。その表情は先程までの楽しげなものではなく、 一人の親として子供を任せられるか俺を試しているように感じた。


「はい出来ますなんていう中身のない返事は求めていない。君はどうやって紅愛、そして子供を幸せにしていくんだ?仕事を頑張って不自由のない生活を送ってもらう?それで生活を支えられたとしても仕事一筋で紅愛や子供に寂しい思いをさせることはないかい?」

「……」

「私は紅愛に不幸になってほしくない。だから政略結婚もさせないし望みも聞いてきた。君と結婚したいという紅愛の願いを邪魔するつもりも毛頭ない。結婚したいならどうぞしてくれというのが私の意見だよ。だがな、仮にだ。もし仮に紅愛が結婚して傷つくようなことがあれば私は何がなんでも絶対に君に仕返しする。紅愛が受けた痛みを何百倍にもして返す……どうだい?それだけの覚悟を持って君は紅愛と結婚出来るかい?」


 ……正直もっと受け入れられてるだろうって思ってた。でも違った。少し考えれば、いや考えなくても分かったはずだ。明さん達は今まで大切に育ててきた子供を赤の他人に任せるのだ。なのに俺は半端な覚悟でこの場に臨んで軽々しく結婚の許可を貰おうと思ってしまった。傲慢にも程があった。


「……」

「あぁ篠崎グループを継げるとは思わないでくれよ?信頼できない女婿に継がせるくらいなら私の部下に継がせるさ。そして蒼太くん、仮に君に将来設計がないのだとしたら先程の発言と矛盾するようで悪いが娘を託すことはできない。目の前にある落とし穴に引っ掛かる馬鹿はいないからね。結婚は諦めてくれ……さてここまで聞いて蒼太くん、君の考えを聞かせてくれるかい?」


 今の話を聞いていると自分がどれだけ将来を考えていなかったのか思い知らされた。そして今この場で適当な事を言っても見抜かれるのがオチだ。


 なら俺が今思っているありのままの事を全てぶつけてしまおう。


「…………正直今よりも紅愛と一緒にいる時間は少なくなると思います。それに生活を支えられる保証なんてどこにもありません。でも……絶対に、絶対に紅愛は幸せにします!」

「社会において根拠の無いものほど信用出来ないものは無いよ」

「俺の命を賭けます」

「蒼太くんっ!?」


 先程まで隣で静かに聞いていた紅愛が初めて口を開く。明さん達も俺の返答が予想外だったのか目を大きく見開いた。しかし直ぐに真剣な表情に戻る。さすが世界的企業の総帥だ。


「……どうやってそれを証明するんだい?」

「誓約書でも何でも書きます。だけど俺は絶対に紅愛を幸せにします」

「ならどうやって幸せにするんだ?蒼太くん、君の発言は無責任なものばかりで到底容認できるものじゃない」

「俺に篠崎グループを継がせてください。そうすれば幸せにできます」

「っ!?私の話を聞いていたのかい!?」

「聞いてました。その上で言ってます。俺は大学卒業までに篠崎グループを継ぐに相応しい人間になってみせます。その信頼を勝ち取ってみせます。だから明さん……いえお義父さん。どうか俺に…俺に紅愛をください!」

「……」

「蒼太くん……」


 俺は俺なりの誠意を見せた。これで駄目ならさらに押す。自分のためにも、そして隣にいる最愛の人のためにも絶対に引くわけにはいかないのだから。


「……あなた」

「あぁ……顔を上げてくれ蒼太くん」


 顔を上げると、先程まで真剣味を帯びていた明さんの表情が元の穏やかなものに戻っていた。隣では紅葉さんがにこやかに微笑んでいる。


「驚かせて悪いね。これは軽いジョークみたいなものでさ。やってみたかったんだよ。あるだろ?よくドラマとかで娘はやらん!ってやつが。中々上手だったろう?もちろん君には篠崎グループを継がせる気でいたし、紅愛との結婚には大賛成だ。今ので君が誠実だということも分かったしね。しかし命を賭けるか……ふふっ現実で初めて聞いたな。いや良かった。あそこで変に将来設計を語ってきたらそれこそ結婚させないでやろうと思っていたからね。理想と現実は違う。いくらここで将来設計を語ったところでそうなる確率はかなり低い。それに社会では根拠の無い発言は忌避されるが人間関係ではその愚直なまでに熱い心が何よりも心を惹く。蒼太くん、君の本心からの返答嬉しかったよ」

「あ、ありがとうございます……」

「いいわねぇ。私も命を賭けるなんて言われたいわ」


 紅葉さんが顔を赤らめて明さんを見つめる。そんな仕草も紅愛に似ていて本当に親子なんだなとしみじみと思う。


「蒼太くん……」

「っ!く、紅愛」


 隣から元気の無い声が聞こえ、振り向くとしょんぼりした紅愛がそこにいた。


「勝手に命を賭けるなんて言わないでください…蒼太くんが死んだら嫌です……」

「あ、あれは言葉の綾というか、そ、そのくらいの覚悟で紅愛を幸せにしたいっていう意志の表れっていうか」

「……キス」

「へ?」

「お詫びのキスを所望します。10秒くらいの長いキスを」


 腕を広げて俺を迎え入れる準備をする紅愛。自分の両親がいるというのにこのメンタルの強さ……


「私達の事はそこら辺の石ころだと思って構わずしたまえ。おっと、挨拶が済んだら皆で昼食にでも行こうと思って店を予約してたんだ。早くしないと間に合わないぞ」


 腕時計を見て白々しく言い放つ明さん。多分昼食は本当なんだろうが時間はまだ余裕のはずだ。


「それは大変ねぇ。蒼太くん。ぶちゅっとしちゃいなさい。紅愛ちゃん待ってるわよ」


 紅葉さんまで裏切るのか。

 紅愛をちらりと見る。紅葉さんの言う通り目を閉じて少し唇を突き出してすっかりキス待ち顔だ。

……えぇい!どうにでもなれ!

 二人が見ている中、紅愛の顔を引き寄せて唇を合わせる。


「んっ♡」

「おぉ我が子も女性らしく成長しているのだな」

「やぁん///紅愛ちゃんすごく可愛いわねぇ」

「ちゅぅ♡んちゅ………ぱっ♡こ、これで今回は許してあげます……次からは気をつけてくださいね?」

「は、はい。肝に銘じておきます」


 こんなの黒歴史確定だ……


「それじゃあ行くとしよう。蒼太くん、寿司は食べれるかい?」

「あっ、はい。好きですよ」

「なら良かった。行こうか」


 この後、明さんの車で人生初の高級寿司を食べに行った。車に乗っている間、馴れ初めなどを根掘り葉掘り聞かれ、着いた頃にはすっかり俺の気力は失われていた。

 まぁ寿司食って元気になったけど。


「今日は楽しかったよ。これからも末永くよろしくね蒼太くん」

「はい。これからよろしくお願いします」

「紅愛も蒼太くんに迷惑をかけないようにね」

「分かっています。それではお父様お元気で。お母様も」

「またね紅愛ちゃん。今度は夜の方も聞かせてね」

「ちょっ、紅葉さんそれは勘弁してください」

「ふふふ冗談よ。蒼太くんも元気でね」

「あっ、はい。今日はありがとうございました」

「それじゃあ」

「ばいば〜い」


 明さん達が車に乗って帰る。最後まで賑やかだったなぁ。ああいうの久しぶりで楽しかった。


「私達も戻りましょうか」

「そうだね」


 車が行ったのを見送ってから俺達も家の中へと戻った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

本当にお久しぶりです。かれこれ2週間もお休みしてました。心配してくださっていた人がいるか分かりませんがご心配をおかけしました。これからは3、4日に1回のペースで投稿出来たらなと思います……それとついでなんですが、この作品の略称についてです。何か良い案ありませんかね?出来れば読者の皆様と一緒に決めたいなと思いまして。これ良いんじゃね?とか思うのがあったら是非コメントください!

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